第23話
突発的に組んだパーティーとはいえ僕たちの連携はそこそこ上手くいっていると思う。
まず、五感が鋭く「索敵技能」というスキルを持つルーナが周囲の異変をいち早く察知するために先頭を歩く。
索敵技能は他の人よりも一瞬早く魔物の存在に気づける程度のものであまり強いスキルではないと本人は言っていたが、そのスキルのおかげで僕たちはほとんどの接敵を回避し、奇襲を受けることもなく進めていた。
ただ、時折魔物にも勘のいいやつがいてルーナが気がつくのとほぼ同時に向こうが気づいて襲ってくることもある。
そんな時はルーナが「来るわ!」と叫び、反射神経のいいトーヤが瞬時に剣を抜いて魔物の攻撃を受け止める。
その隙に僕が矢尻を使って後方から攻撃。
ルーナも短剣で魔物の背後から援護するという形で僕たちは数体の魔物を倒し続けた。
何回か戦闘を重ねるうちに僕たちの連携はさらに良くなってきていると思う。
「痛っ」
何回目かの戦闘。はぐれたゴブリンを倒した時のことだ。
僕は怪我を負った。まぁ、苦し紛れにゴブリンが投げた石のナイフが右腕をかすめただけの継承だったが。
「悪いイトム。俺が攻撃を漏らしちまった」
トーヤはそう言って謝ったが彼のせいではない。
「仕方ないよ。ゴブリンの攻撃を全部思い通りに動かすのは不可能だし、避けられなかった僕が悪い」
トーヤは率先して魔物に斬りかかり、魔物の攻撃を自分以外に負けないようにして僕やルーナが攻撃しやすい状況を作ろうとしてくれている。
しかし、魔物だって生きていてそれなりに考えるだけの知能を持っている。
今回の場合で言うと四人に囲まれたゴブリンが身の危険を感じ、自分にトドメを刺そうとする僕に照準を向けただけの話。
その苦し紛れの攻撃に反応が遅れた僕に非があるだろう。
一対一の時にはゴブリンの動きだけに注目していればよかったが、パーティーを組むと攻撃を受け止めているトーヤの動きや魔物の背後から隙をうかがっているニーナの位置を確認して巻き込まないように攻撃をしなければならない。
そこに気を使う分反応が少し遅れてしまうのは僕の未熟さの証明だろう。
もっと強くなりたい。もっといい連携がしたい。
自然にそう思うようになった。
少し血が滲んだ僕の右腕に服の上からシキが手を被せる。
それから彼女は目を閉じて何かを念じる。
すると彼女の手が淡く光だし、僕の腕を温かく包み込む。
血が止まり、痛みが消えていく。
「ごめんね。こんな魔法しかできなくて」
出会ってから数時間が経つが彼女の声を聞いたのはそれが初めてだった。
透き通るような透明感のある声。可愛い声だ。
聞き惚れそうになって慌てて首を振る。
「そんなことないよ。『補助魔法』だっけ? 僕にはできない素晴らしい魔法だよ」
「補助魔法」はシキの持つスキルだった。
その名前の通りに仲間を補助するための魔法。
具体的には今彼女が実際にやって見せてくれたように仲間の傷を癒したりすることができる。
スキルというだけあって当然それは固有のものであり、そのスキルを持たない僕にこの回復の魔法は扱えない。
それは彼女だけの強みであり、僕は本当に心からすごいと思うのだが彼女は「自分だけが戦闘に参加していない」と負目に感じているようだった。
この補助魔法というスキル。回復やその他の味方の支援ができるという力の代わりに他の通常魔法、例えば僕が使う風を起こす魔法や土を掘る魔法などは一切使えないという代償があるらしい。
小柄なシキは明らかに力は弱そうで剣を握って戦うのは向いていないだろうし、そもそも回復という強い能力を持つ彼女がわざわざ魔物に近づいて危険を冒す必要はないと僕は思う。
「シキの支援魔法のおかげで僕の矢尻の魔法の威力が上がったんだ。君は十分に戦闘に参加しているよ」
彼女は回復の他にも「他者の力を強化する」魔法も使うことができた。
戦闘が始まるとシキはその魔法を僕にかけてくれる。
そのおかげで僕の魔法の力は増幅し、矢尻は今までよりも強い速度で射出され魔物を簡単に倒すことができていた。
僕の言葉が嬉しかったのかシキの表情が一気に明るくなる。
僕は彼女に回復のお礼を言ってそれから皆で再び歩き出した。
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