第6話 ミミは教育虐待を受けている

「おはよう、ママ」


そうだ。昨夜、私は先生がミミを疑っていると嘘をついたんだった。

そのせいで──なんと、あの「ふりかえりテスト」をパスできた。

英語も免除。


みきちゃんの消しゴムのことを、ママは根掘り葉掘り聞いてきた。

「先生がミミを疑った。何もしていないのに」──そう嘘を重ねると、ママは烈火のごとく怒った。

英語のことなんて一言も言わなかった。


……こんなの、初めて。

超ラッキーだった。

(先生、ごめんなさい)


でも改めて気づいた。

夜の十一時半、眠気と戦いながら英語をやらされて、

そのあとママの手作りテストを受けるのが、どれだけ辛かったか。


やらなくて済むなら、私は毎日でも嘘をつく。

生き残るためには、それしかない。


「ミミ。学校で先生に、昨日のことを謝罪してもらいなさい。

自分できちんと説明できるわよね?」


「……あ、はい」


心臓が早鐘を打つ。

──本当のことが明らかになれば、もっともっと叱られる。

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