第5話 これが帰宅後のルーティン

  


「学校にいるときはいいんだけど、家に帰るのがイヤ。

だって、ミミの毎日って、すごく疲れるんだよ」

「へー、そうなんだ。リコはママとの推し活、楽しいよ」

「おしかつ!?」

「ストプリとかほんと大好き。ママも大好きって言ってるよ。一緒に応援するの」

「いいなあ」


もうリコちゃんとは同じ星に生まれた同じ10歳とは思えない。

また遊びたいけど、ストプリも推し活もうらやましすぎて嫉妬しちゃう。


「ただいま」

ドアを開けるとママがいた。

「おかえりなさい」

ゴキゲンだ。時間通りに帰宅するとゴキゲンなのだ。


ミミのルーティンはこんな感じ。

学校から帰り、ジョギングに行き、お手伝いをする。

お風呂掃除とトイレ掃除。毎日、必ずやる。

面倒くさい日もあるけど、ママに言うと、必ずこう言うの。

「ミミ、将来絶対に役に立つから。その時、ママ、ちゃんと育ててくれてありがとうって思うよ、きっと」


それが終わったら、お風呂に10分で入り、髪を乾かしながら音楽を聞く。

今は、モーツァルトのソナタ。練習している曲だから。

髪が乾いたら、防音室のピアノに向かう。平日は2時間。土日休日は4時間。

夏のコンクールで金賞を取らなくちゃいけないから、がんばるしかない。


夕食はママの好みのヘルシーすぎるもの。

肉じゃが・味噌汁・焼き魚・ほうれんそうのおひたし・玄米という感じで、

少しは変化はあるけど、これが基本形。

ご飯を15分で食べたら、ママと二人分の食器を洗う。ママが拭く。


「そういえば、リコちゃんの家には食洗器っていうものがあったよ」

「やっぱりね。手を使わないから頭が悪くなるのよ」

結局、何を言っても嫌になる。

パパは、単身赴任中。

ママに何かを言って、どうにかなることって、絶対に無い!

何かいい方法ないかなあって考えてしまう。



そして、いよいよ壮絶な勉強タイムが始まる。

まず、軽く昨日の復習をする。

ママが決めた今日の学習をインプット。

大手進学塾の問題集をでアウトプット。

終わったら英語。

11時半からは今日の学習のふりかえりテスト。

これはママの手作りテスト。間違えるとすごく叱られる。

10歳、ミミ。

学校から帰ったら、待ち受けているママと一緒に、こんな毎日をすごしている。


11時半になった。

ふう、あと少し。ふりかえりテストだ。

でも、疲れたーーー!!


「今日は疲れたなあ。だって、みきちゃんの消しゴムがなくなったのを探してあげたの」

「みきちゃん、隠されたか取られたかしたの?」

「わからない。でも、先生はミミが隠したんでしょって言うのよ」

これは嘘だった。ママの顔色が変わった。

「わかった。明日先生に言ってあげる。安心して、これでも頼れる母親なんだから」


【日記】7月2日 くもり

みきちゃんの消しゴムがなくなったから、さがしてあげた。

机の周りもロッカーの中も、ゴミ箱の中までさがしてあげた。

でも、見つからなかった。

お気に入りの消しゴムだって言っていた。

はやりのキャラクターがついていて、バニラの香りがするやつ。

先生がわたしの方をずっと見ていた。

「ミミさん、よくさがしてあげているね。

あなたが隠したんじゃないかなって先生は思っているのよ。

だって、そういう文具持っていないものね」

ちがいます、先生。ミミはとっていません!


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ミミちゃんの嘘つき日記 うさぎっこ @aikohohoho

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