Page5.地面を走って空を滑空する植物
「じゃあ、もう一回手を組んで。めんどくさいかもしれないけど、一応習慣にしておこう。とは言っても毎日欠かさずやってるけどね。」
俺たちはさっきと同じように手を組む。
「「「「「「作ってくれた方に感謝します。」」」」」」
「まあ作ったのは私なのですが自分に感謝するのは慣れません。」
「気にしなくていいよセトラ。だって基本的にここに並ぶ野菜とか果物とかは俺とレイファが作ってるし、肉を狩ってきて作ってるのはセトラでしょ?基本的にうちで全部やってるから自分以外に作ってくれた人にって考え方でやればいいと思う。俺はセトラとレイファに…今日は子供たち三人にも感謝するし。」
「そうですね。自分以外にも感謝する人はたくさんいますね。では私は片付けをしてまいります。」
「うん。よろしくね。」
◆◆◆◆
「じゃあみんなで今日も庭仕事だよ!収穫するものも、植えるものも、新種の研究もたくさんあるからどんどんやってくよ!」
「「「はーい」」」
朝食を食べ終わったあと、全員で外に出る。
これからこの屋敷の庭の手入れをする。植えてある野菜や果物を収穫したり、栄養である魔力を与えたり、逃げ回る植物を元の場所に戻したり。
「今日もたくさん逃げ回ってるね〜。俺、最初はこの作業苦手だったけど、今は話しながらでも捕まえることができるよ。」
「そうじゃな。そういえば、今日からリクマンロッソが庭に追加されたぞ。美味しかったからの。」
「そっか。じゃあいつも埋まっている場所を覚えていないわけだ。たくさん動いてるね。」
今日はいつもよりたくさん植物が動き回ってると思ったら、四分の一くらいがリクマンロッソだった。
リクマンロッソは根の部分が足のようになっているうえ、茎と根の境目あたりから翼が生えている。
ちなみに翼の色だが、もちろん黄色だ。
この植物に生えている翼はそこまで大きいものではないため、空を飛ぶことはできない。できるとしても滑空程度である。だが厄介だ。動き回る足に加えて、空から移動する手段も持っているのだから。
「ちょっと数が多すぎるね。全部植え直すのも大変だし、一部を食べることにしようか。せっかくだしルルムも呼ばない?」
「わしに聞く必要はない?この屋敷の主はセラであろう。」
「………確かにそうだね。」
レイファの言っていることは正しい。
この屋敷は俺が作ったものだし、持ち主も俺ということになっている。
だけど_
「だから何も言っちゃいけないってわけじゃないからねレイファ。俺たちで暮らしてるんだから。」
「そうじゃな。言いたいことができたらの。」
言いたいことができたらか…。思いついたらどんどん言ってほしい。
むしろ思いついてなくても言ってほしい。
「じゃあルルムを呼んでくるよ。早くしないと萎びてくるだろうし。」
「セラ!ルルムを連れてくるの?」「遊べる?」
「遊べるよ。これから走り回っている植物を一部食べてもらうからね。」
「じゃあぼくもルルムを迎えに行く。」「いくんだよ!」
「じゃあ行こうか。ノノも行く?」
一応ノノも誘ってみたけど、今は向こうで植物に集中して聞こえていないみたいだ。
だから、ノノが気づく前に先に連れてきてしまうことにした。
「レイファ。ちょっとノノを見ててほしい。怪我しちゃうと痛いから。」
「了解じゃセラ。ノノのことはまかせろ。」
レイファは胸を張って答えた。これなら安心だ。万が一高いところから落ちても…
次の瞬間木に登っていたノノが滑空するリクマンロッソを追って木から飛び降りた。
レイファがバッとノノのところに向かい、トンっと地面を蹴って跳躍する。
ノノが追いかけていたリクマンロッソとノノを両手で受け止めたあと、シュタッと地面に着地した。
「母様すごいのだ!かっこよかったのだ!」
ノノはキャッキャとはしゃぐ。とても楽しかったようだ。
「ノノが追いかけてたリクマンロッソも捕まえておいたぞ。もう一回離して追いかけるか?」
「もちろんなのだ!ありがとうなのだ!」
レイファは捕まえていたリクマンロッソを解放した。解放されたリクマンロッソは少し潰れて汁が滲み出てきてしまっているが問題はない。水と魔力を吸えばすぐに元通りになるのだから。
今のを見ていると、ノノが怪我をすることはなさそうだった。
セトラが忙しい時、レイファはものすごく頼りになるとよくわかった。
「じゃあレイファ。俺とミズとヒナはルルムを迎えに行ってくる。一応様子も見てみるけど、あの子は真面目だから絶対任された仕事をサボったりしないと思う。」
「行ってくるんだよ!」「行ってくるよ〜。」
「行ってらっしゃいなのじゃ。さて、よしノノ。「はい、母様。」わしらはルルムがくる前にできる限りの植物を捕まえ……じ…。」
少しずつレイファとノノの会話が聞こえなくなってくる中、そんな張り切ったような二人の声が聞こえた気がした。二人のことだから気がしたじゃなくて本当のことを言っているのだろう。
ルルムが普段寝ている場所は、俺たちが暮らす屋敷から少し離れたところにある。
しばらく歩き続けて、庭と森の境目。俺が暮らしている場所の入り口近くまでやってきた。
「じゃあルルムを呼ぼう。」
「「「ルルム〜!」」」
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