Page4.団欒の時間
「そのリクマンロッソはあたしがちぎったやつなのだ!」
「そうですね。ピコを切るのは私が全てやりましたが、リクマンロッソを切ったのはノノ様です。」
「頑張ったのだ!」
「そうか〜。すごい!新鮮なままだ。あとさ、リクマンロッソは結構硬めの野菜だと思うんだけど、どうやってちぎったの?」
「パパ様。これは葉っぱなのだ。葉っぱはそんなに固くないのだ。力を入れるだけでポキッて折れる。」
「そっ…そっか。ノノは力が強いんだね。」
驚いた。リクマンロッソは綺麗にスパッと切られてたからてっきりセトラがやったものだと思っていた。ちぎったりしたのはピコの
結構シャキシャキ歯応えのあるリクマンロッソをノノは折れるのか…。あれ意外と硬いと思うんだけど。
やっぱり龍はすごい。力も強いし魔力も多い。魔法の威力も桁違い。
「ぼくが混ぜたシチューは美味しいか?」
ミズが聞いてきた。自分が手伝ったシチューを全部食べて、口の横に少しつけたまま。
笑いたくなるけど笑うと顔についていたことに気づいて隠してしまう。すぐに拭き取ってしまう。
だからもう少しだけ、できるだけ長くその可愛い状態を見ていたいからもう少し気づかないふりをしておこう。
「ふふ…もちろん美味しいよ。まだ小さいから混ぜるの大変だったんだろ?」
「もちろん大変だったけど…ぼくがやりたいってセトラに頼んだんだよ。セトラも絶対美味しくなるって言ってくれたから感想を聞きたかったんだ!」
「ミズとノノに、朝食の手伝いをするにはどうすればいいかを教えたのはわたし。セトラに頼めばいいっていうのもわたしの提案。」
「だけど実際に相談したのはぼくだよ。ヒナじゃない。そういうならヒナがセトラに言えば良かったんだよ。」
「だって、誰かに突っ走っていくのはミズとノノの役。わたしじゃない。」
ミズとノノはヒナに利用されていた。
きっと、一番朝食を作りたかったのはヒナなのだろう。
だがやり方を理解していても提案するのは嫌だった。
だから、思いついたこと思ったことをなんでも誰かに話すミズとノノにその計画を話したのだろう。二人は必ずいい計画だと思えば迷わずそれを実行する。絶対そうなってくれると信じて。
「セラ。わたし頑張って盛り付けたんだよ?褒めて。」
「わかった。頑張って盛り付けたんだよね。多分ヒナは盛り付けは全部やりたがったんだろ?だから今日の盛り付けは全部ヒナがやった。あってる?」
「うん正解。気づいてくれて嬉しいんだよ。」
ヒナは椅子から降りて、俺が座っている椅子のところまでやってきた。
目の前に前にやってきたヒナはずいっと頭を前に出した。
少しなぜそれをやったのか…少し考えたけど、そのあと俺はヒナの頭を撫でた。
「…大満足。」
ヒナはいつもの無表情ではなくなっていて、とても満足げな笑顔を見せた。
「じゃあ自分の椅子に戻って。まだ全部食べきってないでしょ?」
「うん。」
ヒナは自分の椅子に戻って行った。
「ヒナはずるいんだよ。ぼくだってもっと褒めてもらいたかったのに…、食べてる途中で椅子を立ったらダメって言われてたから我慢してたのに。」
「ミズは何回も注意されてるから。わたしはまだ一回も注意されてないんだよ。最初から注意されても良かったからセラの方に行っただけ。」
「やっぱりヒナは頭がいいのだ。あたしはもう何回も注意されてるからヒナと同じことはできないのだ。」
「ノノはよくわかってる。わたしは頭がいいんだよ。ご褒美にわたしのサラダのピコをあげよう。」
「嬉しいのだ!ヒナありがとうなのだ!」
「ちょっと待てヒナ。ヒナはピコあまり好きじゃなかったよね?ノノがピコ大好きだからってさりげなく渡してるけど俺は知ってるからね?ちゃんと食べてね?」
「やばい。ばれたんだよ。」
「いいよ。そのうち、何百年もすれば大体のものは好きになるから。それぐらい生きてればこれだけは嫌いっていうのも分かるから。そのかわり、ピコを食べない分あとで庭にある果物一つ食べてね。」
「わかったんだよ。だからこのピコはノノにあげる。」
ヒナは、自分のサラダに入っていたピコをノノに移した。
「あーずるいんだよ!ぼくだってピコは好きなのになんでノノだけ?」
「ストップ。ミズには俺のピコをあげるから喧嘩しようとしないで!なんか俺だけピコが二個入ってたみたいだし。」
「わぁ!セラありがとうだよ。」
◆◆◆◆
これで喧嘩になることはない。ミズとヒナは双子だが、好みは全然違う。その代わり、ミズとノノの好みが結構似ててしかも好きな食べ物がヒナが嫌いなもののため片方だけにあげると喧嘩になりかける。
だからセトラは喧嘩にならないようにセラの皿には一つだけミズとノノが好きでヒナがあまり好きじゃないものが多く入れていた。
「ふう。危なかったですね。予想通りミズとノノが喧嘩をしそうになりました。」
「危なかったの。ナイスじゃセトラ。」
「ありがとうございますレイファ様。」
「それにしてもやっぱりセトラの料理は美味しいのじゃ。」
「今日は子供たちも手伝ってくれましたからいつもよりさらに美味しいと思います。」
「それでもすごいのじゃ。いつも我が家の家事をほとんどやってくれておるのだから。」
「それほどでもありません。」
セトラは謙遜しているが、レイファの言う通り彼女はかなりすごい。この屋敷のことを全てセトラ一人でやっているのだ。
毎日早起きをして朝食の支度をする。煮込むものがあったり時間が必要なものがあるときはその間に食堂の掃除をする。
食事ができたあと子供達を起こし、準備の手伝いをする。
子供達を下に連れてきたあとセラとレイファを起こしにいく。二人は大体起きているが、基本的に余計な話をしていて下に降りてこないためセトラが必ず声をかける。
それでも話を聞かない場合は朝食を無しにすると軽く脅す。そうすれば絶対に話をやめて下に降りてくるからだ。
全員で朝食を食べた後も、セトラは家事をほとんどやる。しかも午前中だけで。
しかも午後はセラたちのことを手伝いに来る。
一日中働いているように見えるが、それでも自分のやりたいことをやれる時間は残しているらしい。
「謙遜するな。セトラがいなくなってしまうとこの屋敷が綺麗なままなのは全てセトラのおかげなのだからな。わしらが片付けがものすごく苦手なのは知っておるじゃろう。」
「そうですね。みなさん片付けがもっと上手になった方がいいと思います。」
「ぐぅ…。そこまででもないと否定してくれてもいいじゃろう…。」
「ぐうの音が出ていますね。ですが事実ですので。さすがにあの散らかり方を見ると否定する方が難しいです。」
「そうか…。じゃあお礼を言わんとな。いつもありがとうなのじゃセトラ。」
「どういたしましてレイファ様。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます