第12話 イケメンすぎる冒険者、また被害にあう②
「ねえ、今の聞いた?ヤラれちゃったんだって!」
「あんなイケメンだから仕方ないんじゃない?」
周りの女性客がヒソヒソと嫌なことを言う。
あの朝、記憶がなかったから、金品や貴重品が盗られていないか念のために確認しておいた。
被害はなかったため何もなかったと思っていたのだが、金を盗らずに体だけって・・・近頃の女性冒険者の貞操観念はどうなってんだ?
というか、そのまま金品を盗むと官憲に被害届を出されるから、今になって脅しを入れてきたのか?新手の美人局かよ。
「意識のない俺の体を弄んだ挙句に、次は恫喝して金品を巻きあげようってのか?最低だなおまえら。」
声を大にして言っておいた。
これでこの店の店員や客が証人になってくれるかもしれない。もちろん、必ずなってくれるかはわからないが、ひとつの布石にはなるだろう。
それにしても、変な病気とかうつされていないよな?
貞操観念が低い冒険者は、よく変な病気をもらうから怖いのである。念のため、早めに治療院を訪れた方がいいかもしれなかった。
「人聞きの悪いことを言うな・・・って、どこに行く気だ?」
「ここだと店に迷惑がかかるだろ。」
俺は自分が飲み食いした分とマイク・バルカンのケーキ代を、近くにいた合法ロリウェイトレスに渡しておいた。
「残りはチップだ。」
「無事でいてくださいね。」
上目づかい見てくる合法ロリウェイトレス。
「心配してくれるのか?」
「気前がいい方には、ぜひとも常連様になってもらわないと。」
テヘッと笑う彼女を見て、『あざといねぇ』と心の内でつぶやく。
口に出してわざわざ好感度を下げる必要もないだろう。冗談めかした抗議の意味合いをこめて、彼女のツインテールの片方を軽く指で弾いておいた。
さて、ここからは大人の話し合いである。
俺は脇目もふらずに出口の扉へと向かった。
店から少し離れた路地裏まで誘導した。
冒険者ギルド近くの方が助けを求めやすいのだが、こと俺に関しては逆効果となる可能性がある。
要するに、敵が多いため、相手の方の加勢に現れる冒険者が少なくないということだ。
一部の女性冒険者は俺を救おうとしてくれるかもしれない。ただ、以前と同じように対価を求められるだろう。
命を奪われることを考えれば、貞操くらいどうってことはない。ただ、個人的にはそういった行為だけを目的とした場合、ことの最中は盛り上がるのだが賢者タイムに虚無感が吹き荒れる。やはり、ああいったことは好きな相手とだけするべきだと思ったりもする。
「さて、改めて要件を聞こうか。望みはなんだ?」
「あたりまえのことを聞くな。落とし前をつけろと言ってるんだ。」
予想通りの答えが返ってきた。
「具体的には?」
「言わなくてもわかるだろうが。」
金銭が目的だとはっきり言葉にすると、恫喝や恐喝として罪を背負う可能性があった。
因みに、結婚している者が別の異性と不倫を行った場合、姦通罪として罪になる領地も存在する。それ以外については、不同意による強制性交や貞操権侵害といった刑法も国で定められていた。
今回の場合は俺が被害者に該当するが、現実として男性が被害者というのは立証されにくい。逆に女性側が被害を訴えると冤罪となる可能性もあった。
「嫌だと言ったらどうする?」
「冒険者としてやっていけなくなるぞ。いや、それとも牢獄行きかもな。」
4人ともニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。
「それはどうだろうな。」
「あ?」
「これまでにも似たようなケースは経験している。定宿の女将に証人になってもらうくらい容易いとは思わないか?」
「・・・ハッタリだ。」
「どうだろうな。定宿にしているのは、居心地がいいからだけじゃないぞ。」
無表情にそう言い放った。
もちろんハッタリだが、ここで折れると今後も同じ目にあう。
「だったら痛い目にあうだけだ。」
リーダー格の男が胸ぐらを掴んできた。
「忠告だ。顔はやめといた方がいい。」
「ああ!?イケメンだから顔は殴るなってか?」
「そうじゃない。少し前の事件は聞いているだろ?俺にも非公式だがファンがいるらしいからな。」
女性冒険者の一部が、俺に危害を加えた野郎連中に闇討ちを加えた事件があった。
いい迷惑なのだが、こういったときには牽制に使える。
「だったら、腹なら問題ないだろうが、よ!」
腹を強打された。
くそ、さすがにあっさりとは引き下がらないか。
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