第7話 イケメンすぎる冒険者、サプライズを企む②
少し嫌な視線を感じた。
こんなところにも俺のアンチがいるのか。
まあ、告られてお断りした女性の数はそれなりにいるので、その関係かもしれない。
周囲の目はともかく、俺自身は女性の敵とみなされるような行為をしたことはないといっていい。
恋人としてつきあうなら、それなりに真面目に接してきた。
他の女性が言い寄ってくるとか、交際相手の嫉妬心、猜疑心で別れることが多かったのだが、俺にはどうしようもなかったのである。
もしかすると、もっと包容力があり、広い心を持ち合わせていれば別の結果を招いていたかもしれないとは思う。しかし、そこは自身の未熟さも含めて反省材料として残っていた。
そもそも、告られる頻度というものは、イケメンレベルが高いほど比例的につり上がるものだ。
イケメンレベルとは、顔の造作だけをいうのではない。身長や体格、人間性、コミュ力など様々な要素の総合力だと俺は思っている。
美女と野獣、もしくはイケメンと醜女と呼ばれるカップルをたまに見るが、それもそういった要素が多分に影響していると思う。確かに、片方が特殊な性癖であったり、非凡な容姿に惹かれるということもあるだろう。しかし、外見ではなく、相手の本質を見抜いて交際しているのであれば、なんと素晴らしい関係ではないかと思う。
え?
モテイケメンが何言ってんだかって?
イケメンじゃなくともパートナーと幸せな関係を築く者もいれば、冒険者として大成する者もいる。
それに比べて、俺は何か秀でていると思うのか?
誰しもコンプレックスを抱えている。それを克服するために勉学に励み、体を鍛えてより良い人生を歩もうとするのだ。
俺もいろいろと努力している。
しかし、胸を張って自慢できるのは、親からもらったこの顔だけだ。ただし、イケメン、イケメンと言われても、それが不幸の要因でしかないなら、大きなコンプレックスへと変わる。
だからこそ日々の様々な努力は怠らなかったが、結果はご覧の通りだ。おそらく俺は、顔以外のイケメン要素が低いのだと思う。今さら性格を変えることはできないのだから、コワモテに夢を託すことにしたのだ。
チラッと視線の方向に目をやる。
男女4人のグループで、たまに冒険者ギルドで見かけるパーティーのようだ。今は同席していないが、三日ほど前に残るふたりのメンバーに誘われて飲みに行った記憶がある。
また何か良からぬ誤解を招いているのかもしれない。勘弁して欲しいが、これまでと似たようなパターンだろう。
飲みに行ったふたりの女性のどちらかに男性メンバーが好意を寄せていて、嫉妬されてるか何かというのが多い。
まぁ、なるようにしかならないので無視しておくのが無難だ。
「今日のサプライズメニューは、ズコットケーキのオムライス風でーす!」
合法ロリウェイトレスがマイクでそう宣言した。
クロッシュが外され玉子・・・いやクレープ生地に包まれたズコットケーキが姿を現わす。
ズコットとは、聖職者の帽子や兵士の金属製兜のことだ。半円の帽子のような形をしたケーキと思えばわかりやすいだろう。
それにしてもデカい。
すごくデカい。
そして、マイク・バルカンの目に喜色が広がった。
あ、やっぱり真性の甘党か。
「中はスポンジケーキと3種の果実、そしてクリームです。果実の甘酸っぱさとクリームのとろける甘さ、そしてクレープ生地の食感をお楽しみいただけます!」
マイク・バルカンのコワモテさに視線をそらせていた女性たちも、スイーツの魅力には抗えないようだ。
一点集中でズコットケーキに注目が集まった。
「それではベリーソースで最後の仕上げをさせていただきますね。」
そう言った合法ロリウェイトレスが、赤いソースの入った絞り袋を取り出した。
クリームなら絞り袋を使うのはわかるが、ベリーソースで使用するのは珍しい。
ああ、なるほど。
ああやって使うのか。
「それでは皆様、ご唱和ください。」
「「「美味しくなーれ、美味しくなーれ、萌え萌えキュンキューン!」」」
・・・想定外に客たちのノリが良かったのには驚いた。
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