第5話 イケメンすぎる冒険者、コワモテと出会う②
「え?あの怖⋯大きな人と同じものですか?」
キョトンと小首を傾げる姿がかわいく見える。
だが、ウェイトレスよ。
いろいろと女性絡みで嫌な思いをしている俺にはわかるんだぞ。
あざとさの中にも、「何言ってんだコイツ?」という訝しむ空気を出しているな。
大丈夫だ。
俺はおまえに興味はない。気を引くための話題として言ってるわけじゃないからな。
「冒険者として名高い男が、どんな物を飲み食いするのかに興味があるんだ。もしかすると、俺もその輝かしい実績にあやかれるかもしれないだろう?」
「ああ、何となくわかります。私も推しの吟遊詩人と同じアクセサリーを付けると、ペアルックしている気分になれますから。」
屈託のない笑顔を見せてくれるが、さすがにあのコワモテとペアルックにしたいとかないわ。
「ま、まあ、そんな感じだな。」
「わかりました!では、同じメニューをお持ちしますね。」
「よろしく。」
で、まず初めに突き出し─いわゆるお通しが出てきた。
女性向けの店とあって、色彩豊かなミニプレートである。レバーパテやオリーブの実のピクルスなど、量は少ないがこれ一皿でワイン1杯くらいは十分に楽しめそうだった。
「お待たせしました、カルーアミルクです。」
ウェイトレスが1杯目のドリンクを持ってきた。
「⋯え?」
「カルーアミルクです。」
俺はマイク・バルカンを見た。
琥珀色の液体を満足気に飲む姿が映る。
カルーアミルクとは女性や甘党に人気のカクテルで、コーヒーリキュールとミルクを割ったものだ。独特の甘みで、アルコール度数はビールと同じくらいだろうか。
これはこれで上手いのだが、食事やツマミにはあまり合わない。
この店のカルーアミルクは甘さ抑え目だったりするのだろうか?
一口飲んでみると予想を裏切りやがった。
甘い、普通のカルーアミルクよりもかなり甘い。
これでピクルスやレバーパテを食えと?
改めてマイク・バルカンを見る。
彼は突き出しのミニプレートには一切手を出していなかった。しばらくして、一杯目のカルーアミルクを飲み干す姿が映る。
自分の前にあるグラスに目を戻し、「まさかな⋯」と思っているとウェイトレスが滑らかな動きで近寄ってきた。
「おかわりのカルーアミルク、メガサイズでーす!」
「ぶふっ!?」
「あちらの方がおかわりされたので、同じようにお持ちしましたぁ!」
マジか。
まだカルーアミルク飲むんかい。
しかもメガ⋯。
マイク・バルカンをチラ見する。
既にメガサイズのカルーアミルクを飲み干すところだった。
「あ、またおかわりされそうですね。」
「⋯ごめん。またカルーアミルクならパスで。」
「え~、そうなんですかぁ。」
こんな甘いものをそんなに飲めるかい。
「代わりにビールを。」
「はい、喜んで。メガで良いですかぁ?」
「⋯それで。」
腹タプタプになるやん。
マイク・バルカンは、顔に似合わず甘党なのだろうか。カルーアミルクばかり頼むところみると、間違いない気がする。突き出しに手を出さないのもそのためだとしたら、何の料理を頼むのか。
「はい、ホットケーキのホイップクリーム添えですね?サイズはメガでよろしかったでしょうか?」
「⋯⋯⋯⋯。」
ヤバいじゃん。
本格的な甘党じゃねぇか。
うわっ、こっちにも来たし。
「お待たせしました!メガホットケーキの
「⋯甘い物は好きか?」
「ええ、大好きです!しかも、ちょうど今から休憩なんですぅ。」
このウェイトレスはワザとやってるな。さすがのあざとさか。
だが、俺もただで転ぶ気はなかった。
「ちょっとお願いがあるんだが。」
「え~とぉ、大人なやつはダメですよぉ。」
「俺もロリには興味ないから大丈夫だ。」
「合法ロリですけどぉ。」
「ロリとは遊ぶなという遺言をもらってる。」
「誰の遺言ですか?」
「冒険者のカーネルだ。」
「誰です、それ?」
「ある領地内で本物のロリに手を出して極刑になった大馬鹿野郎だ。」
「え、怖っ!?」
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