第2話 イケメンすぎる冒険者は苦悩する②

決定的だったのはパーティークラッシャー、そして冒険者ギルドの受付嬢の間で『愛の遍歴者』という不名誉な二つ名をつけられて有名になったことだ。


もちろん、すべて誤解や冤罪でしかない。


冒険者稼業というものは、ソロではなかなか厳しいものがある。野営するにも見張り役がいないと十分な休息はとれないし、ランクの高い依頼はそもそもがパーティーでしか受けられない。


今でこそソロ冒険者となった俺でも、以前は何度かパーティーに属していたことがある。


その度に女性メンバーが俺に好意を持ったり、ひどい場合はダンジョン内で夜這いを仕掛けられたりした。


『なんでいつも俺?』と思わないわけではないが、「エルフのように整った顔で、肌も綺麗なんだから黙って襲われなさい」なんだそうだ。


自慢ではない。


おかげで、寝ている時に男性メンバーから命を狙われたことは通算で13回にも及ぶ。


一番厄介だったのは、俺の寝顔にスライムの酸を巻き散らそうとした奴がいて、それを阻止した複数の女性冒険者たちと死闘が繰り広げられたときだ。


結果として女性陣が勝利したのだが、その御礼としてズボンを脱がされそうになった。


「いや、俺関係ないじゃん。ていうか、これ性加害じゃね?」


悲しいことに、この時はさすがに俺の貞操は守られず、朝になって頬を濡らしながら逃げ帰ったものだ。


え?


うらやましいだと?


バカだろ、おまえ。


見た目はともかく、目が爛々とした異性に集団で襲われてみろ。怖さしかないぞ。


しかも、取り合い圧し合いで相手の鎧があたって俺のアレは裂傷した。さらに、準備不十分なままサレたことで大事なところが擦り切れ、それが一晩中痛みをともなうんだぞ。


「あれー、コイツ初めてか!?」なんて言って歓喜していた馬鹿女もいたが、男は初めてでも血を流さねーんだよ。


良いなぁと思ったチェリーは、ずっとひとり遊びでもやって魔法使いにでもなってしまえ。


え?


だったら、男とだけパーティー組めば良いじゃんって?


もちろん、それも経験済みさ。


ただ、それでも問題が2パターンほど生じる。


二度じゃないぞ、2パターンだぞ。


1パターン目はまだマシな方だが、依頼完了後に打ち上げで飲みに行くと、必ず他パーティーの女性が参加してくる。狙いはやはり俺で、それをよく思わない野郎どもが酔ってカラんでくるから大変なのだ。


しかも、酔いが深まるにつれてカラミレベルが酷くなるから、それが原因で暴れられたりする。結果的にパーティー崩壊というわけだ。


そして2パターン目だが、こちらはかなりヤバい。


男性メンバーが男性を好きな場合である。こちらは想像すればすぐにわかるだろう。ダンジョン内や野営中に狙われる。そう、俺の後ろのアナを猛ったナニで塞ごうとしてくるのだ。


幸いにも、こちらは今のところ実害はない。切断や魔法で燃やしたナニの数は3本といったところだが、その後は恨まれてつきまとわれる。場合によっては命を狙われることもあるため、全員の息の根を止めたのは内緒の話だ。


⋯思い出す度に目頭が熱くなるわ。


そういった性癖を否定する気はないが、ノーマルと違って発散させるような専門店がないため、冒険者内の被害者は少ないながらもいるようだった。


アレは絶対に嫌だ。


聞くところによると、切れ痔が酷くてトイレもなかなか行けなくなるらしい。


さらに、意外と最悪なのが『愛の遍歴者』事件である。


ある受付嬢が見栄だが何か知らないが、イケメン冒険者とつきあっているなどと職場で言いふらしたことがあった。


そんなこと、普段ならどうでもいい話なのだが、ことそれが俺のことだったりするとメチャクチャなことになる。


俺が知らない水面下で隠れファン(?)が嫉妬心を発動し、ギルドの受付嬢内で殺伐とした雰囲気が流れた。


それが業務にとてつもない支障をきたしたらしく、根本原因である俺は事情を知らないままギルドマスターに呼び出されたのだ。


「君がナニをしたのかは聞いている。」


眉間に皺を寄せた大男─ギルドマスターがそう言った。





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