第16話 奴隷の少女。


 2人はビールを飲み干した。

 そして、俺にもビールをかけてくれる。


 すると、箱の中はビール掛け状態になった。

 いやぁ、野球で優勝したみたいだよ。


 酒場気分を満喫できて良かった。


 ミミルはお酒が弱いのかな?

 少し目がトロンとしている。


 「つばきさんの国の挨拶いいね! 乾杯って。わたし気に入っちゃった」


 そうかそうか。

 それはよかった。


 カルアも頷いている。


 ところで、2人は成人って言ってたけれど、お酒飲んでいい年なんだよね?


 カルアに聞いてみた。

 って、カルアの頬、真っ赤なんですが?


 「うん。もう大人だから大丈夫だよ〜。わたしもミミルも外でお酒飲むのは初めてだけれどぁ」


 そうなのか。

 でも、呂律が回ってないし大丈夫じゃないだろ。

 

 って、気づけばミミルは勝手にどんどんビールを注文していて、テーブルの上はビールジョッキだらけになっているんだが。


 カルアに助けを求めると、カルアは突っ伏して寝ていた。


 あー。

 これダメなヤツだ。


 向こうの世界で、新入職員を飲みに連れて行った時の悪夢が蘇った。あの時は色々と最悪だった。

 

 ……困ったな。


 ミミルは終焉に向かってひた走っているようだし。


 ミミルと目が合った気がした。

 すると、ミミルがくだを巻いてくる。


 「あのねー。前から言いたかったんだけど、なんでカルアだけ『君づけ』なわけー? わたしだってくんがいいんだけど?」


 あー。わかったわかった。

 勝手に呼んでくれ。


 それよりも、いますぐ飲むのをやめてくれ。



 こいつら、酒飲ませちゃいけない種類の人間だった。誰か助けて。



 俺が途方にくれていると、隣のテーブルに客がきた。ドサっと無造作に荷物をテーブルに置く。


 3人組で大男2人と華奢な男1人の組み合わせだった。


 大男の1人はリーダー格だろうな。

 足をテーブルに投げ出して、いかにも不遜な態度だ。


 もう一人の大男は、リーダー格の横に座り、顔色を窺うように愛想笑いをしている。


 華奢な男は対面に座って話さない。


 するとリーダー格の男は、テーブルをバンバンと叩きつけ、華奢な男に圧をかける。そして、掠れた低い声で問い詰めた。


 「ほらっ。出せよ。早く自由になりたいんだろ?」


 「……」


 もう1人の大男も追随する。


 「ほらぁ。兄貴が言ってるんだ。返事くらいしろっ」


 華奢な男は、胸元を握る。

 そして、ポンチョのようなマントの中に手を入れた。



 ポンチョ……?


 あっ。あいつは。


 『おい、ミミル。起きろ!! 起きないとパンツ流すぞ!?』


 くそ。

 全然おきない。


 俺は事の成り行きを見ているしかなかった。


 華奢な男は、テーブルに布袋を出した。

 あれは、カルアの財布だ。


 大男は、布袋の中をのぞと鼻の下をのばした。

 そして、ニヤリとする。


 「おーおー、結構入ってるじゃねーか。まぁ、全額返済まではまだまだだがな」

 

 華奢な男は不満そうな声を出す。

 すると、その声質は意外にも男性のようだった。


 「そ、そんな。もう結構返してるはず。あと少しのはず……です」


 「って、奴隷のくせに生意気な口ききやがって。おまえ、複利って言葉しらねーの? これだから学がないやつは。まぁ、そういうことだから、まだせっせと働けや」


 華奢な男が歯ぎしりをして立ち上がる。

 すると、大男が声をかけた。


 「そういや、アジトのやつがさ。お前が水浴びしてるの見たら女だったっていうんだよ」


 「……!!」


 華奢な男は身を翻して逃げようとするが、大男にポンチョを強引に剥ぎ取られた。


 すると、金髪ロングの髪の毛が、フワサッと肩のあたりまで落ちた。


 大男はニヤリと下品な笑みを浮かべる。

 華奢な男は暴れて対抗した。

 

 「や、やめっ……」


 大男は華奢な男の胸元にあったブローチを引きちぎった。


 「こんなもん使いやがってよ。すっかり騙されちまったぜ」

 

 「お母様のブローチ。返してっ!!」


 その声は、まさしく女性。

 しかも、かなり若い女性の声だった。

 ブローチは声を変える魔道具か何かだったのだろう。


 よく見ると、瞳は燃え上がる様に赤く、品の良い端正な顔立ちをしている。



 華奢な男……、いや少女は、大男に羽交締めにされる。そして、男は上着の下から手を入れるとコルセットを引きちぎった。


 「ちっ、こんなん巻いて胸隠しやがってよ。へぇ、いいもんもってるじゃねーかよ」


 少女は胸を揉みしだかれる、

 そして、大男は不意に、ワンピースローブの下から手を入れた。


 少女は激しく抵抗するが、大男が「止まれ!」と命令すると、身体が硬直し、まるで無抵抗の人形のようにかった。


 これが奴隷の首輪の効力か。

 ……えげつないな。


 男は下着を無理矢理剥ぎ取ると、指をペロンと舐めて、再び少女の下半身に指を持っていく。


 少女が眉間に痩せる。


 「痛っ……」


 大男は醜い顔を更に醜くして、にやにやする。


 「おぉ、おまえ。処女か? ご無沙汰だしな。ここで頂いちまうか。おい、お前。そいつの両腕を押さえろ」


 正直、見ていられない。

 しかし、ミミルとカルアは、全然起きてくれない。



 おい!

 誰か助けてやれよ!!


 ここは食堂だぞ?

 周りのやつら。なんとかしてやれよ。


 しかし、皆、大男に目をつけられたくないらしい。

 ある者は、それをニヤニヤしながら見物し、そして、あるものは眉をひそめて、顔を背けるのだった。


 すると、少女は羽交締めにされ、乱雑にテーブルに乗せられた。そして、皆の面前で下着のない両足を大きく広げられた。


 少女は大粒の涙を流して、必死に首を左右に振っている。

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