番外編 不動 澄恵 愛ゆえに・・・2/8


--------------------


剣一君の気持ちと姫野 雫と言う想い人の存在に打ちのめされてからは、私のこの気持ちに従うべきなのか思い悩む日々が続き


あっという間に私も琴音も中学生になる、

私は昔から続けてるテニスに打ち込む事で、剣一君への想いを断ち切れる様に努力したが無意味だった


忘れられる訳もない、私の心は既に剣一君一色なのだ・・・他の男が雑草にしか見えない・・・


「ふ、不動さん・・・そ、その・・好きです!!僕とお付き合いしてください!!」


(何度目だろ・・・私がその言葉をかけて欲しい人はこの世でたった一人だけ・・・)


「ごめんなさい・・・」告白を断る度に剣一君への想いが高まる・・・学校内で剣一君を見かけると、欲望のままに押し倒しそうになる


しかし、剣一君は徐々に持ち前の明るさを失っていった・・・髪の毛はぼさぼさで折角の高身長が猫背で小さく見える、いつも周りにいた友人達も離れてしまい何時も一人ボッチだった、でも私にとっては・・・


(これで、剣一君にこれ以上悪い虫が近づかない、私はどんな剣一君も愛せるからこの状況は私にとっては最良)


そう思っていたが・・・(くッ!姫野 雫ぅぅぅぅ!!)邪魔な女だけは相変わらず剣一君にすり寄っている・・・


(邪魔!邪魔!邪魔!邪魔!邪魔!邪魔!邪魔!邪魔!)


この頃になると、琴音が剣一君の事を徐々に避ける様になり、3年になる頃には【陰キャ】【クズ】【ゴミ】【キモオタ】と私の剣一君の事を私にも罵る様になった


琴音(クズ)が剣一君から離れてくれたのは嬉しいが、こいつの剣一君に対する暴言には毎回殺意を覚える、それに琴音(クズ)が剣一君を避ける事により私も琴音を通じての接点を持てないという弊害を生んだ


(琴音(クズ)は何をしても私の邪魔をする・・・・いっそ消えてくれないかな・・・)


結局、中学の時は剣一君と殆ど接点のないまま高校に上がる、勿論だけど高校は剣一君と同じ学校を選択した(琴音は別の高校を志望したが落ちた様だ・・・クソが頭悪すぎだろ!)





私が高校に上がると、2年の男子生徒で陰キャの先輩がクラスのイケてる男子にイジメられてると噂になった、調べるとそのイジメられてる男の子が剣一君だった


(助けたい!私が救い出して私に依存させたい!私抜きで生きていけないくらいに!)


私は意を決し剣一君を助けたくて、剣一君をイジメてる池月という馬鹿に会いに行ったが


「はぁ?俺が誰をイジメてようが関係ねぇだろ?それよか、お前可愛いなwあんな陰キャどうでもいいからよw俺と付き合えよ、沢山良い目見せて楽しませてやるよw」


「貴方に全く興味ないんで、とにかくイジメを止めて下さい!!」


池月は話にならないクズだった、どうにかイジメを止めさせる方法を考えないと・・・

私が思案してると池月へ忠告したその日の放課後、琴音に二人きりで話があると屋上に呼び出される


「琴音?改まってどうしたの?」


そう尋ねると琴音は振り返り私の胸倉を掴んできた


「アンタねぇ!!あのゴミの教室まで行って、池月にイジメを止めるように文句言ったらしいじゃない!!」


私は胸倉を掴む琴音の両手首を握ると力を込めた「クッ」手首を締めあげると力が抜け私の上着の襟から手を離す琴音が手首をさすりながら距離を取る


「それが?イケない事なの?私は剣一さんが不当に扱われない様に注意しに行ったんだけどぉ?」


私の言葉に顔を真っ赤にして怒る琴音


「ふざけんじゃ無いわよ!アンタが目立つ行動をすると私とあのゴミが義理の兄弟ってバレるでしょうが!!」


(コイツ・・・私が羨ましくて、妬ましくて、仕方ない義妹の立場を自己保身の為に捨てるのか・・・本当にクズだな・・)


「澄恵!もし私があのクズと義理でも兄弟とか誰かにバレたら私の高校生活は終わりなの、そしたらアンタのせいだからね!もしバラしたら!絶交よ!絶交!!いいわね!!」


そう言うと私の肩にワザとぶつかりならが屋上から消えて行った・・・


悔しい!憎い!私がどれほど望んでも手に入らない物を、あいつは要らないと無下に扱う・・・絶対に後悔させてやるから・・


しかし、ここでアイツを剣一君と義兄弟とバラシて琴音までイジメの対象になり、優しい剣一君から恨まれて私が剣一君に嫌われたりしたら生きていけない・・・何か方法を考えなきゃ




朝の登校時にそんな事を考えながら歩いていると、運命・・・私は交差路でバッタリと剣一君と出くわした前髪をワックスで後ろに流して昔と同じ綺麗な目をした私の想い人・・・


私はドキドキで顔が赤くなってるのを隠す為に会釈だけで挨拶すると学校に駆けだした、頭の中がホワホワしてて周りが見えてなかった私の方へ軽自動車が突っ込んでくる


「!?」一瞬の事だった、私の体が宙に浮くと追突してくる軽自動車を空中で躱しそのまま剣一君の胸の上に倒れかかって着地した


剣一君の厚い胸板と鼓動、そして頭の中を麻痺させる匂、暫く抱き着き剣一君を堪能していると自分の下腹がキュンと締め付けられて、体が剣一君を欲しがってくる


「大丈夫か?」


久しぶりに聞いた剣一君の声・・・心が幸せで満たされ放心している、体は下腹部の疼きで直ぐに起き上がれないジッと剣一君の顔を見つめてると


「気を付けて行けよ」と足早に立ち去っていった、私は声をかける事もわすれて剣一君の後ろ姿を見送った


その日は私にとって終始、歓喜に震える一日となった、朝から剣一君と遭遇し体を密着させたことで授業は頭に入って来ない、頭の中は剣一君との淫らで甘い行為の妄想しか浮かばない・・・


放課後にはさらに私を歓喜させる出来事が起こる如何やら姫野 雫というゴミは、剣一君をイジメていた池月と交際していたらしく、その事を知った剣一君から絶縁を告げられたという事だった


(良い!すごくいい!!最高のシナリオだ!!)一人邪魔者が排除出来た!剣一君を苦しめたゴミ(雫)と馬鹿(池月)には地獄を味わってもらうとして・・・今の状況は喜ばしい



そして私は帰宅して、失禁しそうな程歓喜する事になる


「あ、澄恵帰ってきた?少し話あんだけど・・」私は剣一君が姫野 雫という害虫と縁を切ってくれた事が嬉しくて仕方なかった


「え~♪♪~何々~お母さん」


「なんか機嫌いいのね・・まぁ良いわ、あんた陽香叔母さんの息子の剣一君知ってるよね?実は狛田の家を出たいって言っててお父さんと相談して不動の家で引き取る事にしたの」


今度は祝福のベルで頭を殴られた様な歓喜の衝撃だった、「え?て、え?て、て事は・・・もしかして・・・」


「そうね、戸籍上はアンタの義理の兄になるのかしら、今までも従兄だったんだから構わないでしょ?」


【ドサッ】【カラン・カラン】私は荷物とラケットを床に落としてその場にへたり込み、溢れる涙を両手で覆う


「え?ちょ、ちょっと!澄恵?何泣いてるの!?も、もしかして嫌だった?ご、ごめん、あんたも年頃だから、で、でも剣一は此処には住まないから!安心し「チョット!どういう事!!一緒に住まないとか!!」え?どうしたの澄恵・・?」


私の頭の中は、両親が不在の時の剣一君と甘くて淫らな同居生活を想像し、もう失禁したかと思う程に体が反応していたので、母の言葉が許せない一緒に住めないとかあり得ない・・・


でも剣一君の決める事だから私にはどうしようもない


剣一君は母の言う通り、狛田の家で琴音(クズ)の事を義母(どうでもいい)に今までの扱いについて暴露して【家族の縁を切る】と言い残し家を出ていったらしい


メッセージで琴音(クズ)から、【相談したい事がある】と来てたが【ごめん今少し家でゴタゴタしてるから】と本当の事だが匂わせで返信しておいてやった


これで私と剣一君を邪魔する奴らは居なくなった

後は奴らが再び剣一君にすり寄って来ない様に手を打つだけだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る