番外編 不動 澄恵 愛ゆえに・・・1/8

番外編のメインでクライマックスのストーリーになります、作者的にエピローグ前後で入れるかを最後迄悩んだ話です

全8話構成となってます


最後迄お付き合い頂けると嬉しいです


              nayaminotake

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〇 不動 澄恵 愛ゆえに・・・



「お~い、澄恵ぇ~陽香叔母さんと剣一君来てるよぉ~」


玄関から母さんの呼ぶ声がする・・・今日はせっかくの休み・・連日のテニスの練習で私もクタクタだ・・


(もう少し寝かせてよ・・・・って陽香叔母さんが来たのか・・・まだ朝じゃん・・たく・・)


寝巻で自分の部屋からでて階段の踊り場で玄関を覗き込むと、陽香叔母さんとその横には男の子が・・・


【ドクン】【ドクン】【ドクン】心臓がうるさいくらいドキドキする、胸が苦しい・・・


あの男の子の事が気になる・・・知りたい・・・触れたい・・・・


モジモジしてる間に、男の子が促し陽香叔母さんと玄関から去っていった


私は慌てて自分の部屋のカーテンを開けて、陽香叔母さんと並んで歩く男の子の後ろ姿を見えなくなるまで眺めていた


【ガチャ】「あら澄恵起きてたの?あんた呼んだのに降りてこないから・・・さっきまで陽香叔母さんと剣一君が尋ねてきてたのよ?」


「剣一君・・・・・」「ああそうか澄恵は知らないよね、最後に遭ったの2歳の頃だしね剣一も3歳の事で覚えて無さそうだったしね」


(剣一・・・けんいち・・・ケンイチ・・・ケンイチ兄さん・・・ケンイチ君・・・)


それからは学校でも外出先でも、他の男の子が霞んで見える・・・



一目惚れだった・・・

しかし、それから剣一君とは会う機会がないままこの気持ちは膨らむ一方だった


それから数年後、体調を壊し入院していた陽香叔母さんが亡くなったと聞いた・・

私もお別れをしたかった・・・というのは建前・・


(叔母さんを失った悲しみと寂しさを私が埋めてあげなきゃ・・・私が・・・)


しかし、叔父さんが参列を断ったので私らは葬式には参列出来ない・・・(私が居なきゃ・・剣一君は・・)


お父さんの車で母を迎えに行った時に窓越しに見えた剣一兄さん俯いて椅子に座ってる姿が、心に強く残る


(ああああぁぁぁぁ、陽香叔母さんを失った寂しさを埋めれるのは私だけなのに・・・ゴメンね・・ゴメンね・・)


涙が溢れる・・そんな剣一兄さんの姿を見えなくなるまで見つめる・・母が何か言っていたが聞こえてこない




それから暫くしていつもの様にテニスの練習から帰宅するとリビングで父と母がとんでもない会話をしていた


「どうやら、義兄さん再婚するみたいね・・・まだ半年も経たないのに・・・それに相手にも連れ子の女の子が居て、剣一の義理の妹になるのかな?」


【ドサッ】・【カラン、カラン】ショックでテニスラケットとスポーツバックを床に落としてしまった


「あら?澄恵かえってたの?「お母さん再婚って!?どういう事!!」ああ、いまねお父さんに話してたんだけど、狛田の叔父さん再婚するそうよ」


「狛田の叔父さんが再婚しようがどうでもいい!それより義妹が出来るって「ああ、向こうの子供がね確か【琴音】ちゃんと言ったかな?たしかあんた同い年だよ」


私は目の前が真っ暗になった・・・剣一君に本当に妹が・・・しかも私と同じ歳の・・・


「あら?澄恵どこいくの?ご飯は?」



自分の部屋に戻り、思いっきり枕を殴りつける


「クソ!糞!くそ!害虫め!私の剣一君に近づくゴミムシめ!」


羨ましい、悔しい、恨めしい、何度も何度も枕を殴りつける私の目からはボロボロと涙が零れている




「今日からこのクラスに転校してきた・・・狛田 琴音・・・です・・・宜しくお願いします・・」


偶然だろうか、神様の悪戯か・・・剣一兄さんを奪った糞虫が私のクラスに転校してきた・・・見た目はまぁ悪くは無いが私には及ばない


流石に転校初日で小説や漫画みたいにチヤホヤと声を掛ける人もいないから自分の席でずっと俯くクソに私は精一杯の笑顔を貼り付け語りかけた


「ねぇ琴音ちゃんって呼んでいい?私は不動 澄恵、もし良かったら私と友達にならない♪」


「え?!いいの?!う、うん、今日からよろしくね・・え、えっと・・不動さ「澄恵よ♪」澄恵ちゃん!」


こうして私は憎くて、恨めしくて、羨ましい、泥棒猫と友人のフリをする事にした、剣一君に近づく為に・・・


私の友人達とも打ち解け、琴音は学校でも友人の輪を広げて行った



ある日、琴音と公園で遊んでた時に近くでサッカーをしていた中学生の男子が私達の砂場にボールを打ち込んできて折角作ったお城が崩れた


ボールを拾いに来て謝りもしない中学生に私は日頃の琴音に対する嫉妬のイライラからつい文句を言ってしまう


「ちょっと!私達の作ってたお城壊しておいて謝りもしないの!!」


生意気にも食ってかかる私に続いて琴音も迎合して文句を言うが「生意気だな!この!!」砂場で作っていた他の部分も蹴り崩されて、私は悔しくて涙を流す


「おい!義妹達をイジメるな!!」


何処からか現れた私の愛しの剣一君が、自分よりはるかに大きい中学生3人をあっという間に叩き伏せると、中学生達は泣きわめきながら逃げていった


「大丈夫か?琴音達は俺が守る!!」


ニッコリ笑うその眩しい笑顔に胸が締め付けられ、思わず剣一君に抱き着く・・・


それから何度か琴音と一緒に剣一君と遊ぶ機会があったが、私には判った・・剣一君にとって私は義妹の友人の一人で未だに名前も憶えて貰えて無い事に



そんなある日、琴音から家に遊びに来ないか?と言われ二つ返事で了承した、不覚にもこの時ばかりは琴音に感謝をしてしまった


「澄恵ちゃん、私お茶取ってくるね、好きな漫画見てていいからね」


そう言うと琴音は私を部屋に残し出て行った、正直漫画なんかどうでもいい剣一君の部屋は隣だ・・入る部屋を間違えたフリして突入するか・・・


そう思っていたら隣から声が聞こえる・・・



【けんちゃん、最近琴音ちゃんに遊んで貰えないから寂しいんでしょw】


【ええ、でも雫が居るから平気だよ~】


【も、もうw恥ずかしい事言わないで~】


はぁ?誰?雫?琴音以外にも剣一君に近づくクズがいるの?!しかも・・【ええ、でも雫が居るから平気だよ~】


(それは私が剣一君から贈られるはずの言葉なのにぃぃぃぃ!!)


私は【雫】という得体の知れないゴミに、怒りを通り越して殺意を抱いてた


「お待たせ、澄恵ちゃ・・ん?どうしたの?そんな壁際で・・・?」


「うん?あは♪ちょっとねw、それより隣の部屋・・・義兄さんの部屋・・誰か来てるの?話声が・・」


「ああ、うん剣兄の幼馴染の姫野 雫ちゃんだよ?私も前は良く一緒に遊んでもらったの」


動揺を隠しながらも琴音に尋ねる


「ふ、ふ~ん、なんか凄く親しそうだよねぇ~少し会話が聞こえちゃった~」


すると琴音は少し寂しそうに苦笑いすると


「そうなんだよね・・・剣兄にとって雫ちゃんが一番大事な友人で大好きな女の子なんだよね・・私だって・・剣兄の事・・・・」


【大好きな女の子なんだよね・・】その一言にハンマーで頭を思いっきり殴られた様な衝撃を覚えた・・・見開いた目からは今にも涙が溢れそうになる・・・


「ご、ごめ~ん~琴音、お母さんから頼まれてた用事思い出したから今日は帰るね~~」


そういうと何か言いながら引き止める琴音を振り切り横目で剣一君の部屋を見ると素早く玄関で靴を履き、走って逃げた・・・・


(嫌だ・・・イヤだ・・・いやだぁぁぁぁぁ!!剣一君の一番は私がなるのにぃぃぃぃ!!)



それからも、何度か琴音に家に誘われたがあの時の事がトラウマになり、適当な理由を付けて断わるのだった・・・

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