第42話 最終章 不動 剣一 復讐対象との会合

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〇不動 剣一 復讐対象との会合




国内最大手出版社 〇川書房 本社ビル前



俺は、純香さんの車で連れられ本社ビル前に来ていた

純香さんの後ろを歩く俺は、何時もの陰キャスタイルでは無く長い前髪を髪を後ろに流し母の遺品の髪留めで止めた顔出しスタイルだ


これは賭けだ・・金森が顔を見た瞬間に俺が純香さんの甥で陽香の息子だと気付いた場合当初の計画を白紙にする必要がある

しかし、澄香さんと事前に申し合わせして決めた会話迄持って行けたなら・・・


緊張で喉が乾く、柄にもなく手に汗をかいている


純香さんが受け付けの女性に俺の事を話していると、受付の女性が急に口を手で押さえ目が飛び出すくらい大きく見開いた状態で固まってしまった


俺は自身の緊張を紛らわす為に敢えて笑顔で澄香さんの横に立ち

「本日は、社長と編集長に呼ばれ御社にお邪魔しました」

そう軽く会釈すると

「あ、あの!不動先生ですよね・・わ、私大ファンで・・し、しかもこんなイケメン・・ふぅ・・」


興奮していた受付の女性は、急に糸が切れたように椅子に倒れ込んだ・・


「はぁ私、小説ではなく現実で興奮しすぎて気絶する奴を初めてみたよ・・・」

そう溜め息をつきながら受付の中に回り込み受付嬢の頬を軽く叩きながら起こした


「あ、あの・・私・・どうして・・」

気付いた受付嬢に手を差し出し不機嫌な顔をする純香さん

「良いから、早く入門パスを発行してくれ・・時間もないんだ」


純香さんからの冷たい目線と、早くよこせと手をプラプラする仕草に慌ててPCを操作しゲスト用の入門パスの登録をすると俺に手渡し・・・・


そうにしてたが純香さんに「はやくしろ」と言わんばかりに奪われてしまい受付嬢はうつむき残念そうな表情をする


「有難う御座います【ニコッ】また帰りにお返しに寄りますね」そう営業スマイルでお礼を言うと顔を赤くしてコクコクと何度も頷いていた


「はぁ~剣一・・お前無自覚に女を落すのやめろよ・・幼馴染の雫ちゃんだっけ?悲しませるぞ」


純香さんには、以前俺が小説家として成功してるのに版権の会社設立や財産管理を澄香さんにお願いした時に、狛田家の家族に何故秘密にしてるのか説明するのに

俺が高校でクラスメイトに嫌がらせされてる(酷いイジメだとは言ってない)事

狛田の家でも義妹との関係が上手く行ってない事

何より父も義母も信用出来ない事を話していた


その事を話してからは毎回会うたびに自分が学校と狛田の家族と話をつける!と怒ってくれたが

『俺には優しい幼馴染みが付いているから平気だよ』と、穏便に断っていた


本当は復讐の計画の為に隠してるとは言えないのである意味では陰キャを装って隠れ蓑となってる状況は計画通りとも言える


エレベーター内で他愛も無い話を純香さんとする時間がある位の高層階に着くと、社長室に隣接する、超VⅠP専用の応接室に社長秘書という方に案内され通される


俺は入って直ぐの一番手前に座ろうとしたら、お前は奥の席だと純香さんに押し出され俺の座った所に純香さんが座る


すると直ぐに


【こちらでお待ちです・・・】先ほど案内してくれた秘書の女性が扉を開けると



「お~ぉ!不動先生!お会い出来て光栄です!」「不動先生のご活躍は我が出版社の誇りです!!」


白髪のやや細身で、高級そうなスーツを着た男性が両手を広げて俺を歓待する、その後ろには腰巾着の様に控える頭の天辺が禿げた小太りの初老男性


(あっちの白髪の細身の方が社長で、後ろの禿げが金森かぁぁぁぁ!)


俺と純香さんはソファーから立ち上がり

「いえ、此方こそ僕の拙い書き物を世に出して頂き本当に感謝してます」

今すぐ殴り殺したい程の憎悪を塗り固めた心の中を笑顔で隠し軽く頭を下げる


社長と金森に名刺を渡され、俺は着席をうながされたのでソファーに浅めに腰を掛ける


「いやぁ~不動先生とは以前からお会いしたいと、そこに居ります担当の不動君に何度も会合の場をセッティングする様に頼んでいたのですが先生の方が執筆でお忙しいとの事で中々機会を持てませんでしたが本日こうしてお会いできてお顔を拝見すると、聞いていた通り本当にお若い!」


美辞麗句を使い付くし俺をおだてる社長に愛想笑いで答えると、金森が口を開く


「本当に!先生はまさに現代の芥山、小宰、漱岩、それらの偉人に肩を並べる天才的な文豪です!」


その声も醜悪に聞こえ耳障りで吐き気がする・・


「そ、そんな!お恥ずかしい・・その様な偉人となんて恐れ多い」

照れた演技で軽く首を振ると社長から俺に質問を投げかけられる


「ところで、不動先生はそのこ不動編集長とご親戚か何かですか?」


来た!当然の質問だが、ここを乗り切れば!!


その回答は既に純香さんと打ち合わせして決めている


「いえ、私の本名は別です、不動と言うのは無名の僕の作品を評価して世に送り出してくれた、此方に居られる不動さんへのリスペクトです」


事前に申し合わせしたので純香さんは冷静だ


「はい社長、不動先生の仰る通り先生の本名は別です、私が先生の作品を初めて拝見した時は確かに別のペンネームで執筆されておいででした」


流石、純香さんだ嘘も堂々としており、その度胸は筋金入りだ


「なるほど・・宜しければ本名をお伺いしても?」これも想定内の質問だ


「申訳御座いません、本当に2年前の駆け出しの頃であればこんな心配必要無かったのですが、御社のお陰様で世間でも少しは認知される存在で有る事は私も自覚してます」


「そのため、自身と自身の多数の未発表作品の安全と保護の為、今の時点で本名を公表するのは差し控えさして頂いてます、誠に申し訳ございません」

そう頭を下げると


「そ、それは当然の対応です!私の方が配慮が足りておりませんでした!どうぞお許し下さい!」そう慌てて社長と金森が頭を下げる


「ご理解いただけて何よりです、ではお互いこの事は水に流すという事で」


「はい、勿論です先生!ところで先生、今の話から推測すると今弊社より出版頂いてる作品以外にもまだ作品のストックが有ると言う事でしょうか?」

目ざとく俺の話に食いぎみに詰め寄る金森・・


やはり、餌に食いつてきたな(笑)


「これは・・口が滑りましたか・・流石に編集長、聞き流しては頂けませんね・・そうです私は既に300以上の書籍化出来る小説の原稿を保有してます」


「「!!??さ、さ、300!?」」


社長と金森はその数に驚く


「そうですね、私の書籍データは、複数の国が保有するサーバーを経由してたどり着く先のシークレットファイルにアクセスしないと持ち出せない仕組みになってます」


「自慢ついでに申し上げますと、私が世に送り出しているのは内容的にランクの低い順に提供させて頂いてます」


「!!?と、という事は・・もしかして!!」


「はい、今後順次世に出す予定の作品の方が私の主観ですが良作と自負してます」

俺の小説家としての異次元のスペックとその保有してる書籍待ちのストック数の付加価値に想像を越え驚愕する2人


「そして、私はこの書籍類を知的財産として司法、財務管理する会社を立ち上げエンシェントジャパンとして法人化もしております」


いっかいの高校生が会社を保有していると知りその事実にもさらに驚愕する


「ですので、法人化した弊社から提供する私の書籍は、御社にのみ提供をお約束する物では御座いません」


「!?せ、先生!そ、それは・・・・」

「既に弊社に徳〇書房さん、小〇館さん、講談〇さまから契約の相談を頂いております」


ライバルの大手出版社の名前に慌てる社長と金森「ちょっ、ちょっとお待ち下さい!弊社は不動先生が無名の頃に発掘し世界に羽ばたく手助けをしたと自負しております!それを・・


「はい、勿論です、ここに居られる不動編集長には並々ならぬ御恩がありますので本日こうしてお二方と会談する場に出向きました」


「で、では弊社と契約を・・「ですが、徳〇書房さまからは、郊外に私の執筆用の戸建てを用意するつもりがあると魅力的なお話しを頂戴していまして、私としては・・


「お、お待ちください!!で、でしたら弊社は駅前に先月建ったばかりのタワーマンションの最上階を執筆スペースとしてご提供させて頂きます!」


「不動編集長はどう思いますか?この条件」

俺は他人をアピールする為、冷めた口調でそれとなく話をふる


「そうですね、不動先生は未成年ですので個人契約難しいと思われますので、一旦は弊社の資産として購入し、先生には書籍を毎年最低3冊弊社に提供していただけると言う条件で居住頂くと言うのは如何でしょう」打ち合わせ通りの回答だ


「そ、そうして頂けるなら弊社としても有難いです」「是非に!」


俺は社長の方はスルーして金森方を見つめる・・

そしてわずかに口元が緩むのを俺は見逃さない多分こいつは俺の餌に今食いついたはずだ・・・


「分かりました、不動編集長の事は全幅の信頼をしてますし、不動編集長が仰るなら間違いないと思いますのでそれで契約させて頂きます」


「おおおおお!」「やりましたね社長!!」目の前で契約成功の握手をする2人


横を見ると呆れた表情で苦笑いをする純香さんに同じく苦笑いでお返しする



帰りに約束通り受付の女性にカードを返却する際に、サイン入りの来週発売の書籍をプレゼントし握手と写真を撮った







自宅への帰り道・・純香さんは会社に用事があるとのことで俺はタクシーに乗り家の近くまで送ってもらう


・・・・金森という男に警戒していたが所詮小物だった俺の名前を初めて聞いても、この顔にも全く反応しない、しかも純香さんの血縁者では無いと俺だけで無く純香さん本人から聞いて疑いも持たないだろう、純香さんの曲がった事を嫌ういつもの言動がこう言う形で効果が有るとは嬉しい誤算だった



「金森と言う餌も撒いた・・後は腹をすかせた大物が食いつくのを待つだけか・・・」







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