第43話 最終章 不動 剣一 母からの言葉を捨てる



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〇 不動 剣一 母からの言葉を捨てる




学校に行くと、相変わらず俺をイジメて楽しむ連中に玩具にされてる、しかし俺には雫をコイツらから守るという母に誓った使命がある


『雫ちゃんを泣かせたらダメでしょ!貴方は雫ちゃんを守る男の子でしょ!』


母から貰った言葉が今の俺のアイデンティティだ、俺は母の手帳の続きに幼馴染に対しての感謝の気持や長年懐いた想い、義妹に対して不甲斐ない義兄になって申訳ない気持ちを、密かに綴ってのこしている、壊れていく自分を保つ為の自己保身なのかもしれない。

誰かの事を想って、優しい自分を肯定していないと本当の化物になりそうだった。



『思いやりよ!思いやり!』


母はクズでゲスな連中に俺をネタに脅されて、屈辱的な状況を受入れ薬でボロボロになり、そして誰にも打ち明けずに、この世を去った・・恨み言も、泣き言も一切言わずに、最後まで俺の事褒めてくれて


俺はそんな母を尊敬し敬愛している、だから俺が好きな幼馴染を守る為、義妹を巻き込まない為にこの屈辱に耐えるのは、かつて母から守ってもらっていた俺にとっては因果応報なのだろう・・雫だけは守っらなければ・・俺自身を保つ為にも

・・・


日々学校で受ける暴力は、体が慣れてしまったのか殆ど痛みを感じなくなっていた、それは精神的な部分も同様だった、


精神的なダメージは雫が俺の事を毎回庇ってくれてる事で満たされていた、この幼馴染みの優しさに触れていれば、どんな酷い扱いにも耐えれた


俺の中にあるのは、母の無念を晴らす事と、幼馴染をクズから守る事だけだ







・・・・しかしそんな俺の想いは無残に砕ける






俺をイジメて楽しむクズと排他的な快楽に醜く喘ぐ幼馴染・・・~『も、もうw恥ずかしい事言わないで~』『ねぇけんちゃん、家で食べようよ?』


そしてそんなクズ共に穢される母の思い出と俺の想い、そして感謝の気持ち・・・壊れる俺の心


優しく誠実で世話焼きな、俺の自慢の幼馴染はその時、俺の中で死んだ・・


どす黒い感情と幼い頃の輝く思い出の中混乱しながら家に帰ると、相変わらず俺の事をゴミと蔑み見下す義妹・・・トドメだったのかもしれない

(俺なんでこんな奴に感謝と謝罪してたんだっけ・・・もう、どうでもいいな・・)


(いっそコイツに言ってやろうか・・お前の母はホストに入れ込み借金まみれで俺の母の保険金目当てで父を誘惑して関係を持ち後妻になったんだって、まぁ今はその父も若い他の女にうつつを抜かしているがな)


いや・・コイツにそんな事教えてやる義理ももうないか・・・


俺は母との思い出の品だけ別に仕分け貸し倉庫に預ける、他の物は全て裏山にて焼却処分した


燃えカスになる幼馴染や家族との絆を膝を抱え眺める俺の目からは一滴の涙が零れる・・・

『雫ちゃんを泣かせたらダメでしょ!貴方は雫ちゃんを守る男の子でしょ!』

『思いやりよ!思いやり!』


敬愛する母の言葉に相応しく在ろうと今まで生きて来たが


「母さん申訳ないけど、母さんの言葉は此処に捨てていくよ・・もう俺には家族も友人も不要だから」



そして俺の心は壊れたが心に掛かった雲は晴れた

大好きで守ろうと誓った相手は俺の中で死んだ

クズの親から守りたかった妹は俺の中で死んだ

なんの躊躇いも無くなった俺はイジメに関わった奴らに生き地獄を味合わせてやる


俺は復讐を遂げた後の事を気にして立ち回っていたが今まで耐えてきたが今俺に有るのは破壊衝動と激しくなる殺意だけだ


その日から俺には、元幼馴染の涙も、元義妹の涙も濁った汚水にしか見えなくなった


俺は耐える事も守る事もやめた


徹底的に今までに耐えてきた分の報復を、俺をコケにしてきた連中全員に何倍にもして仕返した


八つ当たりだったのかもしれない未だ母の無念を晴らせない事への


そんな連中にも自分達のしてきた事への負債を払う時が来た


俺を助けるふりして、クズと一緒になり俺をコケにしてくれた元幼馴染は、好き合って付き合ってると思っていた、池月のクズにアッサリ裏切られ半グレ達の玩具にされ二度と子供を授かれない体にされてしまった


縁を切った元義妹には、クズ両親の事を洗いざらい教えてやった、

その元義妹には元幼馴染への危機を知らせる手紙を託し、

相変わらずの自己中クズで間違った選択をして一生消えない罪悪感を背負わすつもりだったが、

多少はまともな判断力を残していた様で最悪の地獄行きだけは回避した様だ、俺の罠を乗り越えた報酬として学生の間は金銭的な支援を約束した


アホな元父は元義母に作った多額の負債に加え不貞行為の慰謝料も支払う事になり借金で破産は確実、しかし手を出した闇金への負債に破産申告など通じるはずもなく身重な浮気相手を抱えて極貧の避行は確実だろう


頭のネジが緩んでる元義母はアホの元父親から搾り取った慰謝料と財産分与で、今以上に拍車を掛けホストに入れ込むだろう・・金の続く限りは・・・まぁ最近は熟女専門の危ない風俗店の面接を受けたというし搾り取った金は文字通り泡と消えたのかもしれない(笑)


元幼馴染を暴行し学校を襲撃してきた池月と半グレは俺から返り討ちにあった後、警察に捕まり、全員服役する事になった。




「池月へは手筈通りの生き地獄を・・・紅竜の連中は、全員獄中で・・・・いいな・・」

俺は暗い路地裏で2000万入った紙袋を暗闇に紛れる男に手渡すとそのまま振り返らずに表の明るい道に戻る


これで半グレ共は息のあるうちに表には出れないだろうし、池月も俺の用意した獄中での地獄の扱いに耐え切れとは思えない・・自分で命を絶つ事になるだろう、これで池月達に受けた屈辱は清算されるだろう・・


後は・・・・・・




【ピロロロ・ピロロロ】


着信は【金森 蓮司】


ようやくか・・・この連絡をまっていた・・もうじきだよ母さん


「もしもし、お久しぶりですね金森編集長」


ようやく俺の撒いた餌に奴が食いついた・・・











「いやぁ~素晴らしいクルーザーですね!不動先生!!」


俺達3人は今東京湾のを出て都内の輝く夜景を見ながらのナイトクルージング中だ


「いえいえ、勢いで購入したクルーザーですが、私は船舶免許を持ってませんので、ただの置物ですよ」


俺は視線を向けると、豪華な操舵室で最新の機材を搭載した、高級クルーザーに目を輝かし楽しそうに運転する金森の姿があった


「それにしても、金森さんが趣味で釣りをされてて船舶免許もお持ちとは存じ上げませんでした」


これは嘘だ、本当は金森の事を調べ上げこのクズが沖釣りが趣味で毎週の様に通ってるのを知った上で乗りもしないクルーザーを購入したのだから・・・


「いやぁ~こんな素晴らしいクルーザーをお持ちなのに、運転せずに港に留めて置くのは勿体ない!!」


操舵用のハンドルを嬉しそうに撫でながら答える金森


「でしたら、こうして偶に金森さんが運転してくれたらこの船も浮かばれますね」


「ほ、本当に宜しいのですか!?こんな凄いクルーザーを!!」俺は歓喜してるクズに貼り付けた笑顔で頷いて見せる







「いやいや、何やら金森君の嬉しそうな声が聞こえたから来てみたけど、何の話かな?」








クルーザのパーティールームから、ワイングラスを片手に出て来た初老の男・・・こいつが最後の復讐相手・・







芥山賞作家にして日本文学会の重鎮、超大物作家


皆川 冬樹(みながわ ふゆき)・・・・






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