第40話 最終章 不動 剣一 偽りの家族との出会い

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〇 不動 剣一 偽りの家族との出会い




父は仕事を休めないとの理由で、葬儀は家族葬にて限られた人数で小規模最低限で行われた・・花も弔電も無く式に出席したのは俺と父、そして純香さんだけだった、

本当は純香さんの家族も雫の家族もお別れに来ると言ってくれたが、喪主でもある父が少人数でひっそり執り行うからと参列を断った


簡略式のお葬式なので、その日の内に告別式、葬儀、初七日を執り行い翌日には火葬まで終わる


父の焦ったようなスケジュールには色々と不信感を抱くが今は母との別れを惜し事が大事だ


式が終わり葬場の用意した車で火葬場に着くと、係りの女性が火葬出来ない物が一緒に御櫃に入って無いか最終確認してくれて、何点か俺に戻してくれた


結婚指輪、手鏡、髪留め、そして化粧ポーチ


案内に従い、父が火葬のスイッチを無造作に押すと

【ガチャン】乾いた音がして赤いランプが点る

「うっっっ・・・母さん・・」

俺の肩を抱く純香さんも大粒の涙で溢れていた


火葬を待ってる間の時間、父は別で少し用事があるのからと言い火葬が終わる時間までには戻ると出て行った、純香さんは控室のソファーに座りウトウトと寝ている


俺も純香さんも、一昨日から殆ど寝てない・・しかし俺は眠気も感じず母の遺品の化粧ポーチを調べていると、化粧道具に紛れて一つのカギが出てくる


(ロッカーのカギみたいだが・・・)


結局火葬が終わっても父は戻って来ず、純香さんが電話をしたが

「あんたね!!自分の妻の最後の御骨拾いにも来ないとか、ふざけてるの!貴方みたいな薄情な人とは金輪際縁を切ります!」


と怒鳴っていたが、電話を切ると溜息交じりに苦笑いして、俺と二人でボロボロの骨になった母の御骨を集めた


純香さんは、俺の持ってる御骨入れより小ぶりの御骨入れに、小さい骨の部分を選んで入れて大事そうに包んで胸に抱えて俺に挨拶して迎えに来た旦那さんと娘さんの待つ車へ戻っていった


まだほんのり暖かな母のお骨入れを胸に抱えロビーで父を待っていると、ようやく父が火葬場に戻ってきた「これお母さんの御骨・・」と見せたが「そうか、早く乗れ」と一度も母の御骨に触れる事無く車に乗り込み家路に帰った


翌日から父はまた単身出張先に戻って行った、俺の事を気にしてくれる雫と、雫のお母さんは偶に夕飯を差し入れしてくれた


「ねぇけんちゃん、家で食べようよ?」

「そうよケンちゃん遠慮しなくていいから、家においで」


雫と、雫のお母さんの言葉は嬉しかったが、俺には家でやることがあり、タッパーに入ったオカズを受け取ると丁寧に頭を下げてお礼を言った


俺は亡くなった母の部屋を漁り、何か判ることが無いか探してみる・・・


母の化粧棚の引き出しを開けると、そこには以前俺にプレゼントしてくれた手帳と同じものが収まっていた。


俺は母の手帳を手に取り、パラパラと捲る・・・手帳はそこまで使われておらず最初の何ページか記入されていた


内容は俺が学校のテストで1番になった事や運動会の駆けっこで一位になった事、喧嘩をして帰って悲しかった事、ほぼ俺の事が書かれていた


そんな中、平日の水曜の欄に〇がうたれ「神明ホテル・ロビーラウンジ 13時」と次の日の木曜の欄に「1244」と数字が書かれたページを最後に以降は何も書かれてなかった


俺は自分の手帳を母の化粧棚に戻し、母の手帳と自分の手帳を交換したおいた


狛田家の墓へ母の納骨が終わり暫く経った頃、学校から家に戻ると、出張からいつの間にか戻って来ていた父から話があると言う、どうやら婚活パーティで知り合ったらしい女性と再婚するという話だった


母が亡くなってまだ半年も経ってないのに、もう次の相手・・流石に薄情過ぎ無いか・・父は亡くなった母に対し生前から愛情が希薄になっていたのは知っていたし今更未練も無いのだろう


俺の気持ちは複雑だが、親同士の結婚に拒否権は無い、まして俺の様な子供には・・・父に連れられ近くのファミレスで新しい家族となる相手と顔合わせをする


新しく母になる女性は見るからに温厚そうなおっとりした雰囲気の人だった、その後ろに隠れているのは俺より一つ歳下の小学校4年の女の子だ


俺も母親を亡くしまだ日が浅く、直ぐに新しい家族を迎え入れるかと言われれば気持ちにも無理がある


そんな俺の事情を知っているのだろう、義母になる女性が俺を優しく抱きしめる


「剣一君の前のお母さんはきっと剣一君の事、大好きだったんだよぉ、でも私も負けないくらい剣一君の事大好きだからね」


「お母さんは、素晴らしい人だったのよ、だから剣一君の中でお母さんは特別なの、忘れる必要なんか無いから、そのままの剣一君でいてね」


この義母の言葉に昔、母親から言われた言葉を思い出す【剣一!あなたの力は誰かを守る為につかいなさい!】【思いやりよ!思いやり!】


俺は義母からそっと離れると、心配で震えてる女の子にそっと手を伸ばす


「君お名前は?僕は 狛田 剣一って言うんだ」「百瀬 琴音・・・」母親の陰に隠れながら、こちらを警戒するが自分の名前をはっきりと告げた


「そっか!琴音ちゃんだね、今日から宜しくね」


それから俺は雫と一緒に琴音も混ぜて遊ぶ様にした、すると近所の他の子も集まり琴音も徐々に地元に馴染んできていた、琴音は元は社交的な性格だった様で、すぐに同年代の友達を作り頻繁に遊ぶようになった


「けんちゃん、最近琴音ちゃんに遊んで貰えないから寂しいんでしょw」

「ええ、でも雫が居るから平気だよ~」

「も、もうw恥ずかしい事言わないで~」

琴音が新しく友人を作ってくれたのが嬉しかったし、こうして雫にからかわれる日々も楽しかった


ある日、琴音がよく遊びに行くようになった公園を通りかかったら、琴音と友達が男子中学生に囲まれて泣いてる姿を目撃した、咄嗟に間に入り男子中学生たちを蹴散らして二人を助けると琴音とその友達に抱き着かれ沢山感謝された


「琴音達は俺が守る!!」とかカッコいい事を全く覚えてないが口にした様だ




そんな新しい家族との生活にも慣れてきたて2年が経ち、今日は母の誕生日だ毎年この日は、純香さんとの食事に来ていた


「剣一、毎回ファミレスで御免ね・・それに旦那も澄恵も仕事にテニスにって予定が合わなくて・・」


本当は不動一家で来る予定が、旦那さんと娘さんの都合が付かなくなった様だ


「大丈夫だよ純香さん、俺ファミレス大好きだし(笑)」

そう笑顔で答えると、頬杖をついて俺の事を懐かしそうに眺める


「中学生になった剣一は、ますます姉さんに似て来たな~学校でもイケメンでモテモテだな(笑)」


「ええぇ~、僕には雫が居るから良いんだよ~」「あらwお熱いことでw」


【ピロロロン・ピロロロン】純香さんのスマホが鳴る


「旦那かなぁ~仕事早く終わったとかぁ?・・・ゲッ!!」


俺は一瞬で視認した、純香さんのスマホに表示された【金森 蓮司】という名前を・・そして俺は覚えてるその名前を・・俺は慎重に純香さんに尋ねる・・


「純香さん、電話に出なくて良いの?その人急ぎなんじゃない?」


純香さんは鬱陶しそうにスマホをつまみフラフラと揺らし、しつこく着信するスマホを放置して


「はぁ私の会社のセクハラ上司よ、本当にしつこい!剣一はこんな下らない大人になったらダメだぞ!!」






純香さんとの食事を終え、家に戻ると机の中のから手帳を取り出す、ページを捲り母のスマホの着信履歴を全部記憶して書き写したページを開く「金森 蓮司」という名前が数件着信した履歴があり


母が付けた〇印の水曜にもこの「金森 蓮司」は母に連絡している、母は機械音痴で携帯でメッセージを打つのが苦手と言う理由でメッセージ系のアプリは全く使用しておらず、この発着信履歴だけが唯一の手掛かりだった


俺はその日から雫と遊ぶのを断り、最寄駅の近くのロッカーを片っ端から確認していた「1244」の番号に該当する4桁あるロッカーの場所をネットで調べヒットした場所に足しげく通う事1週間


俺はついに母の遺品の鍵が鍵穴に刺さり左に捻ると【ガッチャ】と金属音のする【1244】番のロッカーを引き当てる








・・・そして俺はたどり着く・・母の死の真相に・・





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