第36話 狛田家、崩壊の葬送曲


〇 狛田家、崩壊の葬送曲




放課後、昔剣兄や澄恵と一緒に遊んだ公園のベンチに座り、震える手で剣兄からの封筒の先を破る


中にはA4サイズの3つ折りの手紙がはいっていた、それを読み進めると絶望に体から血の気が無くなる様な感覚だった



書かれてる内容を読むと


義父は転勤先の栃木で山岡 咲という27才の若い女性社員と現在進行形で浮気状態に有り毎日入り浸って不貞行為を行っているという


さらに最近になり二人で生活する為に、義父は社宅をダミーとしてそのまま放置して別で二人で暮らすワンルームマンションを契約したという


剣兄からの暴露内容は時系列にも状況についても詳細に過ぎる内容であったので信憑性しか無かった


そして、私の母についての内容はもっと衝撃的だった、

実は剣兄の実の母さんが病気で入院状態が続いていた頃から義父と不倫関係だったようだ


義父が営業で客を接待した店に、別の客の妻として来ていた母と、店先での立ち話で意気投合して積極的に母が誘い、お互いにパートナーが居たにも関わらず密かに不倫関係を続けてたらしい


更に二人に嫌悪感をいだかせる内容だったのが、剣兄のお母さんの臨終の際も連絡受けていたにも関わらず、ホテルに入り浸り母と行為に溺れていたらしい

しかも剣兄のお母さんの火葬中の待ち時間の合間にも逢い引きしてラブホテルに入り浸り義父は御骨拾いにも現れなかった

火葬場に小学生の剣兄を数時間待たせた挙げ句お母さんの遺骨に目もくれず結局、仏壇にも一度も手も合わせなかったらしい、

当然、法事等するはずも無く毎年剣兄と叔母さんの二人だけで分骨した不動家墓前で執り行っていたと言う

確かに私も義母も剣兄の母の法事に出た事も、剣兄と私以外に仏壇に手を合わせてるのも見たこと無かった。



そして母が離婚し剣兄のお母さんが亡くなって数ヶ月した頃に二人は再婚する事にしたらしい


私には、バツイチのお見合い婚活パーティーで知り合ったと言っていたので、母に嘘をつかれていた事もショックだった


そして母親が義父を誘惑して結婚した理由を知ってさらに驚愕する


どうやら母は再婚する前からホストにハマってて、少なくはない借金が有った様だ、付き合ってた時には義父に、【昔亡くなった親の病気治療の際に借りたお金】だと嘘の説明をして、余命少ない剣兄のお母さんの生命保険金で借金返済を目論んで結婚したという事だった。


再婚して暫くは、新しい家族の目が有ったり推しのホストが遠い町の店に移った事もあり、ホスト通いは控えて居たみたいだが最近になって、推してたホストが近くのお店に戻って来たと知ると


家族の目と家の金を盗んで足しげく通い詰める様になったという、しかし相手はプロなので母と肉体関係にはなってないとの事だが、母の方からホストに体の関係を迫っていて、味をしめたホストは母をお店に呼ぶための殺し文句に「お店来てくれたら、ホテルいっちゃおうかな~」のワードを連発してるので


そのうち営業接待的に体の関係への発展は時間の問題だろうとも書いてあった



そして、雫ちゃんの事にも触れていた


雫ちゃんは、池月に騙され半グレの性的な玩具にされ2日間ずっと数十人に強姦され続けたらしい


私はその内容はある程度予想はしてたが、手紙の続きををみて恐怖で手紙を落としてしまう


そこには

【琴音さん、貴方に託した姫野 雫さんへの手紙に「池月に気を付けろ」と警告をしたのですが如何やら元幼馴染は僕を信じてはくれなかった様で残念です】


もし、あの時怒りに任せて手紙を破っていたら、もしあの時中身を見ていて今回の事を止められなかったとしたら、もしポストに投函するだけにして事件が起こる時に誰も見て貰えて無かったとしたら、


あの時、中を盗み見ずに直接手渡した自分の選択が最適解であった事に安心する反面、選択を間違えた時の罪悪感を想像するだけで体が恐怖に震える


私は落とした手紙を拾い、続きの内容に絶望し恐怖と驚きで涙が溢れる


【姫野 雫さんは、どうやらやら池月との子供を妊娠をしたのですが、半グレ達からの度重なる強姦で子宮に障害が残り、自宅で大量の下血の後で病院に運ばれ、診断をうけたのですが受精卵は体組織毎流れてしまって】












【後遺症で姫野 雫さんは二度と妊娠出来ない体になったそうです】










女性として赤ちゃんを授かるというのは、男には出来ない崇高な営みだと誰かが言っていた


それを失った?雫ちゃんが?まだ17歳の成人もしてない女性が、これから生涯自分の子供を産むことが出来ない?!


歳の近い同じ女性として、雫ちゃんの状態には同情する、しかし全て彼女の選択した結果だ


幼馴染みの剣兄をイジメていた相手を恋人にして、その恋人と無責任な性行為をして妊娠して、幼馴染からの最後の思いやりを無下にして、そして恋人だと思っていたクズに裏切られた


確かに剣兄には止めるだけの力も方法もあったかもしれない、でも誰がその事を剣兄に対し責めれるだろう?


もし居るとすれば、剣兄の亡くなったお母さんだけだろう・・・


そして私については、悩んで出した選択を間違わなかった事について少しの賛辞がつづられていて、涙が溢れる・・・





そして狛田家は崩壊する・・・・


最悪の選択を回避した私には生きていく道が用意された、生活や学業の金銭的援助は顧問弁護士の三船さんを通じて何時でも相談する様に書かれていた


しかし、私とは今後も、連絡も会う事も関係を持つもりも一切無いとハッキリ書かれていた


それから私は、手紙で知った義父が浮気してる事実を母親に告げる、今までの良妻の雰囲気は演技だった様で旦那が浮気してた事を歓喜して喜び、

これで堂々とホストに会いに行けると自身も家事をそっちのけで家族カードを使い遊びまくる日が続く、

義父名義の他のカードも勝手使い込んでる様だった


何日か後、電話をしてきた義父に【山岡 咲さんと浮気してる事を知ってる】と告げると、

剣兄に対し怒りと怨嗟の言葉を残して電話を切っられた




それから程なく、二人の離婚が成立


母はホストに狂ってとんでもない額を散財していたが、肉体関係は無く客とスタッフの関係でいたので不貞には当たらないとした判決で慰謝料を全面的に義父から捥ぎ取った


義父は慰謝料と母の作った借金の返済が出来ず、

恥も外聞もなく剣兄に無心を頼んだが

「アンタ誰?」と袖にされ、仕方なくローンの残った自宅を売却それでも足らずに、闇金にまで手を出したようだ


元義父は、不倫相手との間に子供が出来てしまい、

会社に不倫の事実を報告をせざるを得なくなって、

居心地の悪さや営業としての風聞の悪さから数十年務めた会社を不倫相手共々退職する事になった


しかし退職後は中々定職に就けず、身重の彼女と入籍する事も出来ず、二人の貯金も底をつき遂に自己破産

しかし闇金からの追い込みは止まず各地を転々としている中で出産を控えた彼女を残して、蒸発し音信不通になったらしい

噂では怪しい集団に海外に連れ去られたとか・・・



母は、私の親権を盾に取り多めの慰謝料と財産分与のお金で小さなアパートだけ借りたが

ほとんど家に帰らずに色んな男とホストに狂う日々だったが結局お金が尽きて借金を作りその返済の為、怪しい熟女専門の風俗に軟禁状態で客を取らされてる様だ

一度だけアパートに逃げ帰って来て、自分の代わりに、私に客を取らそうと考えていたようだか間一髪私は家を出ていっていて、自宅まで追いかけて来た店のスタッフと壮絶な追いかけっこの末どうなったのか・・・元義父同様音信不通だ


ある意味お似合いの夫婦だったのかもしれない


間一髪難を逃れた私はというと・・・来年大学生になりもう直ぐ成人する、今は三船さんが用意してくれた、エンシェントジャパンの会社持ちマンションの1つで一人で暮らしている


流石に生活費や学費までは迷惑かけられないので、自分でバイトを何か所か掛け持ちして、家に帰れば勉強して学費免除の特待推薦を勝ち取るべく机に向かってる


当然、友達とも疎遠になり、勿論彼氏なんか居ない

家族の本性が見破れず、本当に信じるべき義兄弟を蔑ろにして追い出しそして捨てられた、

更に昔から剣兄に想いを抱いていた元親友と剣兄は義兄弟になり、剣兄との接点の為、私にくっついていた親友にも見放され私

そんな私には友人も恋人も必要もない・・・





ふと、自分の勉強机の上の額に入れてる剣兄からの手紙を思い返して手に取り撫でながら見返してみる・・・目線で上から文章を追いながら最後の一文に撫でる指が止まる






















・・・・・・俺は最後の復讐を始める・・・・






狛田家 & 狛田 琴音編  END

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