第37話 姫野 雫 終幕 その2 後悔の先に 池月 流星 終幕 その3 塀の中

前置き : この作品は暴力や性的な描写を伴いますが、暴力行為を助長する物では御座いません。


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〇 姫野 雫  終幕 その2 後悔の先に



私は意識を取り戻すと、母親に縋りとにかく転院をお願いした。


先生の付けていたネームプレートを見て全て思い出した・・私は流星・・私を騙していた男に野蛮な獣のようなゲスな男への供物に捧げられ、女性の尊厳を踏みにじられた


そして私は、これからの生涯で女性だけに許された新たな命を育むという未来も無残、残酷に奪われた


許せない・・・




許せない・・・




許せない・・・





殺してやる!私を薄汚く裏切ったクズも、私から女の尊厳を奪った連中も!まとめて殺してやる!!




転院先の小さな病院での診断結果も変わることなく、外傷は完治していたとしてその日に退院することになった


私は、久しぶりに思える自分の部屋に入り思い出した様に、ゴミ箱を漁ると、以前破ったケンちゃんからの手紙の破片を全部机に広げ無心でパズルの様にくみ上げていきセロハンテープで張り合わせていった



「池月に気を付けろ」



しわしわな上、テープで見えづらい文字をそっと撫でると自然と涙が溢れる・・・・


「うっっうっ・・・私・・なんで・・うっっ・・どこから間違えたじゃない・・最初から・・全部間違えていたんだ・・・初めて出会った時も・・野良犬から私を助けてくれたのに・・・せめて、せめてこの手紙を信じていれば・・・うっっっ」


ポタポタと涙が手紙に零れるが、セロハンの表面を伝い用紙までに届かない・・まるで今の私の様に・・不様にセロハンの表面で揺れるだけの涙・・







私は精神的ショックから学校にも行けず部屋に引きこもってる間に、学校では私を騙したクズと私を襲った獣たちが暴れて、ケンちゃんに返り討ちに合いそのまま警察に逮捕されたとネットとニュースで盛りあがっていた


ケンちゃんの報復と復讐に、自分を信じなかった愚かな私の敵討なんて配慮なんか無いことは判っていたが、ニュースで知った内容に幾分か胸が軽くなった



警察からは押収したスマホや携帯の画像や動画がもしかしたら流出してるかもしれないと言われて、両親は酷く動揺していたが不思議と私は何も感じなかった


その日の夕方に、どうやら琴音ちゃんが尋ねてきようだ、琴音ちゃんはけんちゃんから貰った手紙で私の事をある程度知って様だった、そしてお母さんに私を騙したクズの話しを説明したようだ


ケンちゃんは、ここまで内容を知ってて、なんで野良犬から助けてくれた時みたいに、私を助けてくれなかったのか?

そうドス黒い八つ当りにも似た感情が込み上げてくるが

「池月に気を付けろ」

と書いてある手紙を見ると、すべて自分の選択が間違っていたのだと思いなおす




両親はクズが私にしでかした事を知り、池月に対し被害届けを出し訴えた、既にクズ達は捕まって実刑を受けて服役してるので余罪と追訴を求めて同じ境遇の池月や半グレ達の被害者達と徹底的に争った

中には世間に知られる前に池月の父親から圧力があり泣く泣く示談に応じた人もいて、その事も地元の新聞やメデイアでも取り上げられて、池月の父親が運営する池月病院の信用は地に落ち他の要因も合わさり、すぐに経営困難に陥りあっさりと潰れた


私も不登校が続き、逮捕され捕まり退学となったクズとクズの取り巻きに続き自主退学扱いとなった。


しかし、その後に今迄の学校内のイジメや騒動について徹底的な調査が行われ、校長と教頭が池月の親から不正に金品を受け取り息子の素行不良をもみ消していたとして、校長と教頭は収賄、脱税等で懲戒免職の上逮捕となりイジメを放置していた教員達は学校を去る事になるなど、大ナタが振られ血の入れ替えとなった

その中で新しく赴任して来た先生達の熱心なケアや支援もあり私は夜間の定時制の通信学部で同級生から遅れる事2年後の20才で高校卒業となった









【黒羊さん行ってくるね】

数年やり取りしてる黒羊さんに今から出かける事を告げチャットアプリを閉じる





そして私は今日、数年ぶりに外出する・・・・・




〇 池月 流星  終幕 その3 塀の中



俺は、警察の事情聴取に全て正直に答えた、野良犬をイジメていた事、姫野を騙して半グレ達に強姦させた事、元取り巻きを半グレに巻き込み犯罪の片棒を担がす為に画策した事、過去からの付き合いのある女とのセックス動画を小遣い稼ぎに闇サイトで売買していた事


とにかく俺は、あの狂犬の様な野良犬から安全な塀の中で匿って欲しかった。


「なぁ刑事さん!俺何年少年院に居れんの?」

俺の期待に満ちた質問に呆れた様に答える警官


「いやねー我々が刑期を決めるわけじゃないんだこれは刑事事件なんだよ、地方裁判所にてちゃんと判事が君の罪の重さに見合った刑期を言い渡すだろうから」


「そ、そんな・・・俺すぐに出たら不味いんだよ!!なんとかしてくれ!」


「しかし、君は事件解決にも協力的で調書もスムーズに出来てるから、捜査に協力的という事の評価は高いと思っていいよ」


「・・・・」


結局俺は少年院で懲役4年となった、おれは狂犬に殴られる日々から離れられて喜んでいた。


「今日からここがお前の寝泊まりする部屋だ、トイレは部屋の隅にある、紙は大事に使え、食事は朝、昼、夕、9時には就寝だ以上!、何か分からない事あったら同室の先輩に教えてもらえ」



見渡しても周りは布団をかぶって寝てる連中ばかりだ・・「ああ、ハイハイ」そう掌で早くどっかいけと手をフッて嫌な顔をすると、怒りに任せた看守は俺の腹に固い棒を突きつける


【うごっっっ】腹を押えてうずくまる



俺の顔に唾を吐き「囚人があんま看守を舐めんじゃないぞ?」と冷たい目と捨て台詞を吐いて看守室に戻って行った



夜になり俺の布団は一番トイレに近い場所に敷かれた・・・部屋の奴ら舐めやがって俺がこんな匂いのする所で寝れるか!


イライラしてると突然俺の顔に布団が被せられる「モ・・モゴッ・・フゴッ・・」何も声が出せない「!?」急に俺のズボンとパンツが降ろされて、後ろを向かせられる


「おい、そこのクリーム塗れ・・」誰かの声が聞こえたと思ったら俺の尻に冷たい感触がする「モ!?ッモゴッッ!!」


暴れるが数人に押さえつけられ、身動きが取れない・・俺はその夜同室の連中に一晩中犯され続けた・・


俺が文句を言おうとすると、再び同室内の奴らに集団で犯される


そんな生活に絶望して看守に相談するが部屋内の喧嘩は知らないと取り合って貰えない


ある日昼間の作業(封筒を折って作る作業)が終わり一旦部屋に戻ると、中には他の部屋の連中が十数人俺の事をよだれを垂らし待っていた


「ヒィィィィ」俺はあわてて部屋から逃げようとしたが、直ぐに行く手をふさがれ、その日、晩御飯を看守が配りにくるまで俺への暴行が続く


俺は耐え切れなくなり、独房に入ればこの地獄から解放されると思い、突然看守を殴りつけ無事独房入りすることが出来た。


独房には窓が無く真っ暗な中だったが、一人の安心感は俺をすぐに夢の世界に連れてった


「!?」違和感を感じ目を覚ますと、誰も居ないはずの独房に数人が入り込んでいたしかも独房のカギは開いており薄暗い中で明かりが灯ると看守がニヤニヤしながら俺に話かける


「なぁ池月・・お前は覚えて無いかもだけど、俺の妻がお前にネトラレてな、しかもその動画までネットで出回って、妻は耐えられなくなって首を吊って死んだんだよw馬鹿だろ?高校生に入れ込んで動画まで取られてポイ捨てされて(笑)」


「でも、俺も哀れだよなwそんな俺を捨てた妻の復讐をする為にこうして危ない橋を渡るなんてな~まぁ、前金で結構貰ったし、こうして私怨も晴らせるからな、あの人から言われた通り毎日楽しもうぜ(笑)」


「ふっふざけるな!!ぁぁぁぁ」





俺の自尊心は服役して僅か1週間で砕け散り、今更ながら不動の言ってた意味を理解した。


数か月した頃に面会に来た担当弁護士から、俺の家族の話しを聞いた、先ず俺が犯罪で捕まってすぐ母と親父は大喧嘩になり母は離婚届けを置いてあっさり父を見限り家を出て行った、噂では別の町で若い男を捕まえて再婚したという


親父の病院は、俺の事で被害に遭った女性の家族や夫から集団で訴えられ、医療関係の関連会社から取引を止められたりして病院経営自体が破綻し廃業間近と言う、だから自分への弁護士料も全額貰えないので二度と面会に来ないからと俺に嫌味と面白半分で嬉々として身内の不幸を色々説明してくれた


当然ながら少年院の中での扱いを弁護士に訴えても「国選弁護士でも雇ったら?(笑)」と相手にもされず、自分の言いたい事だけ言うと言葉の通り二度と顔も見せなかった。


俺は3年間の地獄で、爪が長いと痛いからと全部剥がされ、歯が当たると痛いと歯を抜かれ、邪魔になると睾〇を潰された、日常的な暴力に性的拷問、悪質なイジメ・・・ここに来た事、俺の今までのしてきた事を悔いる日々、幾度も獄中で死にたいと思ったが俺にはここを出て償う人がいるからと、塀の中の地獄に耐えた


それは、【黒羊】と名乗る匿名の手紙から知った事だ


まず俺の父だが病院が潰れた後は世間からのバッシングもあり真っ当な医者としては続ける事も出来ないから、反社連中のお抱え医師として禁止薬物の不正使用や訳あり患者に対する法外な治療費の請求等で警察から指名手配になり、金を持ち逃げして反社組織からも追われて現在行方不明にってると書かれていた。


そして・・・・・・姫野 雫は俺が騙し襲わせた【紅竜】達からの強姦の影響で、身ごもっていた俺の子供を流産して失い、そのうえ今後二度と子供を授かる事の出来ない体になってしまったと書いてあった、俺は・・・この罪を生涯償う覚悟を決めた






そして不動 剣一は・・・・








俺は4年の刑期を模範囚と言う名の他の受刑者と看守の玩具として刑期を全うし、1年刑期を短縮して本日出所となった。












「長い間お世話になりました」俺は鉄の扉から外に出ると振り返り、俺に唯一普通に接してくれた守衛の人に頭を下げた


「支度金の使い道ちゃんと考えろよ・・そして今度は真っ当に生きろよ・・」


俺は目に涙を浮かべ頷くと、守衛の人は大きく頷き塀の中に入り鉄の扉を閉め中から鍵をした


空をみると、夕方に差し掛かる頃なのか日が傾いていた



「さて・・・これからどうするか・・どんな顔をして・・・・」


ふと手前の駐車場を見ると一台の黒い軽自動がポツンと停まっており、車から黒い服を着た人が降りてきた・・・





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