第6話 「山下真理子の研究所」
山下真理子の研究所は都内の閑静な住宅街にあった。雨がしとしとと降り続け、私たちは傘を差しながら研究所の入口に向かった。建物は新しく、白い外壁が雨に濡れて輝いていた。周囲は静かで、まるで時間が止まっているかのようだった。
「ここが山下真理子の研究所です。」優斗が調べた情報を確認しながら言った。
「早速、中に入りましょう。」私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、インターホンを押した。しばらくして、白衣を着た研究員がドアを開けた。
「ご用件は何でしょうか?」研究員は少し警戒した様子で尋ねた。
「NDSラボの森田玲奈です。山下真理子さんにお話を伺いたいのですが。」私は身分証を見せながら説明した。
「少々お待ちください。」研究員はドアを閉め、中に戻っていった。
数分後、再びドアが開き、今度は山下真理子が現れた。彼女は冷静な表情で私たちを迎え入れた。
「こんにちは。山下真理子です。どうぞお入りください。」彼女は穏やかな口調で言った。
研究所内は最新の設備が整っており、清潔感が漂っていた。白い壁と床が光を反射し、無機質な雰囲気を醸し出していた。研究員たちは黙々と作業を続けており、私たちに一瞥もくれなかった。
「こちらへどうぞ。」山下真理子が案内してくれた部屋は、彼女のオフィスだった。デスクにはパソコンと書類が並べられており、壁には数々の賞状が飾られていた。
「今日はどのようなご用件でしょうか?」彼女はデスクの向こう側に座り、私たちを見つめた。
「鈴木大輝さんの死因についてお伺いしたくて来ました。彼があなたの研究と関係があるのではないかと考えています。」私は率直に切り出した。
「鈴木大輝…」山下真理子は一瞬考え込み、やがて口を開いた。「彼は私の患者の一人でした。ある新薬の治験に参加していましたが、それが彼の死因だとは考えにくいですね。」
「その新薬について詳しく教えていただけますか?」優斗が尋ねた。
「これはまだ公表されていないプロジェクトなので、詳細はお話しできません。ただ、彼の死亡と薬の因果関係については調査中です。」山下真理子は冷静に答えた。
「治験中に何か異常はありましたか?」私はさらに質問を続けた。
「特に目立った異常はありませんでした。ただ、最近彼が不安定な様子を見せていたことは事実です。」山下真理子は一瞬視線を逸らしながら答えた。
話が終わった後、山下真理子は私たちに研究所内を見学する許可を与えてくれた。私たちは研究室を巡りながら、詳細な観察を続けた。研究員たちは集中して作業を続けており、私たちに対して特に警戒する様子はなかった。
「ここが新薬の開発が行われている主要なラボです。」山下真理子が説明した。
ラボ内は高度な機器が整備されており、試薬や化合物が整然と並べられていた。作業台の上には最新のデータが表示されたモニターがあり、研究員たちがそのデータを基に作業を進めていた。
「このデータには特に不審な点は見当たりませんね。」私はメモを取りながら優斗に言った。
「しかし、全てが見えるわけではない。隠された情報があるかもしれない。」優斗は周囲を見渡しながら答えた。
「ここでの作業内容は全て合法ですし、透明性を保つよう努めています。」山下真理子は冷静な表情で言った。
研究所内を一通り見学した後、私たちは山下真理子に感謝の意を伝え、研究所を後にした。車に戻ると、優斗が考え込むように口を開いた。
「何か隠しているような気がする。彼女の言葉には一貫性があるが、微妙な違和感を感じた。」優斗の言葉に私は同意した。
「確かに。彼女の冷静さは少し不自然だった。もう少し深く調べる必要があるわ。」私は決意を新たにし、次の行動を計画した。
ラボに戻り、山下真理子の研究に関する追加情報を調べることにした。彼女が関与しているプロジェクトの詳細を掴むためには、さらなる調査が必要だった。
「夏美、山下真理子の研究プロジェクトに関する情報をできる限り集めて。」私は夏美に指示を出した。
「了解です。すぐに取り掛かります。」夏美は迅速に動き出し、パソコンに向かった。
「私たちは必ず真相を突き止める。」私は心の中で強く誓い、調査の続行を決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます