第5話 「新たな手がかり」

ラボに戻り、鈴木大輝の携帯電話の解析結果から得た情報を元に、次の手がかりを追うことにした。頻繁に連絡を取っていた人物の名前は、山下健一。彼が何かを知っている可能性が高い。


山下健一の住所を調べた私は、優斗と共に彼の家を訪れることにした。住所は郊外の静かな住宅街にあった。雨は依然として降り続き、傘を差しながら玄関に向かった。家の前には花壇があり、雨に濡れた花々が静かに揺れていた。


インターホンを押すと、少し待ってからドアが開いた。現れたのは、30代半ばの男性で、疲れた表情をしていた。


「山下健一さんですか?」私は尋ねた。


「そうですけど、あなた方は…?」彼は訝しげに私たちを見た。


「NDSラボの森田玲奈です。鈴木大輝さんについてお話を伺いたいのですが。」私は身分証を見せながら説明した。


「大輝が…何かあったんですか?」山下は驚いた様子で私たちを家に招き入れた。


山下健一のリビングはシンプルなインテリアでまとめられていた。ソファに座ると、彼はコーヒーを出してくれた。


「大輝とは最近何度も会っていたようですね。何か特別な理由があったのでしょうか?」私は本題に入った。


「大輝とは昔からの友人で、最近はよく連絡を取っていました。彼が何かに悩んでいるようだったので、話を聞いてあげていたんです。」山下はコーヒーカップを握りしめながら答えた。


「彼が何に悩んでいたか、具体的に話してくれましたか?」優斗が尋ねた。


「彼は何も詳しく話してくれませんでした。ただ、誰かに追われているようなことを言っていました。」山下は困惑した表情で続けた。


「追われている?」私はその言葉に反応した。「彼が誰に追われていると言っていましたか?」


「それはわかりません。ただ、彼は誰かに脅されていると言っていました。具体的な名前は出しませんでしたが…」山下は首を振りながら答えた。


「彼が最後に会ったのはいつですか?」私はさらに尋ねた。


「三日前です。ホテルのロビーで会ったんです。彼はその時も何かに怯えているようでした。」山下は思い出すように話した。


「ホテルのロビーで?」私はメモを取りながら考えた。「その時、彼が何かを持っていたり、誰かと会っていた様子はありましたか?」


「特に変わった様子はありませんでした。ただ、彼は何度も後ろを振り返っていました。」山下は不安げに答えた。


「ご協力ありがとうございました。これが事件解明の手がかりになるかもしれません。」私は感謝の意を伝え、山下健一の家を後にした。


ラボに戻る途中、私たちは山下健一の証言を元にさらに情報を集めることにした。彼が誰かに脅されていたという情報は、事件の核心に迫る重要な手がかりだ。


「山下健一の母親についても調べてみる必要があるわ。」私は運転席の優斗に言った。「彼女は医者だと聞いているけど、何か関係があるかもしれない。」


「了解。帰ったらすぐに調べてみます。」優斗は真剣な表情で答えた。


ラボに戻ると、夏美が待っていた。彼女は既に山下健一の母親についての情報を調べていた。


「山下健一の母親、山下真理子は名の知れた医師で、最近ある研究プロジェクトに関与していたようです。」夏美が報告した。


「どんなプロジェクトかしら?」私は興味を引かれた。


「新薬の開発に関するプロジェクトです。しかし、その研究が倫理的に問題があるという噂があります。」夏美は資料を見せながら説明した。


「これは重要な手がかりになるかもしれないわ。彼女の研究が鈴木大輝の死に関係している可能性がある。」私は決意を新たにし、次の行動を計画した。


鈴木大輝の死因を解明するために、私たちは次に山下真理子の研究所を訪れることにした。彼女の研究がどのように鈴木大輝の死と関係しているのか、そして彼女が何を隠しているのかを明らかにするためだ。


「私たちは必ず真相を突き止める。」私は心の中で強く誓い、準備を整えた。

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