第3話 「解剖結果の解析」

NDSラボの空気は重い沈黙に包まれていた。私たちは解剖室で鈴木大輝の体内から得られた粉末の成分解析を待っていた。解剖台の上に横たわる彼の遺体が、冷たい蛍光灯の光に照らされている。冷たい金属の道具が無機質に並び、緊張感が漂う。


夏美が解析結果を持って解剖室に入ってきた時、その表情はいつも以上に真剣だった。


「粉末の成分解析が完了しました。」夏美の声が部屋の静寂を破った。


「どんな結果が出た?」優斗が尋ねる。


「この粉末には非常に強力な毒性物質が含まれていました。具体的には、ベータブロッカーと呼ばれる薬物が高濃度で検出されました。この物質は心拍数を急激に低下させ、死に至る可能性があります。」夏美が解析結果を示しながら説明した。


「ベータブロッカー…」私はその言葉を噛み締めながら考えを巡らせた。「彼が倒れる直前に何かを口にしたという証言があったわね。その粉末が原因で急激な心停止を引き起こした可能性が高い。」


「でも、なぜ彼はそんな危険な物質を口にしたのか?」優斗が疑問を口にする。


「それを解明するために、彼の周囲の状況をもっと詳しく調べる必要があるわ。」私は決意を新たにし、次の行動を考え始めた。


鈴木大輝が最後に滞在していたホテルを訪れることにした。彼が急死する前にどんな行動を取っていたのか、その手がかりを探すためだ。ホテルのロビーは豪華で、シャンデリアが輝き、静かな音楽が流れている。


「こちらが鈴木大輝さんが滞在していた部屋です。」フロントのスタッフが案内してくれた部屋は、清潔で整っていたが、どこか不自然な感じがした。


「まずは部屋の中を詳しく調べましょう。」私は優斗と美咲に指示し、手分けして調査を始めた。


「玲奈、ここに何かあります。」美咲が机の引き出しから取り出したのは、小さなメモ帳だった。ページをめくると、そこには震えた字で「助けて…」と繰り返し書かれていた。


「これは彼が何かに追い詰められていた証拠ね。」私はメモ帳を丁寧に包み、証拠袋に入れた。


「この部屋に何か異常な点がないか、さらに詳しく調査しよう。」優斗が続ける。


私たちは部屋を隅々まで調べ、あらゆる証拠を集めようとした。しかし、特に目立った異常は見つからなかった。鈴木大輝の行動を解明するためには、さらに情報が必要だった。


「防犯カメラの映像を確認しましょう。」私はフロントに戻り、スタッフに協力を依頼した。


「もちろんです、すぐに準備します。」スタッフは親切に対応してくれた。


防犯カメラの映像には、鈴木大輝がホテルの廊下を歩く姿が映っていた。彼の表情は不安そうで、時折周囲を警戒するように見回していた。


「何かを避けているように見えるわね。」私は映像を見ながら言った。


「この時間帯の映像をもう少し巻き戻してみましょう。」優斗がリモコンを操作し、さらに前の時間帯の映像を確認する。


すると、鈴木大輝がある部屋の前で立ち止まり、ドアに耳を当てている姿が映し出された。その部屋からは、何か不審な音が聞こえているようだった。


「この部屋が何かの鍵を握っているかもしれない。」私はその部屋の番号を確認し、調査を進めることを決意した。

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