第2話 「謎の急死」

東京の繁華街。いつもと変わらぬ喧騒の中で、一人の若者が突然倒れた。鈴木大輝、23歳。救急隊が駆けつけた時には既に息絶えていた。現場に到着した私たちを迎えたのは、冷たい雨と湿った空気だった。


雨はしとしとと降り続け、アスファルトの路面を濡らし、無数の水たまりを作り出していた。街灯の光が反射して、足元にはまるで星空が広がっているかのようだった。人々は傘をさして足早に行き交い、雨音と車のタイヤが水を弾く音が交じり合っていた。


「現場はここです。」警察の担当者が我々を案内した。鈴木大輝が倒れた場所には、まだ救急隊の痕跡が残っていた。黄色い警察テープが周囲を囲み、雨に濡れた地面に幾筋もの足跡が残されていた。


「何か異常な点は?」私は担当者に尋ねた。


「特に外傷はありません。ただ、彼が倒れる直前に何かを口にしたという証言がいくつかあります。」担当者は手帳を見ながら答えた。


「何かを口に…」私はその言葉を反芻しながら、周囲を見渡した。雨の中で、証拠を見逃さないように目を凝らした。


「玲奈、これを見てください。」美咲が路上に落ちていた小さな袋を拾い上げた。袋の中には粉末状の物質が入っている。袋は濡れており、雨水が滴り落ちていた。


「これは…」私は慎重に袋を受け取り、ラボでの解析が必要だと感じた。


「この粉末が彼の死因に関係している可能性がありますね。」優斗が袋を覗き込みながら言った。


「夏美、すぐにこの粉末の成分を解析してもらえますか?」私は携帯電話を取り出し、夏美に連絡を取った。


「了解です。すぐに準備します。」夏美の声が電話越しに聞こえた。彼女の声はいつも通り冷静で、頼りになる。


「では、この袋をラボに持ち帰りましょう。鈴木大輝の死因を解明するための重要な手がかりになるはずです。」私は袋を丁寧に包み、保管用のケースに入れた。


その後、私たちは現場を後にし、NDSラボに戻った。車の窓越しに見る雨は、私たちの緊張感を一層際立たせた。車内は静かで、誰も口を開かなかった。


ラボの空気は緊張感で張り詰めていた。鈴木大輝の遺体は既に解剖室に運ばれており、私たちはすぐに解剖を開始した。


私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。彼の死因を解明することが、私たちの使命だ。


「まずは外観から確認しましょう。」私は丁寧に遺体を調べ始めた。外傷は見当たらない。皮膚の状態も正常に見える。


「次に内臓を調べます。」私はメスを手に取り、慎重に切開を始めた。内部を確認すると、異常な出血や損傷は見当たらない。


「これが原因かもしれません。」美咲が胃の内容物を確認しながら言った。胃の中には未消化の食物と共に、例の粉末が混ざっていた。


「この粉末が体内でどのような影響を与えたのか、詳細に解析する必要があるわね。」私は冷静に結論付けた。


「夏美にこれを渡して、すぐに解析を依頼しましょう。」私は美咲に言い、彼女は素早く動いた。


「はい、すぐに手配します。」美咲は遺体から取り出した粉末を丁寧に保管し、夏美の元へ急いだ。


私たちは鈴木大輝の死因を解明するために全力を尽くす。新たな手がかりを求めて、次のステップに進む準備を整えた。

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