第17話

「ごめんな朔矢。先生……」

「いいよ、言わなくても。でも、その代わり、手を繋いで欲しい」

うんと頷くと温かい彼の手が伸びてきて、そっと掌を包み込むように握り締めてくれた。

「ありがとう先生」

朔矢の気持ちが痛いくらい分かるから余計辛くなる。

心の中で彼にひたすら謝り続けた。

センター試験や学期末考査を控えた一月はあっという間に過ぎていく。二月は自宅学習と受験シーズン。不登校気味だった朔矢は必死に補習を受ける毎日を送っていた。先生と一緒に暮らすためならと弱音も吐かず健気に頑張っている。

いくら産休代替とはいえ、受験生を受け持つクラスの担任であることに変わりはない。学年主任や副担に助けて貰いながら、なんとか忙しい時期を乗り切った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る