第15話

十二月に入り、朔矢は人が変わったように休まず遅刻もしないでちゃんと登校して来るようになった。冬休みの間も一日も休む事無く真面目に補習を受けていた。

今も彼の家にほとんど毎日通っているものの、当然ながら何も進展はない。

「俺も連れて行って欲しいな」

狭い布団の中に潜り込んでくる朔矢。

「先生、ごめん……俺……」

言いにくそうに、それでも正直に話してくれたのは、医療少年院に通う僕の後を付けていた事。

「最初ね、気にしないようにしていたんだ。でも、先生が居なくなってしまうような気がして――そしたら、また一人ぼっちでしょ!? そんなの嫌だから……俺、先生の事……」

そこで言葉を一旦止める朔矢。背中を包むように抱き締められた。

「卒業したら、教え子じゃなくなったら……」

肌に触れる彼の体温が火傷するくらい熱い。早鐘の様に脈打つ心音が僕の心を揺り動かす。

だめだ。教え子に手を出すなど。あってはならない。理性を総動員し、ギリギリの境界線で踏ん張った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る