第11話

朔矢がくすくすと声を立てて笑う。彼と過ごす時間は楽しくてあっという間に過ぎていく。

仕事が終わり外に出れば朔矢が笑顔で待っていてくれる。今日は何食べる? 他愛もない事を話しながら肩を並べて歩き、途中でスーパーに寄り家路を急いだ。

そんな自宅と学校と朔矢の家を行ったり来たりする生活が一ヶ月程続いた。

平日の夜は朔矢を優先し、週末はパン屋の手伝いを優先させる忙しい日々。

夕飯を一緒に食べ、明日の朝御飯の準備に取り掛かっていると、いつもなら台所に来ない朔矢がひょっこりと顔を出してきた。

「どうした? 元気がないぞ」

朔矢は今にも泣きそうな顔をしていた。

「ねぇ、先生。俺の好きな曜日知ってる?」

唐突に質問され手が止まった。

「月曜日だよ。何でだか分かる?」

普通は土日の休日だろう。学校も休みで羽を伸ばせるだろうし。

「だって、二日間、寂しいのを我慢したら、先生に会えるでしょう。美味しいお弁当も食べれるし。その代わり金曜日が大嫌い。明日からまた一人だと思うと寂しくて、俺の事なんか誰も必要としていないんだ。そればかり考えて……」

朔矢の手がおもむろに伸びてきて、手の甲にそっと重ねられた。

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