第10話
むしゃむしゃとがっつくようにものすごい勢いで食べ始めた。この調子だと恐らく朝御飯抜きだったのだろう。
「おい朔矢。ゆっくり食べないと噎せるぞ」
「だって先生のご飯、美味しいから」
彼は屈託のないにこにこの笑顔を見せてくれた。人見知りで学校では笑う事も喋る事も殆どないのに。
「先生、これ!」
朔矢が歓声を上げた。唐揚げを連呼していた彼のため、鷄もも肉を大きめに切ったて唐揚げを二個弁当に入れてやった。他に卵焼きとウィンナーとほうれん草のバター炒めなど。何が好物か分からないから適当に。
「ん!? どうした?」
朔矢が、僕の弁当箱を覗き込んできた。その視線の先には勿論唐揚げ。目が燦々と輝き始めた。
「いいよ食べても」
唐揚げを箸で挟み、彼の弁当箱に移そうとしたが、ぱくりと食べられる方が早かった。
「さ、朔矢!」
予想外の事に慌てふためいた。心臓がどくんどくんと早鐘の様に脈打つ。
「先生、顔赤いけど?」
「気のせいだろう」
「そうかな?」
「大人をからかうんじゃない」
みっともない顔を見られたくなくてぷいっと顔を逸らした。
「先生って面白いね」
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