第9話

「じゃぁ、学校に行ったら、明日の夜も来てくれる?」

「へ!?」

朔矢はくすくすと笑うのを必死で堪えていた。庇護欲を掻き立てられ、見事に彼の術中にハマってしまったのだ。

「美味しい」

何事もなかったように朔矢は、オムライスを嬉しそうにむしゃむしゃと頬張り始めた。

「明日は唐揚げが食べたい」

「はい、はい」

「お昼は先生の手作り弁当が食べたいな」

「はい――……はぁ!?」

「じゃあ、学校行かない」

「それはダメだ」

「ならいいでしょう」

結果的に押し切られてしまった。前途はまさに五里霧中。朔矢という難敵にどう挑むか。頭が痛い。

翌日、遅刻はしてきたものの、約束通り登校して来た。お昼は、別校舎の二階にある社会科準備室で一緒に食べる事にした。ここだと人目に付きにくいし、朔矢もここならクラスメイトに会う事も、冷やかされて嫌な思いをしなくても済むはずだ。

「感謝しろよ。朝四時起きで作ったんだからな……って、おい! 先生の話は最後まで聞きなさい」

「はぁ~い」

いい加減に生返事をして椅子に腰掛けると、早速弁当箱を開けた。

「うわぁ~美味しそう」

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