第8話

朔矢は驚く事もなく黙って聞いていた。正直、自分でもその話を何故したのか分からなかった。不思議と彼の前では自然でいられる。居心地がいい。

「俺も先生と一緒。おんなの、ひとが嫌い。おとなの、ひとも嫌い。みんなお金の事しか考えてなくて、平気で嘘をつくし、自分の事しか考えないから嫌い――でも、先生は……」

ちらりと横目で見られた。

「好き……かな……」

「おぉ、そうか」

生徒に慕われるのは教師冥利に尽きる。

「朔矢、ごはん食べよう」

「うん」

ようやく重い腰を上げてくれた。片付けてみれば、備付けのエアコンと冷蔵庫しかない空っぽのリビング。床の上に布を敷いて、朔矢が食べたいとリクエストしたオムライスをメインに簡単なおかずを数品並べた。

「先生って料理が上手なんだ」

「味の保証はしないけどな」

「先生は食べないの?」

「あぁ、今日のうちに終わらせないと」

彼の表情がみるみるうちに暗く沈んでいく。

「一人では嫌だ。ここにいてよ」

今にも泣き出しそうな顔をされたらひとたまりもない。

「分かった! 分かったから。その代わり、明日ちゃんと学校に来るのが条件だ」

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