第6話
「ねぇ、先生」
くすりと朔矢が笑った。きっと変に思われたに違いない。必死で平静を装った。
「少し散らかってますが、お茶くらい出しますよ」
「いや、そろそろ帰るよ」
「遠慮しなくても、どうぞ」
朔矢はそのまま自宅である801号室へ向かった。
「ちょっと待ちなさい!」
慌てて彼の後を追った。
玄関から一歩中に入ると、足の踏み場もないくらい散らかっていた。ろくに掃除も、ゴミ出しもしていないんだろう。鼻を突く悪臭に噎せって顔を顰めると、朔矢がまたクスリと笑った。
「ご両親は?」
当然いるものだと思っていたが。
「先生、さっき言った事もう忘れたの?」
「さっきって……あぁ、確か〝親はいません〟って……もしかして一人で暮らしているのか?」
朔矢は今頃分かったのと涼しい顔をしていた。こっちは腰を抜かすくらい驚いているというのに。どんな事情があるか知らないけど、まだ未成年の高校生を一人暮らしさせるなんて。親は一体何を考えているんだ。生活の面倒くらい見てやればいいのに。
「あの人達にとって俺は、空気みたいな存在だから別に気にしていない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます