第4話
一週間のうち、朔矢が登校して来たのはこの日一日だけだった。翌週も登校しないうちに木曜日を迎えていた。
「心配しなくても大丈夫ですよ。いつものことですし」
無責任とも取れる学年主任の発言にイラッとした。このままほっとくなど僕には出来ない。
「住所を教えて貰えませんか?」
「行ってどうするんですか? 何も変わりませんよ」
「それでもいいんです」
「よそ様の事に首を突っ込まない方がいいですよ」
「よそ様って……彼は大事な生徒です」
最後までしつこく食い下がり、根負けした学年主任は、渋々ながら住所をメモに書いてくれた。
「砂金先生、くれぐれも深入りしない様に」
「ご忠告有難う御座います」
軽く会釈しメモ紙を受け取った。
(嘘……だろう……)
仕事を早めに切り上げ、教えられた住所へ真っ直ぐ向かうとそこには高層マンションが聳え立っていた。駅前の大通りのそれこそ一等地。しばし唖然と見上げたのち気を取り直して、エントランスホールに入り、自動ドア横の端末に部屋番号を入力しインターフォンを鳴らした。留守なのか何度押しても反応がなかった。ここまで来て手ぶらで帰る訳にもいかない。三十分以上粘りに粘った。すると、
『……はい、安部ですが……』
ようやく聞きたかった声が聞こえてきた。
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