第2話
「身内の恥を晒すようだが、正直に話すよ。三年A組の担任が教え子と密かに交際している。その上、妊娠もしていると匿名の電話があってな。当の本人を呼び出して事実確認をしたら素直に認め、その日のうちに辞表を提出した。彼女は相手の生徒の名前は最後まで口にしなかった。その生徒を守ろうとしたんだろうな。これで一件落着と思ったら、今度はSNS上に証拠となる写真と実名を投稿したものがいて、それで、マスコミを巻き込んで大騒動になって……投稿した者がA組の生徒だとまことしやかに噂が流れて、ただでさえ受験を控えピリピリしているのに、犯人探しが加熱して、クラス中疑心暗鬼になって更にぎすぎすしているんだ。だから、誰も副担や学年主任の話しには耳を貸さず好き放題。先生は、砂金になら、学級崩壊したA組を立て直す事が出来る。そう思うんだ。だからこの通りだ。頼む!」
「先生、顔を上げて下さい」
まさか頭を下げられるとは思ってもみなくてびっくりした。
「和沙、男子校なら大丈夫でしょ」
レジでお客さんの応対をしながら心配そうに見守ってくれていた二つ年上の姉、香織が声を掛けてくれた。
「寝る間暇も惜しんで猛勉強して、子供の頃からの夢を叶えたのに。たった一人の生徒のせいで諦めないといけなくなって、どれだけ悔しかったか。ねぇ和沙、神様がチャンスを与えてくれたと思って頑張ってみたら!?」
「でも……」
「店の事は心配しなくても大丈夫だから」
姉に背中を押され引き受ける事にした。
つい半年前まで市内にあるK女子大付属高校で教鞭をとっていた。担当科目は日本史。県立高校での採用を目指したものの狭き門で。そんな時目に入ってきたのが付属高校での講師募集だった。三年目の今年の春、初めてクラスを受け持つ事になったのに、これからという矢先だったのに、一人の生徒との出会いが全てを狂わせることになろうとは……。
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