第5話 疑心暗鬼と神の力

今日も雨だ。ここ数日雨が続いている。じっとりとした空気が体にまとわりついて気持ち悪い。


雨が降っているは神社の中を掃除していたけど、中はそんなに広くないからすぐにやることがなくなった。


できることといえば神社の中を掃除しているうちに見つけた謎の扉の探索だ。


連日の雨の中、行ったことのない廊下の一番奥までほうきで掃いていたら、行き止まりになっていると思っていたところからさらに曲がって続いていた。


そのさらに奥に行ったところに部屋の作りに似合わない扉があった。


狐が彫られた赤紫色で重そうな扉だ。


あまりにも異様な雰囲気で勝手に入っていいのかわからず、見て見ぬふりをしていた。


今となっては興味の的でしかない。もしかしたらそこに今まで追い求めていたものがあるかもしれない。


日和様は今どこにもいない。この隙に思い切って入っちゃおう!


いざ行かん!謎の扉の奥へ!


扉を開けると地下へと続く階段が出てきた。光などはなく、開けた扉から差し込む明かりだけではよく見えなかった。


懐中電灯を部屋から持ってきて、下へと降りていく。


階段を降り切り、辺りを照らしてみると、いろんな荷物が置いてあった。それから部屋の中なのに鳥居が建っていた。


周りの荷物を探ってみる。


近くにあった木箱を開けるといくつかの写真が出てきた。色あせていてとても古いもののようだ。


何枚か見ていくと特定の男の人が写っていた。たまに狐も一緒に映っているものもある。


ほかのものも見て見よう。


「そこで何しておる。」


背後から落ち着きながらも怒りが込められた声がした。振り返ると仁王立ちして睨みつける日和様がいた。


普段の愛嬌のある感じは一切なく、今にも噛みついてきそうな獣のようになっていた。


「ご、ごめんなさい!勝手に見ちゃって…!」


「なんじゃ、おぬしじゃったか。こんなところで何をしておるんじゃ」


私だとわかるとお母さんのような穏やかな顔になってくれた。


「不思議な扉があったんでつい入ってしまいました」


「かと言って物を漁る必要もなかろう」


「それは…日和様が神様らしいことをしているところを見たことがなくて、本当に神様なのか知りたくて…ごめんなさい!」


「なんじゃ、そういうことか」


日和様は大きくため息をついた。


「ついてくるがよい。そろそろやらねばと思っていたところじゃ」


そう言って日和様は階段を上っていいく。わけもわからないまま日和様の後を追いかけていく。


雨が降っているにもかかわらず傘を持たないで外に出た。私が急いで傘を開いて差し出す。


「そんなことせんでもよい。直に止む」


日和様は私の手を払いのけ、雨の中を歩いていく。


庭の真ん中に立つと手を空に向かって伸ばし、目を瞑った。


しばらく見守っていると、周りの木々が不自然に揺れ始め、鳥たちが騒がしく鳴いている。


日和様のしっぽはピンと伸びて毛が逆立ち、開かれた目は金色に光っていた。


次の瞬間、日和様から天に向かって光が伸び、雨雲を貫いた。


すると、降り続いていた雨がぴたりと止み、灰色の雲の隙間から青色の空が見えてきた。


「どうじゃ。これが神の力じゃ」


固まっている私に無邪気な笑顔とピースを向ける。


「わしの仕事は主に天気を操ることじゃ。それでこの町に益をもたらすよういわれておる。これでわしが神だと信じてくれるかの」


「…もちろんです。疑ってすみません」


「よい。わしも説明不足なところもあったからの。しかし、これからはあの部屋には勝手に入ってはだめだぞ」


「もちろんです。二度と入りません」


日和様が見せた神の力は雨雲と一緒に私のもやもやも吹き飛ばした。

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