第7話 影との最終決戦

医務室の中で、ジャン=ルイは乗組員たちに冷静さを保つよう呼びかけた。影の存在が実体化しようとしている今、彼らは最後の抵抗を始める準備を整えていた。全員が緊張の中で息を潜め、ジャン=ルイの指示を待っていた。


「全員、エネルギー装置の再調整を急げ。この影を完全に消し去るためには、もっと強力なエネルギーパルスが必要だ。」ジャン=ルイの声には、決意と共に緊張が滲んでいた。


エマニュエルとマリーは急いでエネルギー装置を調整し、クロードは船内の通信システムを再度修復するために奮闘していた。影の存在は医務室の外で不気味な低音を響かせながら、冷たい風を送り込み続けていた。腐敗した金属の臭いがさらに強くなり、乗組員たちは呼吸が辛くなっていた。


「船長、これで装置の調整は完了しました。強力なエネルギーパルスを放出する準備が整いました。」エマニュエルが報告した。


ジャン=ルイは深呼吸をし、乗組員たちに向かって言った。「これが最後のチャンスだ。全員で力を合わせて、この影を排除するんだ。」


その瞬間、医務室のドアが激しく揺れ始めた。影の存在がますます強力になっていることが明らかだった。ジャン=ルイはエネルギー装置のスイッチに手を伸ばし、強力なエネルギーパルスを放出する準備を整えた。


「いくぞ…エネルギー装置、最大出力で放出!」


その瞬間、装置が作動し、船内に特定の周波数のエネルギーパルスが放たれた。照明が激しく明滅し、不気味な低音が次第に高まり、まるで船全体が震えるかのようだった。影は形を変えながら、苦しみの声を上げ始めた。


「止めろ…お前たちは…」


影は激しく揺れ動き、次第にその存在を失っていった。しかし、影の抵抗は予想以上に激しく、エネルギー装置が過負荷状態に陥り始めた。装置の警告音が鳴り響き、乗組員たちはさらなる危機に直面した。


「装置が持たない…!」エマニュエルが叫んだ。


ジャン=ルイは即座に指示を出した。「全員、エネルギー装置を手動で調整しろ。負荷を分散させるんだ!」


マリーとクロードは急いで装置の操作に取り掛かり、エネルギーパルスを安定させるために全力を尽くした。影の存在はますます弱まりつつあり、その形は次第に霧散していった。


「もう少しだ…全員、耐えろ!」ジャン=ルイは全力で叫び、乗組員たちを鼓舞した。


その時、影の存在が最後の抵抗を見せ、医務室のドアが吹き飛ばされた。冷たい風が吹き込み、乗組員たちは一瞬、恐怖に包まれた。しかし、ジャン=ルイの声がその恐怖を打ち破った。


「全員、持ち場を守れ!これが最後の一撃だ!」


エネルギー装置が再び最大出力で作動し、船内全域に強力なエネルギーパルスが放たれた。影は激しく揺れ動き、最終的には完全に霧散し、船内から消え去った。照明が安定し、冷たい風も止んだ。乗組員たちは息を呑みながら、その変化を見守っていた。


影が完全に消え去った後、医務室には静寂が戻った。エマニュエルの呼吸も次第に落ち着き、体温が正常に戻り始めた。


「成功した…」ジャン=ルイは安堵の息をつきながら呟いた。


しかし、その安堵も束の間、通信システムが再び異常を示し始めた。スクリーンには新たなメッセージが表示され、ノイズ混じりの音声が響いた。


「まだ終わっていない…これからが本当の始まりだ…」


ジャン=ルイは凍りついたようにスクリーンを見つめた。新たな恐怖が、彼らの前に姿を現そうとしていたのだ。彼らの戦いは、まだ終わっていなかった。


次の瞬間、船内の照明が完全に消え去り、全てが闇に包まれた。ジャン=ルイは深呼吸をし、再び決意を新たにした。


「全員、これからが本当の戦いだ。我々はこの船を守り抜く。そして、エクリプスの乗組員たちを解放するために、あの影の正体を突き止めるんだ。」


闇の中で、彼の決意は固まり、新たな戦いの幕が開けようとしていた。しかし、その先に待ち受けるのは、未知の恐怖とさらなる試練であった。

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