第5話 影の起源を理解する

ジャン=ルイと乗組員たちは影の脅威を一時的に退けたものの、船内にはまだ不安と恐怖が漂っていた。医務室の静けさの中で、ジャン=ルイは決意を新たにした。この影の存在を完全に排除するためには、その起源を理解しなければならない。


「皆、エクリプスの記録をもっと詳しく調べるんだ。影の正体を突き止める手がかりがあるはずだ。」ジャン=ルイは乗組員たちに命じた。


マリーはデータパッドを再び操作し、エクリプスの乗組員たちの記録を探し始めた。記録の中には、未知のエネルギーを探求するために行われた様々な実験の詳細が記されていた。


「船長、ここに興味深い記述があります。」マリーは画面を指し示しながら言った。「エクリプスの乗組員たちは、古代の儀式を参考にして未知のエネルギーを引き出そうとしていたようです。しかし、その実験が何かを目覚めさせてしまったとあります。」


ジャン=ルイは深く考え込んだ。「それが影の正体か…。彼らの記録には、その実験が具体的にどのように行われたか記されているか?」


マリーはさらに記録を読み進めた。「はい、ここに詳細があります。彼らは特定の周波数の音波とエネルギーパルスを使って実験を行っていました。その結果、異常な現象が発生し始めたとあります。」


「その音波とエネルギーパルスを逆に利用すれば、影を封じ込めることができるかもしれない。」ジャン=ルイはそう言いながら、乗組員たちに指示を出した。「全員、エクリプスで使われた装置を再現し、その周波数とエネルギーパルスを逆に設定するんだ。」


乗組員たちは急いで準備を始めた。エンジニアのエマニュエルが装置の調整を担当し、クロードは船内の音響システムを設定した。マリーはエクリプスの記録を元に、正確な周波数とエネルギーパルスのデータを提供した。


その間も、影の存在は医務室の外で不気味な低音を響かせていた。冷たい風がドアの隙間から入り込み、腐敗した金属の臭いが漂い続けていた。ジャン=ルイは乗組員たちに冷静を保つよう呼びかけた。


「恐怖に負けるな。これが我々の唯一の希望だ。全員で力を合わせて、この影を排除するんだ。」


エマニュエルとクロードは装置の最終調整を終え、全員が準備を整えた。ジャン=ルイは深呼吸をし、決意を新たにした。


「いくぞ。全員、装置を起動しろ!」


その瞬間、装置が作動し、船内に特定の周波数の音波とエネルギーパルスが放たれた。照明が激しく明滅し、不気味な低音が次第に高まり、まるで船全体が震えるかのようだった。影は形を変えながら、苦しみの声を上げ始めた。


「止めろ…お前たちは…」


影は激しく揺れ動き、次第にその存在を失っていった。照明が再び明るくなり、冷たい風が止んだ。乗組員たちは息を呑みながら、その変化を見守っていた。


影が完全に消え去った後、医務室には静寂が戻った。エマニュエルの呼吸も次第に落ち着き、体温が正常に戻り始めた。


「成功した…」ジャン=ルイは安堵の息をつきながら呟いた。


しかし、その安堵も束の間、通信システムが再び異常を示し始めた。スクリーンには新たなメッセージが表示され、ノイズ混じりの音声が響いた。


「まだ終わっていない…これからが本当の始まりだ…」


ジャン=ルイは凍りついたようにスクリーンを見つめた。新たな恐怖が、彼らの前に姿を現そうとしていたのだ。彼らの戦いは、まだ終わっていなかった。


その瞬間、船内の照明が完全に消え去り、全てが闇に包まれた。彼らの戦いは、影の背後に潜むさらなる謎と恐怖と対峙する新たな段階に突入したのだった。

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