第4話 新たな恐怖の兆し

電磁波の放出が終わり、船内は一瞬の静寂に包まれた。ジャン=ルイと乗組員たちは息を呑んで、辺りの変化を見守っていた。影が消え、恐怖が遠のいたかのように思えたその瞬間、船内の通信システムが再び異常を示し始めた。


スクリーンには新たなメッセージが表示され、ノイズ混じりの音声が響いた。


「これは…ただの始まりに過ぎない…」


ジャン=ルイは凍りついたようにスクリーンを見つめた。新たな恐怖が、彼らの前に姿を現そうとしていたのだ。その時、船内の照明が再び激しく明滅し始め、低く不気味な音が鳴り響いた。


「全員、警戒を続けろ!」ジャン=ルイは冷静さを保ちながら指示を出したが、その声には明らかな緊張が滲んでいた。


船内の温度が急激に低下し、冷たい風が再び吹き抜けた。腐敗した金属の臭いが鼻を突き、乗組員たちは呼吸が苦しくなった。まるで船そのものが腐り始めているかのようだった。


エアロック近くから再び異変が起きた。エンジニアのエマニュエルが叫び声を上げ、ジャン=ルイとマリーは急いで駆けつけた。そこには、先ほど消えたはずの影が再び現れ、エマニュエルを取り囲んでいた。


「船長、助けて…!」エマニュエルの声は恐怖に満ちていた。


ジャン=ルイは決然とした表情で影に向かって叫んだ。「エマニュエル、ここから離れろ!早く!」


エマニュエルは必死に影から逃れようとしたが、影はまるで生き物のように彼に絡みつき、逃がそうとしなかった。影の中から不気味な囁き声が聞こえ、まるで悪魔が耳元で囁いているかのようだった。


「お前は逃げられない…我々はここにいる…」


ジャン=ルイはエマニュエルを助けようと近づいたが、その瞬間、影が彼に向かって襲いかかってきた。冷たい手が彼の体を包み込み、まるで氷のように冷たい感触が彼の肌に広がった。


「船長!」マリーが叫び、他の乗組員たちも駆けつけたが、影は次第に大きくなり、全員を飲み込もうとしていた。


その時、船内の非常灯が突然点灯し、船全体が赤い光に包まれた。ジャン=ルイは一瞬の隙を突いて影から逃れ、エマニュエルを引き寄せた。


「全員、医務室へ避難しろ!」ジャン=ルイは叫び、乗組員たちは一斉に動き始めた。


医務室に到着すると、乗組員たちは震える手でドアを閉め、影の侵入を防ごうと必死だった。ジャン=ルイはエマニュエルの脈を取りながら、彼の状態を確認した。エマニュエルの体温は異常に低く、目は虚ろだった。


「彼の状態が悪化している…何か手を打たなければ…」ジャン=ルイは深く考え込んだ。


その時、医務室の外から再び不気味な低音が響き渡り、冷たい風がドアの隙間から入り込んできた。まるで船全体が生きているかのように、影の存在が彼らを追い詰めていた。


「これは一体…どうすればいいんだ…?」ジャン=ルイは呟いた。


その瞬間、医務室の照明が完全に消え、深い闇が全てを包み込んだ。不気味な囁き声が耳元で響き、まるで悪夢の中にいるかのようだった。


「あなたたちはここから逃げられない…」


ジャン=ルイは心の中で決意を新たにした。この恐怖を終わらせるためには、何としても影の正体を突き止め、対策を講じなければならない。


闇の中で、彼の心には新たな決意が芽生えていた。しかし、その決意の背後には、未知の恐怖が再び彼らの前に立ちはだかるという不安が常に付きまとっていた。


次の瞬間、船内の通信システムが再び作動し、再びスクリーンが点滅した。今度は、影の存在がはっきりと映し出されていた。黒い霧のようなものが形を取り、無数の手が伸びてくるかのように見えた。


「これは…一体何なんだ?」ジャン=ルイは呟きながら、スクリーンに目を凝らした。


その影の中には、かつてエクリプスで失踪した乗組員たちの顔が浮かび上がっていた。彼らの表情は苦痛に満ちており、まるで助けを求めるように手を伸ばしていた。


「助けてくれ…我々は…囚われている…」


スクリーンに映し出された顔が呟くたびに、ジャン=ルイの背筋は冷たく凍りついた。彼は全てを理解した。この影の存在は、かつてのエクリプスの乗組員たちの怨念が具現化したものだった。


「我々がこのままでは、この船も同じ運命を辿ることになる…」


ジャン=ルイは強く決意した。この恐怖を終わらせるためには、影の正体を暴き、その怨念を解き放つしかない。彼は医務室の乗組員たちに向かって言った。


「全員、これからが本当の戦いだ。我々はこの船を守り抜く。そして、エクリプスの乗組員たちを解放するために、あの影の正体を突き止めるんだ。」


闇の中で、彼の決意は固まり、新たな戦いの幕が開けようとしていた。しかし、その先に待ち受けるのは、未知の恐怖とさらなる試練であった。

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