第2話 影の存在

スターライト内の照明が暗くなり、不気味な低音が響き渡る中、乗組員たちは凍りついたように動けなくなっていた。ジャン=ルイ船長は即座に非常事態を宣言し、乗組員たちに警戒を呼びかけた。


「全員、持ち場を守れ!冷静に行動するんだ!」


船内の空気は重く、冷たい汗が額を伝う。ジャン=ルイは通信士のクロード・ラフォーレに向かって指示を出した。「クロード、船内全域に警告を発信し、全員にブリッジに集合させろ!」


クロードは震える手で通信機を操作し、乗組員たちに非常事態を伝えた。「全乗組員に告ぐ、ブリッジに集合せよ。これは緊急事態だ!」


その時、エアロック近くから悲鳴が上がった。ジャン=ルイと数名の乗組員が急行すると、そこにはエンジニアのピエール・ラボルトが倒れていた。彼の周りには、エクリプスで見たのと同じ奇妙な紋様が描かれていた。


ピエールの体は異様に冷たく、肌は青白く変色していた。ジャン=ルイは慎重に彼の脈を取り、呼吸の有無を確認した。脈はかすかに感じられたが、彼の呼吸はほとんど止まりかけていた。


「船長、彼が…何かに取り憑かれたようです…」クロードは震える声で言った。


ジャン=ルイは冷静さを保ちながらも、内心では恐怖と焦りが交錯していた。「ピエールを医務室に運べ。マリー、彼を治療しながら、原因を突き止めてくれ。」


マリー・デュボワは頷き、迅速に行動を開始した。彼女はピエールの体を慎重に運びながら、異常な状態を観察した。「彼の体温が異常に低い…まるで何かが体内から熱を吸い取っているかのようだ。」


ジャン=ルイは船内のセキュリティシステムを強化し、乗組員たちに警戒を続けるように命じた。しかし、船内の異常は続いていた。暗闇の中で影が動き、冷たい風が再び吹き抜ける。何かが、確かに彼らを狙っている。


ブリッジに戻ったジャン=ルイは、セキュリティカメラの映像を確認した。画面には、船内の各所で影が蠢く様子が映し出されていた。影は形を変えながら、まるで生き物のように動き回っていた。


「これは一体…?」ジャン=ルイは呟き、さらに映像を詳しく調べた。影の動きは不規則で、特定の場所に集まることはなかったが、その存在感は次第に増していた。


その時、通信士のクロードが再び声を上げた。「船長、医務室からの報告です。ピエールの状態が急激に悪化しています。」


ジャン=ルイはすぐに医務室へ向かった。マリーが必死にピエールの状態を安定させようとする中、彼の体は冷気を放ち続けていた。呼吸はさらに浅くなり、目は虚ろに見開かれていた。


「マリー、彼の状態はどうだ?」ジャン=ルイは問いかけた。


「非常に危険な状態です、船長。彼の体温はどんどん低下していて、まるで生命力が吸い取られているかのようです。」マリーの声には明らかな不安が滲んでいた。


ジャン=ルイはピエールの異常な状態を見つめながら、何がこの船に潜んでいるのかを考えた。「この存在はエクリプスから来た。何としてもこれを排除しなければならない。」


その時、船内の照明が再び明滅し、不気味な低音が鳴り響いた。冷たい風が再び船内を駆け抜け、腐敗した金属の臭いが鼻を突いた。まるで船そのものが腐り始めているかのようだった。


「全員、注意を怠るな。何が起こっているか分からないが、我々はこの存在を追い出さなければならない。」ジャン=ルイは全員に冷静さを保つよう呼びかけたが、自身の心も不安に揺れていた。


ジャン=ルイは、船内の異常が続く中で、全ての乗組員に徹底した警戒を指示し、エクリプスで得たデータを元に対策を講じる決意を新たにした。しかし、彼の心には常に一つの疑念が残っていた。この恐怖は本当に終わるのだろうか?

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