【完結】スターライトの闇
湊 マチ
第1話 謎の通信
漆黒の宇宙を漂う探査船「スターライト」。静寂が支配する船内で、緊張感が漂っていた。乗組員たちは各々の業務に集中していたが、突然、船内の通信システムが異常を示し始めた。ブリッジにいたジャン=ルイ・マルセル船長は、緊張感を隠せない表情で通信士のクロード・ラフォーレに目を向けた。
「船長、奇妙な通信を受信しました。内容はほとんどノイズですが、かすかに声が聞こえます。」クロードの声には不安が滲んでいた。
ジャン=ルイは眉をひそめ、スクリーンに表示されたノイズまみれのメッセージを注視した。スクリーンには歪んだ波形が映し出され、スピーカーからは不気味な音が漏れ出していた。まるで暗闇の中から囁かれる悪夢のようだった。
「音声をクリアにするんだ。エンジニアのマリーに解析を頼む。」ジャン=ルイは命じた。
数時間後、マリー・デュボワがブリッジに戻り、解析結果を持ってジャン=ルイに報告した。彼女の顔は蒼白で、手に持つデータパッドが微かに震えていた。
「船長、メッセージの一部を解読しました。こう言っています…『助けてください…彼らが…彼らが来る…』」マリーの声は低く、恐怖に包まれていた。
ジャン=ルイは深く考え込んだ。「この通信がどこから来たのか特定できるか?」
マリーは頷いた。「はい、近くの廃棄された宇宙ステーション『エクリプス』からです。」
ジャン=ルイは決断を下した。「我々は『エクリプス』を調査する。すぐに準備を整えて出発する。」
エクリプスへの接近中、船内には重苦しい沈黙が漂っていた。ジャン=ルイは自らの不安を抑えつつ、乗組員たちに冷静さを保つように指示を出した。スターライトはエクリプスに接近し、ドッキングを試みた。
宇宙ステーションは暗闇に包まれ、無人の廃墟のように見えた。エアロックを通り抜けた瞬間、ジャン=ルイと数名の乗組員は異様な冷気に包まれた。まるで死の匂いが漂っているかのようだった。腐敗した金属の臭いが鼻を突き、呼吸が苦しくなる。
内部は不気味な静寂が支配していた。通路には漂流物が散乱しており、ところどころに奇妙な紋様が描かれていた。それはまるで悪夢の中の一場面のようだった。
「慎重に進め。何が待っているか分からない。」ジャン=ルイの声は静かだが、確固たる決意が込められていた。
彼らがステーション内を進んでいくと、異様な臭いが次第に強くなっていった。腐敗した肉のような臭いが漂い、乗組員たちは顔をしかめながら進んだ。やがて、彼らは中央制御室にたどり着いた。
制御室には、数名の乗組員が倒れており、皆、恐怖に満ちた表情を浮かべていた。彼らの周囲には、奇妙なシンボルが描かれた古びたデータパッドが散乱していた。
「何があったんだ…?」ジャン=ルイは呟き、慎重にデータパッドを拾い上げた。
エンジニアのマリーがデータパッドを確認し、その内容を読み上げた。「船長、ここには何か重要な情報が記録されているようです。」
ジャン=ルイは指示を出した。「すべてのデータを回収し、船に戻る。」
スターライトに戻ったジャン=ルイたちは、データパッドの解析を開始した。その内容には、エクリプスの乗組員が謎の存在に襲われた経緯が詳細に記されていた。彼らは何かを目撃し、その存在に取り憑かれ、次々と狂気に陥っていった。
「これはただの通信トラブルじゃない。何か恐ろしいものが、このステーションに潜んでいる…」ジャン=ルイは深い考えに沈みながら、船内に異常が広がらないよう対策を講じる決意を固めた。
その瞬間、スターライト内の照明が突然暗くなり、通信システムが再び異常を示し始めた。不気味な低い音が船内に響き渡り、冷たい風が再び吹き抜けた。何かが、彼らを見ている。
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