第50話東京ドーム




ダンジョンで連泊して帰ってきたら、何で・・・


旭からスマホ連絡だった。

何気に見ると・・・画面にシルーが出ていた。

それも歌ってるよ。再生回数が凄いことの・・・


ああ、あの歌だ。

精霊を称える歌だと聞いたぞ。


皆にも外国語のように聞こえるが、あれって精霊語だ。

独特の旋律が精霊に届くらしい。



日本にも精霊がいて妖怪や八百万やおよろずの神なども精霊だとシルーは言ってた。

だから聞いた精霊は、幸福感を感じて周りにいる人々に幸福感を感じさせている。


だから人気になるのも納得だ。


海外のネットにも流出。

ネットに繋がってる全ての国々の人々が何回も見ている。



そして今日、東京ドームでシルーが歌う。

東京ドームの55000人のチケットは、全て完売しきった。

それもチケット代5万円と強気な設定をしたのも旭だ。

どれだけ儲けたのか・・・



会場の外では、当日券を求めて様々な人々が・・・


係り人が「当日チケットは、完売してるので帰ってください」


「そんなバカな・・・」


チケットが無いことを知った人々は、なぜか帰らない。


警備員がなだめてもダメだった。

警察も出動していて、えらい騒ぎになっている。


「応援を呼べ!これでは暴動が起きるぞ!!」


「俺はシルーのそばに居たいだけだ!何が悪い」


「悪くありませんが通行の妨げになります」


そんな配信を見た俺は、外へ飛び出そうと思った。



そんな時だ。

シルーがマイクを持って歌いだした。


それを同じくしてライブ配信が世界に向かって流れる。

会場外のファンもスマホからの歌声を聞くと、あんなに騒いでいた現場が静まり返る。

手のスマホが淡く光っていた。




「どうですか師匠、驚きました」


「ああ、驚いたよ・・・旭が芸能プロダクションを立ち上げて、社長の椅子に・・・座っているのが・・・」


「もう師匠たら・・・政治家や大企業からも当日チケットを頼まれて、なんとかしたんで借りをが・・・」


「借りが出来たからって油断するな」


お前が、当日券を無くした犯人か・・・なんてことを・・・


それに権力者は、何をするか分からん。

あ、俺には分かる方法が・・・しかし、使う事に躊躇ためらいいが・・・




ああ、人々が幸福な顔でシルーを見ている。

会場でも外でも・・・


静寂の中にシルーの歌声しか聞こえない。

ただ聞き入っている。




舞台袖で・・・


「御主人さまもいらっしゃるとは・・・」


振返るとルシハーとウーがいたぞ。


「なんで・・・」


「わたし達も歌うので・・・私が歌って次にウーが歌います。シルーの休憩の合間の歌です」


変化アイテムを持っている2人は、隠すところは隠して肌も白い。

それにルシハーの衣装は、ボンキュッボンを強調した衣装だぞ。

ああ、化粧も妖艶ようえんな・・・


ウーは、長い足をだしたショートパンツで上半身は、水着のブラだけだ。

そして強靭きょうじんな筋肉を見せている。



「それって誰がきれって・・・」


「師匠、わたしの案が何か・・・気に入りました」


こいつには、商売の神様がついてるかも・・・


あ!シルーの長い歌が終わって戻ってきた。


え!なんで抱きついて来るかな~。


そんな横を通るルシハー。


舞台に立ったルシハーが歌いだした。


歌ったのが『愛の賛歌』でエディット・ピアフ風に歌ってるぞ。

それもマイクなしの声のままで・・・


それでも会場の隅々まで聞こえているなんて・・・

魔族の恐ろしさを垣間見たぞ。


凄い肺活量だ。

息継ぎのタイミングがなくても歌い続けてる。

余裕を持ってフレーズを歌いきっている。


俺の鑑定でも魔法は使ってない。


なんであんなに歌えるのか分からん。


ああ、観客も驚いている。



「師匠、ルシハーさんのファン・・・男性が多いんですよ」


「そうなのか」


「それに対してウーさんは、女性が多くて・・・」


ああ、なんとなく分かる。

宝塚あるあるだ。




ルシハーが戻ってきて俺に抱きつく。

シルーも抱かれているのに・・・



ウーが歌いだした。


ハスキーな声だった。

人々に自分の存在を印象づけるには、持って来いの声だぞ。


この歌って俺の母が作った歌だぞ。

ああ、懐かしい。


ほおには、濡れる感覚が・・・ああ、なみだか・・・


また違った歌を・・・あれは・・・俺のための歌だ。

幼いおさない思い出の歌だよ。



シルーは、10曲。


ルシハーは、3曲。


ウーは、3曲。



アンコールが鳴り止まない。


最後のアンコールは、シルーの精霊の歌が・・・



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