第44話暗殺阻止




1人の男がカバンを持ってエレベーターのボタンを押した。


ドアが開く。

誰も乗ってない。


男は乗り込んで行き先の階のボタンを押した。

そして急ぐように『閉』ボタンを押す。

ドアが静かに閉まる。


「なんで動かない」


あ、耳鳴りが『開』ボタンを押すがドアは開かない。

そして暗くなって意識が・・・



ドアは開いた。

空気呼吸器をした男達が20式5.56mm小銃を持って構え続ける。


1人の男が手で合図を・・・


1人が中に入って手で鼻と口に近づけた。


「隊長!生きてます。写真の人物で間違いありません」


「生きてるのか・・・しぶとい奴だ」


手錠されて、足には拘束バンドされた男が引張られる。

カバンを開くと狙撃用銃が「狙撃手だな」


「こいつ大人用オムツをしてますよ」


「お前は、バカか・・・狙撃手は何時間も前に現場に赴き、忍耐強く待つのが仕事だ。だからトイレなんか行くと思うか・・・それに最終的に納得いくまで距離や風速など調べるのがプロだ。この男は何度もビル周辺を確認してたハズだ。それは逃走経路の最終チェックだ」


「だから1階で黙ったまま連絡があるまで動くなと・・・やっと納得しました」


「経験の差だ」








「目的地まで30分で現着するので準備を・・・」


「分かった。ここまで来て事故るな」


「了解!」


荷台の中では、爆弾の最終チェックが行なわれていた。


トラックが「キキキキーー」と急ブレーキを・・・


1人は「ガン」と頭を打って頭から血が垂れる。


「何をやってるんだ。安全運転で行けって言ってあるのに爆弾は大丈夫か・・・」


「大丈夫です」


「こちらベータ、何があった・・・おい、聞こえてないのか・・・」


「リーダー!変・・・」声が途切れて倒れだす。


リーダーも異変に気づきトラックの扉に向かうが意識が飛んで倒れる。



荷台の扉が「ガバッ」と開く。


空気呼吸器をした男達が乗り込む。


「死んでます」


「こっちも死んでます」


「荷台の中だからな」


「こいつ生きてます」


「拘束して引きずり出せ」


素早くフェイスマスクされてボンベで高濃度の酸素を投与。


「生き返りますかね・・・」


「そんなの知るか・・・俺らは命令されたことを黙ってやればいい」


血液中から一酸化炭素がなくなり、症状を緩和する様子を黙って見ている。


「隊長、生き返ったら指定された病院へ運び、警護するようにと命令がくだりました」


「そうか・・・秋田と矢野は、トラックを例の場所へ・・・残りは病院だ」


「了解」






「ドローンテロ犯は、まだ見つからないのか・・・」


「こっちのビルの屋上にはいません。四方を確認しましたが、それらしき姿はありません」


「カジノオープニング式典まで後1時間だぞ。失敗は許されない」


最終手段を使う事に。

標的のカジノの屋上から探すことだ。




屋上に現れた班は、色々な機材を持ち込んできた。


最終手段は自動狙撃2号。

それもコンクリートにアンカーで打つ付けて固定。


自動狙撃2号の性能。

2000メートル先まで確実に命中させることが可能。


それを3人で最終チェックが行なわれる。


「準備OKです」


プログラム開始ボタンが押された。


何処から狙ってくるかAIが自動に考えて探し出す。


「87%の攻撃ポイントが判明したぞ」


180度回転して高感度カメラが捕らえたのは、海上の上の船だった。


カメラがズームアップ。

4人がドローンの近くで作業してる最中だった。


タブレットを見ていた責任者は、1人1人をタップして計4人を狙撃対象に選んだ。

そして躊躇ちゅうちょなく狙撃ボタンを押した。


乾いた音が「パン、パン、パン、パン」と響いた。


犯人も気付いた時には、撃たれて死んでいた。


わずか1秒の出来事だった。



ドローンを自動で飛ばせて目標に特攻して爆発するタイプで、ボタン1つで飛ぶから仕方なかった。

作戦開始時から殺しのライセンスは、承認されていたからだ。


その船には、ヘリに乗った自衛隊がロープでスルスルと降りていた。


「ドローンを確保!」


「今から船舶を確保します」





証拠のスマホから黒幕のアジトを迅速に調べ上げた。



「そんな場所に泊まってたのか・・・」


「横浜ランドマークタワーに普通に泊まっていました。宿泊名簿の名は、坂田敏宗としむねで大阪在住の人物です。大阪府警は坂田敏宗を逮捕して取り調べをしたそうです。わたしは、何も知らないと言ってるようで、中国人との係わりもないと・・・」


「それは名をかたられただけだな」


「緊急逮捕しますか・・・」


「出国するまで泳がせよう。もっと大物が現れるかも・・・」





総指揮司令部。


俺は、巨大モニターの前で「皆、ご苦労・・・これで総指揮官から退任するよ。後はよろしく」


言い残して司令部室から出た。


傀儡くぐつ魔法』で俺が総指揮官に就任するように仕向けた。


総指揮司令部室にいたWJIの偉い数人は、キョトンとしているだろう。


あんな20代の男に何故、総指揮官を任せたのだろうと・・・



今回の作戦にも色々問題はあった。

狙撃犯は、銃撃戦後に姿をくらまして走査線上に現れなかった。


顔写真で入国から銃撃戦まで事細かく調べ上げた。

それがプッツリと消えたのだ。


ドローンを操作する犯行グループは、入国すら分からないありさまだ。


唯一爆弾のありかと犯行グループの存在をつかんだことだけだ。

しかも逮捕しても2つのグループは残ったままだ。



爆弾犯を捕まえても・・・

暗殺計画は、日を改めて行なわれる可能性が大きい。



なので俺は総理大臣に2つも案を示した。


爆弾犯を皆殺しにして見せしめにする。


犯行日に一気に片づける。


その2つだ。


テロ犯から多くの死者が出てもスパイ法とテロ等準備罪の厳罰化で、法的に問題ナシで命令した俺まで及ばない。



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