第43話青いカモメ




朝早くからダンジョンへ行ったのに、裏口通路で谷本さんに呼び止められた。


「忙しい君には申し訳ない。このビルのヘリポートからWJI(世界日本調査)本部ビルに行ってくれ」


「何かありました」


「中国クーデター派が北朝鮮の協力者から殺しの依頼を受けたらしい。投げ悲しい非常事態だが・・・依頼コードは『青いカモメ』だ。そのターゲットが鎌田総理大臣だと最近になって判明してね・・・それを阻止する組織メンバーに君が選ばれた訳だよ」


「拒否できますよね」


「いや無理だ・・・」


やっぱ権力者は、怖いぞ。

ああ、自分自身の命だ。必死になるわ・・・


『いや無理だ・・・』その無理には色々な含みがあった。




「行きたくねーー!」と言っても連れて行かれてヘリへ乗せられた。


「パタ、パタ、パタ、パタ」と鳴り響かせて飛んでしまった。





ヘリから降りると「わたしがWJI職員の田辺と申します。相沢班の支援リーダーを勤めることになりました。よろしくお願いします」


黒髪をポニーテールにして黒縁メガネの女性だった。

いかにもインテリぽい黒いスーツ姿だぞ。


「相沢班って・・・」


「今回は、サイバー担当の米沢班、聞き込みなどの従来の捜査をする山口班、それ以外で捜査する相沢班の3つで進めます」




ああ、案内された部屋には、一癖も二癖もあるメンバー4人も居たぞ。


「田島は、わたしの直属の部下で狙撃や格闘までこなす頼もしい部下です」


なんだよ自慢かよ。


田辺は、まだしゃべっているが無視して鑑定する。



矢島マリア(アメリカ人の父、日本人の母)


LV0

HP:20


霊能力



マジか・・・

何ができるか強く念じた。


あの青森の恐山のイタコを受け継ぐ母系だよ。

死んだ人を呼び出して話が出来るやつだ。


え!幽体離脱も出来るのか・・・そして一瞬で遠くまで行って帰れるらしい。


そんな人達を使って犯行阻止だと、俺に何をさせる気だ。



阿久井幸あくいさち


LV0

HP:20


念写



念写か・・・念じると見たい物を写真に写すらしい。

だから肩からさげてるバッグにチェキがはいってるのか・・・


撮ったプリントに俺の顔が・・・なんて女なんだよ。

この女と結婚したら大変だぞ。

浮気もできない。



和田歩果わだほのか


LV0

HP:20


予知夢



寝て未来の夢を見る能力だよ。



田辺の紹介も終わっても話は・・・


「それで何か分かれば、わたしに言ってください。このキーボードで打ち込んで情報共有します。重要な情報が入りしだい、わたしからも知らせます」


「他の班の顔合わせって無いの・・・」


「ありません」


手を「パンッ」と叩いて「捜査をはじめましょう」



俺に向かって「はじめましょう」


ここは、俺が指揮するしかない。


「矢島は、殺された犯人の死体安置所へ行って聞き出してくれ」


田辺は、隣の部屋に向かって「青田、敷島」


ドアが開いて2人の男性が出てきた。


「矢島さんを警護して死体安置所に案内を・・・」


「今の時間だと検死してますね・・・」


「無理言って入らせてもらいなさい」


「矢島さん、行きましょう」


3人は、出て行った。



「和田は、実行犯のことを考えながら寝るんだ。誰か静かに寝れる場所へ案内してくれ」


田辺は、部屋に行き「磯村、静かに寝れる場所へ」


「はい」


磯村は、女性だった。

眠そうにする和田に寄り添って出て行った。



「阿久井は、ここでチェキを使って役にたつ情報を念写すればいいから・・・」


阿久井は、バッグをガバッと抱えた。

何でチェキを持っているのを知っているの、そんな顔だ。



俺は、銃撃戦があった現場へ・・・

田島が一緒について来た。


それもヘリに乗って移動だ。





現場は、黄色いテープが張ってあった。

鑑識の人達がすでに証拠を持ち去って、警察官2人しかいない。


田島は、手帳を見せて「入ってもいいな」


「はい」と言ってテープを持ち上げた。


ああ、田島は警部だった。

警察からWJIへ派遣されてるのか・・・



あ、まぼろしのように見える。


犯人は警察官に職質されて銃を発砲。

負傷した相棒を見て、パトカーにいた警察官が撃ち返した。


胸を撃って重傷を負わせた。

そんな犯人の眉間に突然に穴が開き倒れた。

狙撃されたのだ。


撃たれた犯人の無念が・・・


男は狙撃の弾を回収する下っ端だった。

ここで狙撃の練習をしてたらしい。


ここって港だ。

狙撃場所は、海が近いかも・・・


それに殺害方法を知っていた。


狙撃は、第1段階。

第2段階は、遠隔操作式の爆弾で成功しても爆破する予定だ。


更にドローン攻撃も用意している。


確実に殺すためだ。



俺は、田島に話した。


田島は、田辺に連絡して「はい・・・真実でしょう・・・はい・・・はい・・・分かりました」



マリアは、狙撃と遠隔操作式の爆弾のことを聞き出したらしい。


和田は、横浜の港のカジノのオープニング式典の夢を見たと証言。

鎌田総理大臣も式典に参加予定だった。



阿久井は、俺の肩に触って狙撃手の顔を念写。



鎌田総理のオープニング式典をキャンセル案もでたが却下。

狙われ続けるのは変わらないからだ。


犯人全員を捕まえるか殺すしかないと、早急に結論が出た。


俺の『傀儡くぐつ魔法』で会議全体を誘導。


だって殺さずに捕まえることを優先するなんてあり得ない。

オープニング式典のキャンセル案が出るってバカげている。


まさに消極的な考えだ。


警察内では、殺さずに捕まえる案が出て、俺は強行手段を決行。



昔は、船に乗った犯人を撃ち殺した『ぷりんす号シージャック事件』。

ああ、テレビで生中継もされてたぞ。


『三菱銀行人質事件』も犯人は、警察官2名、支店長と行員、計4名を射殺。

42時間後に射殺。


『秋葉原通り魔事件』なんて犯人に警察官が刺されても撃ち殺さなかった。

どうせ死刑になるのに・・・



だからテロ犯には、容赦しない。

向こうも殺す気なら、こっちも殺す気で立ち向かうしかない。


テロ犯よ!覚悟しろ。



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