第31話消防車
工房へ来たら65インチ液晶テレビの前に皆が釘付けだった。
「なんかあった・・・」
テレビから消防車のサイレンが鳴り響いていた。
「師匠!なにをのんきな・・・あれあれ、70階のタワマンが燃えているのに、のんき過ぎませんか・・・弟子として恥ずかしいです」
「なんで恥ずかしい・・・」
「師匠なんか相手にしてられません・・・あああ、あんなに大きく燃えるなんて・・・早く消せばいいのに・・・」
「先輩!2億5千万円の601号から出火したらしいですよ。風も強風でこれはヤバイと火事の専門家が言ってます。それに完全にハシゴ車では無理ですね・・・」
無理だと言い切ったぞ。
スマホで仕入れた情報だから全て信じたらダメだ。
「放火犯が火傷して捕まったと・・・これが犯人の顔です」
スマホ画面を見せびらかす間宮は、してやったり顔で見せていた。
俺もチラッと見たが醜い姿だ。
あんなになってまで放火するなんて・・・あ!そうか・・・ガソリンに火をつけたんだ。
ガソリンを勢いよくまき散らして、服にもついたのも気づかず火をつけた。
あああ、素人は怖いよ。
え!部屋のあっちこっちから「キャーー」と悲鳴が・・・
60階から人が燃えながら飛び降りたのを見てしまったらしい。
まさにリアルタイムの映像だ。
モザイク処理する映像が、そのまま流れた。
「あれは何!・・・なんか赤い物が飛んで・・・あれって消防車・・・」
ああ、ようやく来たらしい。
東京都品川区に1台が納車された新車だ。
下の道をサイレン鳴らして、遠い距離を走ったに違いない。
消防署から飛べば速くつけるのに・・・航空法の法改正が間に合ってない。
飛んでいる消防車が燃えさかる窓へ近づく。
「見てホースが伸びている・・・きっと水で消してくれるわ」
そこで皆が驚愕した。
「なぜ反対に外に水を拡散させてるの・・・逆よ逆だって!」
「消防士がパニックって・・・え!なんで・・・」」
「え!見て見て、あんなに燃えていたのに消えてる」
外に向かって水を拡散して、一気に煙や炎が外へ吸い出した。
そして酸素も奪いさった。
これはハイドロベント原理で簡単に安全に消す方法だ。
「見て!ホースが勝手に移動してるよ」
「ホースの先端に何かがついてる!」
「あれって見た事が・・・師匠が隠れて作ってたヤツよ。絶対に間違いないわ・・・」
おいおい、俺を見るなよ。
「あれは、小型重力機だ。コントローラを使って燃える窓へ突進させてもバリアで燃えることはない」
もう消防士がホースを持って近づく必要はない。
ガス爆発やバックドラフト現象に巻き込まれることもない。
テレビでは・・・
「見てください。あれは消防車でしょうか・・・消防車が何故か、空を飛んでます。燃える炎を一瞬で消して、これは奇跡でしょうか・・・この強風で報道のヘリコプターも飛べないのに・・・」
あああ、テレビに向かってアンサーが必死に訴えている。
「師匠!あれって師匠に仕業ですね。なんで教えてくれないですか・・・1番弟子として情けないです」
「まあまあまあ、いい事をした社長にそのように言ってはダメです。社長の立派な仕事をたたえるのが社員の務めです」
「もうアヤメは、師匠に甘いんだから・・・もしかして給料を上げて欲しいの・・・アヤメを査定するのは、1番弟子の私よ」
あ!またテレビで・・・
「落下してダメかと思われた女性が助かりました。消防隊員によって浮かんで移動するセーフティーエアクッションが命を救いました。火傷も回復ポーションで、すっかり治ったようです。念のために救急車で運ばれてます」
ストレッチャーで元気な顔の女性が救急車へ・・・
今日は、工房で質問攻めにあってクタクタだよ。
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