第28話誘拐犯




何でこうなった・・・


谷本さんから電話で××警察署へ行ってくれって。

話から推測すると金持ちから頼まれたらしい。

谷本さんって色々人脈があるみたいだ。


報酬は、1000万円。

金ではないがギルドの谷本さんの頼みだから・・・ああ、面倒だ。





「私は、絶対に催眠をすることに反対です。人間の記憶は不確実性で思い込みなどで違った記憶にすり替わってしまいます。こんな話があります・・・幼い姉妹がドラマで少女を生贄にして殺して埋めるシーンを現実とドラマが入替わった。そして警察に父親が少女に儀式をして殺して庭に埋めたと通報。庭を掘り返しても死体はない。しかし、警察は目撃者が姉妹であった事、その内容がとても詳しかった事から厳しく父親を問い詰めた。しかも父親も姉妹が嘘を言うハズがない・・・もしかしたら殺したかもしれないと自白をして有罪となって刑務所に服役。その後、姉妹の話が、ドラマの内容に同じだと気付いた人達が、姉妹の証言は嘘の記憶であると父親の無罪を訴えました。この話を聞いて人の記憶が曖昧あいまいなのに信じると言うのですか・・・」


「滝田さん、あなたの親友の弁護士があのように言ってます。それでも催眠をやりますか・・・」


「娘を最後に見たのが私で・・・それ以降の消息が分からないのなら、きっと誘拐犯が居たかもしれません。どうか催眠で記憶を探ってください」


「滝田!それでいいのか・・・犯人にされるぞ」


「何で私が犯人だと・・・妻が資産家の娘だから・・・そんなバカな、娘も妻も愛しているのに・・・」


「警察は、滝田の会社のことまで調べて犯人だと決めているに違いない」


「いくら弁護士だからって警察をバカにして、それでいいのですか・・・」


「弁護士さん、我々を怒らせたら痛い目にあっても知りませんよ。それに本人がいいって言ってますよ。これ以上、邪魔するなら弁護士の同席を拒否しますよ」


ああ、退屈だ。同じ話の繰り返しだ。


「あの・・・このまま話しても、平行線なので退出してもいいですか・・・」



「それはダメだ!弁護士を退出させろ!」


「嫌、それは困る・・・分かった。カメラの動画コピーを提出するなら催眠でもやってくれ」


ああ、最後でキレてる。



滝田昇たかたのぼる


LV5

HP:300/300

MP:20/20

スキルポイント 21


スキル

ダブルアタック



なんだ、この人も探索者だったのか・・・


「滝田さん、犯人を知りたいですか・・・」


あ!『知りたい』が表示されたぞ。


またもペラペラとしゃべりだした。


犯人らしきことも話だす。

犯人の顔を・・・


え!顔が浮かびだしたぞ・・・



田中健二たなかけんじ


LV1

HP:10

MP:10


スキル


健康状態:緊張・恐怖



健康状態が緊張と恐怖ならコイツが犯人だ。

これって探索者だから鑑定出来たのかも・・・田中健二が犯人だと言えない。



「滝田!犯人らしき男の顔をしっかり思い出せ」


弁護士が滝田の襟首えりくびを掴んで揺すった。


「え!何か言ったか・・・何も覚えてない・・・犯人は男なのか・・・どんな顔なんだ」


『知りたい』状態が途切れたよ。


ああ、刑事も呆れているよ。



俺は、取調室を出て預けたスマホを受取った。

そして谷本さんに電話した。


「谷本さんですか・・・相沢です・・・探索者の田中健二を調べて欲しいので・・・はい・・・お願いしますよ・・・そうですか・・・」


ダンジョンを1年も入らなくなって探索者カードも失効。

住所に送ったカード更新ハガキも送り返されていた。


その時、パッとひらめいた。


探索者の残留思念が読み取れるって・・・


まさかサイコメトリー能力。


俺の漫画やアニメの知識をフル稼働。

物体に触れることで、その物体にまつわる人物やできごとの情報を読み取る。

神秘的な能力で使用者は、念を通して情報を視覚的、聴覚的および精神的に受け取るらしい。


そうなんだ。

思わずガッツポーズを・・・


これって刑事と一緒に現場へ行って触るしかない。


「刑事さんに誘拐犯の話があるので、呼んでくれませんか」


「それは、本当なのか」


近く警察官が驚いていた。






「ここが現場だ・・・その不思議な能力を見せてもらおうか・・・」


この交通標識を触ったハズだ。


え!触らなくても見える。


この現場近くに住んでいた。


「こっちです」


「何処へ連れて行くつもりだ」


刑事2人は、半信半疑だ。

ここまで来たら信じてくれよ。


「この家に少女の口をふさいで犯人が入りました」


「こんなに近い場所に犯人が居るだと・・・」


「君の戯言たわごとを聞きに来た俺らがバカだった。磯野、帰るぞ」


「刑事さん、犯人は今もここに居るんです。静かにしてください」


「・・・・・・」


「どうする・・・」


「あ!気づかれました。少女の口を強くふさいでます。このままだと殺されます」


その言葉を聞いて刑事は、ドアを蹴り破った。


少女は縛られていて口には、犯人の手が・・・

きっと聞耳を立てていたに違いない。


「貴様ーー」


刑事のこぶしが犯人の顔面を強打。

ビックリした犯人にまともにヒット。

犯人は吹飛んで少女も倒れて泣き出した。


あああ、泣かしたよ。


「助かったんだよ。もう泣かないでくれ・・・君の名は滝田愛かな・・・」


「は・・・い・・・」まだシクシクと泣いてた。


もう1人の刑事さんは、犯人に手錠を掛けて背中に蹴りを・・・


「クソ野郎が・・・2度とシャバに戻れると思うな!」


あああ、野次馬が来たよ。


「何かありましたか・・・」


興味シンシンのおばさんだ。


「誘拐犯が捕まっただけです。こちらの2人が刑事さんです」


「あの子が誘拐された子なの・・・凄いニュースよ」


ヤバイと思った俺は、帽子とマスクをして顔を隠した。


もう撮るなって・・・あっちもこっちも動画を撮ってる。

まるで犯人のように撮られた。


車で警察署へ行く時に・・・


「この人、元探索者です。だから足にも手錠をした方がいいですよ。足蹴りなんか普通の人の1.5倍の威力ですよ」


「あ、探索者は、オリンピックや格闘技に出れないって聞いたことが・・・それが原因か・・・」


俺が運転することに・・・隣には、少女がキョロキョロしながら座った。

後部座席には、刑事さんが犯人を挟んで座ってた。

先程まで暴れまくったからだ。



田中は、悔しそうに俺の後頭部を睨んでいた。

お前の行動なんかみえみえだ。


『輸送中に逃げようとする』って表示されてたから・・・


車のエンジンを始動。カーナビをセットして走りだした。



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