第23話薬師Ⅱ




雇われた『薬師』の彼女らに、俺は言い放った。


「君らにダンジョンでのトラウマを克服して欲しい」


彼女らの数名は、悪夢にうなされて不眠症にもなっていた。


『薬師』もダンジョンへ行った経験者だ。

経験者であった方が回復薬の効果が何故か上がるデータがあった。


そしてトラウマは、人によって違う。


モンスターに仲間を喰われ、それが原因でダンジョンへ入れなくなった人。



ダンジョンへ入ったがモンスターと出会って、何も出来ないまま震えるしかない経験者。


モンスターの殺気は本物だった。


仲間から「怖いのなら2度と来るな」

そしてダンジョンに行く気もなくしてしまう。



当初は優秀な探索者で活躍もしていた。

ダンジョンなんか楽勝だと・・・しかし、1回の致命傷を負って仲間に助けられて回復ポーションで回復。

本当なら出血多量で死んでもおかしくない負傷。

それ以降、モンスターと出会った瞬間に動けなくなって辞めた人。



個人面接で『知りたい』を発動した結果、分かった事実だった。


覚醒してない人も多いが、面接して可能性を感じた。

このまま『薬師』のままで終わるには惜しい。



そして4人の戦う姿の動画を見せた。


涙を流して見入る人。

歓喜を発して喜ぶ人々。


腕の1本を切り落とされて、痛みに堪えながら切り傷に直接に回復ポーションを降り注ぐ。

呆気ない程に腕が生えて治る瞬間。


そのシーンを見て、皆は驚愕するしかない。

1本の回復ポーションで治るハズがないからだ。


その切られた腕のすそをたくし上げて「ブンブン」振り回す旭。

中には触る人まで・・・「本当に治ってる」





50人を5組に分けた。


1班・旭


2班・間宮


3班・田所


4班・神谷


5班・相沢


5班は2階層へ向かった。


1班、2班、3班、4班は、1階でレベルアップだ。




砂漠でスリングを使った投石訓練を・・・させた。


「いいか・・・この紐を二つ折りにして、折り目に石をセット。利き手で紐の先端の輪っかを薬指・小指に通して、もう一方の先端を人差し指と親指で掴む。そしてブンブン振り回して勢いがつたら紐を放す」


放たれた石を200メートル先で落ちた。

これも彼女らにあわせて手を抜いて投げたよ。

せめて200メートルは欲しい。


爆発付与で爆発規模を加減出来るが、200メートルないと危ない。



「旗の10メートル内なら合格だ。石はいくらでもあるからな・・・」


1回は外して2回目から合格する人も・・・


そんな人は、率先して下手な人を教えてた。


「放すタイミングは、この角度だ。やってごらん」


「ブンブン」回して手放す。


石は山なりに飛んで1メートル内に落ちた。


これなら大丈夫だろう。

全員が出来たから本番に向けてスリングで石を放つ。


「ドカーン」と爆発した。



しばらくするとモンスターが集まりだす。


「あの場所へ放て!」


選ばれた5人が石を放つ。


まあまあだな・・・


時間が来て「バン、バン、バン、バン、バン」小規模な爆発が起きた。


集まったモンスター表示が消えだす。

作戦は成功だ。


「爆発が・・・なんで・・・」


「本当に爆発が・・・」


あえて知らせなかった。


あ!メンバーの1人がレベルアップしたぞ。

ちょっと恍惚こうこつな表情に・・・



第2のモンスターが集まったので、5つの石に爆発付与をして手渡す。


「心配するな・・・2分後に爆発するから・・・」


え!焦っているぞ。


「そんなに慌てるな!」


「バン、バン、バン、バン、バン」


あああ、レッドワーム数匹が残ったぞ。


急いで石を手で投げる。

ドンピシャな場所に落ちて「ドーン」と爆発した。


「狙いを定めて放て・・・返事は」


「はい」


「はい」


「はい」


「は、はい」


「はい」




全てを倒した。

レベルアップしたが覚醒する者は居なかった。

もっと刺激が必要かも・・・



4輪バキーを6台を出した。

自宅でコツコツと作ったバギーだ。



口をパクパクさせて、え!驚いているの。

俺の能力を知ってるハズなのに・・・何で・・・


4輪バキー6台だからか・・・

あああ『アイテム袋』と勘違いしてたのか・・・普通なら、そう考えるのも当たり前か・・・




「2人乗りだから乗り終わったら出発だ」


慌ててバギーに乗って走りだす。


「どうすれば・・・」


「エンジンを掛けるのよ。エンジンを・・・」


「・・・・・・」


ウィリー走行で激走する者も・・・


「遅い、遅いぞ」





何とか岩場に到着。


クロスボウを手渡す。


「引張って準備して・・・」


え!マジか・・・引けない数人は、俺が引張った。



「そろそろ来るぞ!!」


出たぞブラックサソリが・・・


「好きなだけ撃って倒せ!」


1頭は、矢が8本が刺さっていた。


「また来たぞ」


慌ててクロスボウを持って来る。

まだ引けないの・・・


全てのブラックサソリを倒した時に・・・


あ!やっと来た。

『スキルポイントを使用して風魔法を覚醒できます』


もう、面倒なので奥の手を使った。

「頑張れよ」と声かけして肩に触れて強制的に覚醒させた。


「あ!覚醒しました」


周りの彼女も大喜びだ。抱き合う場面も・・・




ああ、風魔法を覚醒したのにレッドみたいには、倒せない。


「弱点は、腹だ・・・腹が無理なら間接を狙って放て・・・足がなくなれば攻撃されないぞ」


おおお、足の間接部分が斬風ざんふで「チョキン、チョキン」と切れた。


「ちょっと待った・・・彼女にゆずってくれないか・・・レベルアップをさせたい」


本人も自覚してるようで「お願いします」と頭を下げた。


めちゃ近づいているよ・・・あ!頭に命中。


「あ!覚醒が・・・」


え!覚醒したの・・・


「火魔法を覚醒しました」



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