第22話薬師




鑑定メガネを外して、しきりに目頭を指でんでるよ。

ああ、あれって考えてますポーズだ。


計算機を「タタタタタタタタタ・・・」と連打。


そして「これでOKだ」となんらかの答えを導き出したようだ。


「これは・・・そうとうな魔力が見えます・・・上層部と話し合って価格を決めたいと思います。預かってもよろしいでしょうか・・・」


「はい、お願いします。


「これが85個の預かり書になります。わたしの推測では、15万円でも欲しい値打ちがあります」


「それ程に・・・」


85×15万=1275万円


15万円か・・・下手したら15万以上に高くなるかも、期待が膨らむな~




休憩の椅子にすわって思い出す。


「今、何時だ」


相談窓口まで行くのも面倒だ。


スマホをアイテムボックスから取り出した瞬間からバイブ機能が・・・

あのアプリからの連絡だった。


なら彼女らは、俺よりダンジョンを早く終わらせた。

時間を見たら21時を過ぎてた。


俺が遅かったんだ。


いつもなら16時には、帰っていたのに・・・



もうバスもない。

ここのバスは、20:55に終わった。


アプリで宿泊先を探すしかない。

タクシーを呼んで帰れば、タクシー料金が高くつくに決まってる。

結構儲けているが無駄な金は使いたくない。

時間も、もったいない。


すぐにもシャワーを浴びたかった。




目の前のビジネスホテルがヒット。


シングルルーム 禁煙 無料WiFi

朝食 1,080円


1泊¥6,714円


予約ボタンを押した。


販売店へ駆け込んで弁当とウーロン茶を買ったよ。


営業時間を見たら4時~22時。



外に出た瞬間、夜だと実感する。

俺の心は、16時頃のままだ。


道路の横断歩道は、赤信号が点滅してたよ。

それ程に交通量が少ない。


ここって学生街だ。

マンションでも門限があるらしい。




ビジネスホテルでQRコードを読ませてドアが「カチャ」と開いたよ。

小さなロビーの受付には、誰も居ない。


『予約した部屋でQRコードで入ってください』


それが受付テーブルに置いたあった。



そのままエレベータに乗って5階へ。


501号室が俺が泊まれる部屋だ。

またもQRコードを読ませてドアを解除して中に入った。


ベッドに倒れ込んでスマホを確認。



あの連絡アプリには、マジか・・・



『長野のブラック会社2社が倒産しました。なので薬師50人を雇いました』



『師匠、連絡しましたよ』




錬金術師の数は、1221人が登録されていた。

採取される『薬草』の量に対してポーションを作る人が圧倒的に少ない。


なんので研究で判明した作り方で作る人を『薬師』と呼ぶようになった。

ポーションより効果が落ちるのも仕方ない。

『薬草』は鮮度が命だった。早く処置しないと効用もベタ落ちに・・・


だからって海外へ輸出など考えられなかった。

それ程にアドバンテージが大きかった。

それを手放すことなど出来るハズがない。


『薬師』が作る回復薬は、美容関係へと流れた。

効果期間は短いがツヤツヤの肌に蘇る。

目尻のシワなんか一発で治る。

1ヶ月は、シワなしの顔を続くから大ヒット商品だ。



禿げのおっさんにも朗報が・・・

2ヶ月前に『禿げ薬』が発明。

発明者は、俺だ。


回復薬から簡単に作れる。


特許庁に出願したら特許査定が早く通った。

めちゃ速かったらしい。


それに特許料は、毎年支払う仕組みだ。

権利を維持するためにの特許料で仕方ないと言われた。


特許権の存続期間は「出願日から20年」


もう使わせてくれってあっちこっちから問い合わせがひどかった。

だから代理店に任せたよ。


海外は、航空便を首を長くして待つ人々が大勢いるらしい。

待てない人は、それだけのために日本へ来ていた。


「あなたの頭、若さが蘇ります」


そんなキャッチコピーがテレビやネット広告に流れた。




長野にもブラック会社があったのか・・・


スマホで長野のポーション会社を調べた。


旭静香あさひしずか間宮彩まみやさやは、『有限会社ミライ』の社員だと分かった。

その2人が辞めたので一気に倒産に向かってかけ落ちた。


『有限会社ミライ』には、2人しか錬金術師が居なかったからだ。



もう1つの会社、『有限会社善光』。

田所菖蒲たどころあやめ神谷柚かみやゆずが錬金術師だった。


倒産したのも同じ理由だ。



あああ、ブラック会社に勤めた旭だから、あんな性格に・・・

絶対に違いない。



あ、また連絡が来た。



『私たち4人でマンションを購入しました。そこが『薬師』の彼女らの寮になります』



え!彼女ら・・・男は居ないのか・・・

俺が勤めた会社には、『薬師』の男も居たぞ。



なら工房では、俺だけが男・・・嫌々肩身が狭くねーか・・・



『やっと読んでくれましたね。全てかわいい女性です』



かわいいは、余計な情報だ。



『雇ったからには、責任をもって雇えよ』



『分かってますよ、師匠。お休みなさい・・・』



あ、そんな時間か・・・

俺は、シャワーを浴びて弁当を食った。

そしてベッドへ。


レッドは、アイテムボックスから出てきて「チュウ、チュウ」と吸ってきた。


寝てから吸えって・・・これじゃー寝れないよ。



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