第15話工房




探索者ギルドの相談受付で・・・


「武器や防具を作る工房を始めたいと思っているのですが・・・何か制約なんかありますかね・・・錬金術なので大きな音は出ないと思います」


「相沢さんの場合、銃関係や銃弾を魔改造などを、その店でする予定がありますか・・・予定がある場合は、色々な手続きや審査が考えられます。それに危険物取扱者乙種4類が必要になります・・・国家資格です。1日1時間勉強すれば約2ヵ月ほどで合格が出来るでしょう。そして消費する火薬量と貯蔵する火薬量が多ければ、火薬取扱保安責任者甲種が必要に・・・」


あ!すっかり忘れてた。銃か・・・

ダンジョンで魔改造したように報告したが自分用は、自宅で9mm機関拳銃を直して銃弾も魔改造して撃った・・・

地上で撃ったことは絶対に言わないぞ。


「あ、もういいです・・・火薬は、辞めます」


「しかし、ダンジョン内は治外法権扱いになってます。なので前回の銃弾で逮捕される事はないでしょう」


「なら銃や銃弾をダンジョンで魔改造してギルドに収めるのってありですか・・・」


「はっきりと言えませんが、この建物内で事がおさまるのなら大丈夫と思います」


「分かりました。ダンジョン内で魔改造します。ナイフや剣など武器は、申請すればOKですか・・・」


「はい、特別法でギルドが承認すればOKです。【錬術】の街なら治安も良くて、空き店舗もあるかもしれませんね」


錬金術の会員だから、なんとかなるかも・・・


「探してみます」


「こちらで店舗を探してみましょう」


キーボードを叩いて探してくれた。

何々と身を乗り出して見る。


「1つ空き店舗がありますね・・・それに裏には、30畳のポーション生産工場が・・・」


店舗の略図が見えた。


「それにします」


なんか「ピンッ」と心にくるものがあった。

俺のあるあるを信じる。





【錬術】の街をスマホアプリを見ながら、店は何処だと歩いていた。


「師匠!あれですよ。あれ・・・」


旭、恥ずかしくないのか・・・そんな大声で・・・

指差す方を見ると・・・「あった・・・」


頑丈な鉄格子に守られたショーウィンドウ。

開店していた時には、ポーションが並べられていたのだろう。

空っぽのショーウィンドウが淋しそうにしている。


なんか、やる気が出てきた。



おいおい!不動産から貰ったメモで勝手に暗証番号を入力するなよ。


「師匠、おかしいです。開きません」


「8つの番号を間違えたのか・・・それ0じゃーなく6だな。全体の汚い字から推察するなら・・・」


「ああ、なるほど・・・言われて見れば・・・ピピピピピピピピ・・・開いた」


経営者の錬金術師が死んで、弟子が引き継いだみたいだが上手く経営できなくて倒産。

それで最後に店で首吊り自殺した。


早い話が事故物件だ。

だから縁起の悪い店だと噂されて、誰も見向きもしなかった。

錬金術師って吉日「めでたい日、運のいい日」を気にするから・・・


錬金術の道具も全然残ってない。債権者が持って帰ったみたいだ。


「師匠、あれ!・・・あれが吊った場所ですかね」


ああ、言われて見ればこすれているぞ。

そんなの見てつけて知らせるなよ。なんか背中がゾクッと・・・昼間なのに・・・


「バケツと雑巾を見つけたので、水を貰って来ますね」


あああ旭は、いくら2階の部屋で寝ると決めても大丈夫かな・・・

長野から出てきてホテル住まい。

いくら住める場所があるからって・・・


電気、ガス、水道は、明日にならないと使えない。

いくら魔石ランタンがあって明るくても・・・トイレはコンビニでなんとかなるか・・・

あ、バケツに水を溜めて使うって方法もあるぞ。


夕方には、寝具も届くらしい。

注文して、その日に配達されるなんて便利なネット通販だよ。




1年近く閉店してたから、どこもかしこもホコリだらけだなー。


あ、ひらめいた。

アイテムボックスに店のホコリや汚れなんか収納出来ないかな・・・

今までの経験で触る必要もなかった。

見て思うだけでも収納出来た。


やってみよう。


『ホコリや汚れよ、収納だ』と念じて見回す。


おおおお、マジで綺麗に・・・


あ!レッドが飛び出してきた・・・・・・


『ピエー、ピエー、ピエー、ピエー』


「ああ、うるさいな・・・なんだよ・・・ビックリしたって・・・あああ、分かったよ。悪かった」




「師匠!戻って参りました・・・あれ、綺麗になってる・・・なんで・・・」


ああ、コンビニにも寄って来たのか、ビニール袋をさげていた。





今、作業部屋では、旭がダンジョンの石、木、皮、骨を使って武器や武具を作っていた。


俺が最初に作った石斧に似せて、旭が作った石斧がずらりと並んでいた。

まあ、使えそうだ。


「このハルバード、中々いいぞ。槍のように距離がとれるし一撃が凄そうだ」


「師匠にも分かりますか・・・」


錬金術の変形で槍と斧をミックスした形状のハルバード。


斧部分で叩き斬られたら重みで確実に斬れる。

さらに先端には、短めな槍がついている。これで突き刺すことも可能だ。


旭のこだわりは、そこで止まらなかった。

砥石で仕上げに研いだ。

だから紙も「シャ」と切る切れ味だ。



石のハルバード


攻撃力27



その研ぎ工程で攻撃力25から+2に・・・まさに職人技だよ。

それに俺は、強化しない。


その方がいいと思う。


強化すると武器価格が上がってしまう。

それに旭が俺の強化に甘える気持ちを育てかねない・・・

あくまでも自分自身の実力と向き合って、考えて悩む必要がある。


「師匠、わたしは、これを200万円でギルドに売るつもりです」


「まあ、交渉してみろ・・・しかし、ドロップした武器より攻撃力はいいぞ。そんなに安くしていいのか・・・」


「わたし自身が武器で泣かされたので、そんな経験をさせたくありません」


なんか旭の強い信念を感じる。



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