第13話レベル上げ




1階に戻った。


旭のレベルが低く、ちょっとでもレベルを上げるために来た。


そして行った場所は、魔牛の草原。


魔牛は、黒い牛で1つの長い角を頭から生やしているモンスター。

その角には、毒があるらしく、ちょっとでも触れるともだえ苦しみ転げ回るしかない。


そんな抵抗も出来ない人間を蹴ったり、踏みつけて遊ぶ・・・それが冷酷なモンスターの魔牛だった。

そして最後に頭をかぶりついて、「ムシャムシャ」と喰らう。



その魔牛が今も1人を追い回している最中だ。

それも3頭の魔牛で・・・ああ、1頭が回り込めば倒せるハズの魔牛・・・これは、もて遊んでいるぞ。


ああ、パーティーなのか・・・遠くの方に転げ回る人が・・・5人。

危険な場所なのに・・・



「旭、倒せるのか・・・」


「倒してみせます」


ベルトに差した鞘から魔刀を抜くと走りだす。


「あなた!こっちに逃げなさい。わたしが倒すから・・・」


男も気づいた。

もう、倒れる寸前だが旭に向かって走り続ける。


その横を旭は、すり抜けて『かまいたちのざん』を放つ。


魔刀から何かが放たれて魔牛へ「シュッ」と抜けた。

斬られた下半身が走り続けて、足が絡まって倒れる。

上半身は、後ろの方で地面へ落ちた。


取り残された2頭は、あわてて止まるが旭は、走り続けて下段から斬り上げる。

1頭の頭が斬られる。


「ドッバー!」と血が吹きだす。


今は、残った魔牛と睨み合っている。


見ていて動いたら負ける。

そんな雰囲気をかもし出している。

なにかの斬り合いで見たようなシチュエーションだ。


先に動いたのは、魔牛だ。

真っ直ぐ向かって来て頭を下げて大ジャンプ。


旭は、素早く体を斜めに向けてかわす。


旭が居た場所には、魔牛の角が突き刺さっていた。

魔牛の隠し技で角を飛ばした。


しかし、その隠し技・・・探索者なら全員知ってる技だ。

やっぱモンスターは、バカが多い。


角の無い魔牛は、黒い牛に成り果てた。

今は、旭から必死に逃げている。



旭静香あさひしずか


LV2

HP:20

MP:99/100


スキル

錬金術[変形]


スキルポイント4


レベルが上がったぞ。



倒れ込んでいる男に「回復ポーションを持ってないのか・・・」


「つかい・・・はたし・・・た・・・」


しょうがない男だ。

俺がパーティーの所まで行って回復ポーションを傾けて1滴を垂らす。


ピッタと痛みが治る。


「え!・・・」


俺の回復ポーションは、上級だから1滴で治る効果があった。

5人全てを治す。


治った1人の女性が「助けてくれて、ありがとう」と言ってきた。



田中美佐江たなかみさえ


LV3

HP:30

MP:10/190


スキル

状態異常魔法[睡眠]


スキルポイント14



あ、めちゃ珍しい魔法だ。

これって100%でなく50%の確率で魔法効果を発動するやつだ。

一種の賭け魔法と言ってもいい。


そして魔法を使い果たした。


他の男達は・・・ああ、成る程・・・


剣術の[ダブル・スラッシュ]


槍の[ダブル・アタック]


投擲とうてきの[命中率アップ]


盾の[シールドバッシュ]


視覚強化の[たかの目]


持ってる武器や盾が良かったら、それなりのパーティーになっていたのに・・・



旭が戻ってきた。

手には、1個1万5千円の魔石を3個も持っていた。


え!何・・・俺に見せに来たのか・・・

嫌々見せなくていいよ。背中のバッグは、何のために・・・


え!「師匠、レッドさんに魔石を1個上げたいので・・・」


小声で「今そんな話をするのかよ・・・」


レッドは、魔石を食べることが判明。

砂漠で、こっそり魔石をネコババしてた。


それに、俺の従魔だからアイテムボックスにも入れた。

ネコババしたことが分かった時に、叱りつけようとしてアイテムボックスに逃げた。


普通なら意識しただけで取り出せるのに、レッドの場合は違うらしい。

しかし、アイテムボックスに入れても魔石を勝手に喰えない。

俺が認めてないから・・・


あ、パッと手を出て魔石を取りやがった。

しかし、俺はレッドの手を掴んでいた。


「いいか・・・今は許すから、そこから出るな・・・」


小さな声で『ピエー』と鳴いたよ。

理解したようだ。


そんなことをしてたら・・・



向こうで旭の刀で話が盛り上がっていた。


「これは師匠の作品です。岩トカゲも一刀両断できます」


「え!それは・・・岩トカゲを倒せる武器を作ったと・・・そんなバカな・・・」


「本当ですよ・・・」


転がっていた魔牛の角を「スパッ」と野菜を切るように斬った。


イサムと言う男が「その刀を使わせください」


「いいよ」


俺は、慌てたよ。


「旭、やめろ!」


イサムが角を何度も何度も斬っていた。


あの角は硬いことで有名だった。

魔牛が死んでも毒の効力を失うこともない。

しかし、触れた瞬間から激痛が体を駆け巡る。


無理して武器として使用しても激痛に悩ませる探索者が続出。

なので誰も使われない・・・まぼろしの武器となった。



あああ、旭。

ベラベラしゃべるなよ・・・言い聞かせてない俺も悪いが・・・

空気を読めよ。


俺は、武器製作者を名乗ってないのに・・・

何故、名乗ってないか考えてくれよ。


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