第10話病院




何故か厳重に警護されて病院へ来ていた。


なんでも精密検査をするらしい。

あれもこれも検査されたよ。


血を輸血する程、抜かれたよ。


今は、俺だけが武器を錬金術で作り出す。

その解明らしい。


絶対に解明なんて無理に決まってるのに・・・


「無理、無理、無理」と心の声が・・・


絶対に鑑定の秘密を守り抜く。


それに実験動物のラットのように、解剖しないとの口約束信じて我慢するしかない。

終わった頃には、もうヘロヘロに疲れた。


それなのにレッドは、『ピ!ピエー、ピエー』と喜んで飛び回っている。

それにナースに抱かれて『ピ!ピエー、ピエー』と鳴きだす。

ナースが大勢来て人気者だったよ。


俺の気も知らないで・・・



「え!レッドも検査ですか・・・レッドは、嫌な思いをしたら火を吹くかも知れませんよ」


「ギルドマスターと政府の要望です。拒否しますか・・・」


ああ、圧が・・・


「いえ従います・・・」



MRI検査が始まったよ。


俺は、マイクに向かった「レッド、動くなよ。動いたらダメだからな」と言い聞かせた。


『ピエー、ピエー』


MRI検査は、ダメだった。

レッドが暴れたからでない。電磁波を吸収してるみたいで何も見えない・・・


血の採血も、ダメだった。

針が突き刺さらない・・・


超音波検査もダメだった。

画面には、なにも映らない。これも電波を吸収してるみたいだと・・・


胃カメラは、火を吹くから無理と判断。

なら尻の穴から・・・かたく閉じてダメだった。

俺の説得も無理だった。嫌・・・言ってる意味も分かってないかも・・・


肛門をゆるめて開けろなんて、そんな説明なんか無理。



「本当に切るの・・・」


「あなたのロッカーからナイフを持って来たのでお願いします。これが済んだら後1つで帰れます」


赤ちゃんのような手をみて罪悪感が・・・

思い切ってナイフを右腕に突き刺す・・・あ!硬い・・・嫌な顔をしてるぞ!「ダメだ」と言っても火を吹きそうだ。

あわてて左手でレッドの顔を押して向きを変えた。


『ビエー!!』


口から1メートルも達する火を吹いた。

カメラマンに火が・・・カメラが燃え出す。


予見していたカメラマンは、防火服を着ていたが・・・慌てて脱いだ。


「熱い!助けてくれ!凄く熱い!」


皆して服を剥ぎ取った。


ボウボウと火は、防火服を焼き尽くした。


カメラマンの火傷は、2度と判定されたよ。

水ぶくれが出来てヒリヒリと痛みが続くらしい。


助けた人達は、手に1度の火傷だった。



そんな騒ぎの中、何とか切った腕にGPSマイクロチップを埋め込めんだ。


「血の採血を・・・」


「急にむちゃを言われても・・・」


ここには、注射器もない。


何故なら・・・そこらじゅう火を吹きそうな予感が・・・


「レッドが怒って・・・注射器を取って来る時間なんて、ありませんよ!!」


「ならナイフの血を・・・」


仕方なくナイフを手渡す。

ナイフに付いた血をなんとか取っているようだ。


それを見ながら俺が用意してた回復ポーションを腕に垂らした。


「これで痛くなくなるからな・・・」


傷が治るのがめちゃ早い。


『ピエー!!』と鳴いてた。

なんだ、その恍惚こうこつの表情は。




なんで、こうなった。

病院に長期入院してる子供達が検査室の前で「ドラゴン見せろ!ドラゴン見せろ!」と合唱してた。

何処かで噂話を聞いてやって来たのだろう。


「ドラゴンは、いませんよ。だから病室へ帰ってね」


小さな女の子が手をあげて「わたちみたよ・・・うそ、いってない・・・うそつききらい」


ああ、ダメだ。


俺を警護していたギルド職員では、この騒ぎ・・・治めることなど出来ない。

だって大人も集まってきてスマホで撮っていたからだ。


なおさら子供相手にむちゃは、出来ない。


しかたない・・・別室で子供達と会う事に・・・


納得した子供は、ナースも手伝って別室へ。


「むやみにスマホを撮っては、肖像権侵害で訴えますよ。今からカメラを向けて証拠を撮ります」


サッと大人は、ブツブツ言いながらさった。



検査室を出る時もスーツを被ったレッドがフワフワと飛んでた。

その姿で子供達と会った。


もうレッドを見る目がキラキラしてたよ。


小さな手で差出された飴玉をレッドは「パクッ」と食べた。


えええ!食べるかい・・・





最後に嘘発見器に掛けられた。

血圧や心拍数と脳波や声紋まで、体は配線だらけに・・・


今の嘘発見器は、嘘を発見するのではなく記憶検査らしい。

犯人が凶器にナイフを使った場合「ナイフ」と発した時に反応。


そんな感じで1200の質問をタンタンとされた。

いい加減にしろよ・・・って気分だ。



ギルドマスターの娘を助けたことが原因なのか、自宅へ帰れることになった。






自宅に帰れたのが午後8時頃。


1人だから寂しさをまぎらすようにテレビをつける。


『ダンジョン』の一言で・・・


それを見た瞬間ビックリした!・・・


石の槍だ。見間違うハズない。


だってテレビニュースには、俺が作った石槍が紹介されてたからだよ。

そんなの聞いてないよーー!。


「本日、探索者ギルドから発表がありました。これが発表の内容になります」


それは地下2階の砂漠の風景から始まって、岩トカゲが「バサッ」と砂から飛びだす瞬間だった。

『十文字鎌槍』で口に向かって1突きされて、頭部分が削ぎ落とされている。


そして血が「ドバッ」と吹き出す瞬間だった。

なのに、その瞬間にモザイク処理が・・・

岩トカゲの口を開いた瞬間を映しているのに、何で・・・


違う方向から襲って来た岩トカゲに『十文字鎌槍』を振り回して、岩の背中をぶつけた。

鎌が突き刺さった状態で押して引いて胴体を斬った。

その瞬間にモザイク処理が・・・


きっと硬い部分を狙ったに違いない。



アナウンサーに切り替わる。


「高島教授、これって何故発表されたのでしょうか・・・」


「ダンジョンでドロップされた武器より、あきらかに切れ味がいい武器だからかも・・・もしかして、人工的に作られた武器かも知れませんね」


「それは、どのような意味ですか、詳しく教えてください」


「人工的に武器が作れる。つまり大量に武器が出回るに違いありません。ギルドや政府と企業は、ダンジョン資源を欲している状況です。地下2階層の資源は、一部の探索者しか持って帰れません。命と引き換えた職業と言っていいでしょう。その命のリスクを低減出来るなら探索者になりたいと思いませんか・・・私がもっと若かったら探索者になりたいと思います・・・」


「成る程、貴重な御意見ありがとう御座います」



え!なんで9mm機関拳銃が登場してないぞ。


なんで・・・


あ!そうか・・・

現代兵器として戦争にも使えるレベルだ。

確かめてないが射程距離も凄い事に・・・

だから発表しなかった。


まあ、それはそれで良いよ。



錬金術の未来は、明るいってことだな。

俺は、そのニュースを見て錬金術の黄金期が来たと感じたからだ。

生産職は、探索者からさげすまれるのが現状だ。


俺の3年間の経験則が物語っている。


俺らが苦労して取った『薬草』がないと、何も出来ない生産職と口で言わないが、ヒシヒシと感じていた。


俺の武器があれば、錬金術師でも探索者としてやっていけるハズだ。


命のリスクは、ゼロではない。

しかし、それだけの価値はあるハズだ。


運転してて交通事故死は、1日あたり約9.7人のデーターも・・・ある。

ならば、やってやるっと名乗り出る錬金術師も・・・




それにしても・・・外のSP。

外を見たら3人、4人、あ!空き家だった家に5人も・・・


政府が動き出したに違いない。


武器としての9mm機関拳銃は、現代兵器の脅威になり得る存在だ。

他国に俺が誘拐されたら・・・大変なことに・・・



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