第3話回復ポーション

 



探索者ギルドを出て電車に乗って2駅目で降りた。


ここって【錬術】レンジュって呼ばれる街だ。

錬金術を短くした、呼び名であるとかないとか・・・


街中から微かに匂う『薬草』。


「あ、あの店でいいや」


ポーション用のビンを買うために店に立ち寄ることにする。


スマホで検索すると・・・

日本での販売4位の『憩いのロビン』。

その本店だから大きい店だ。

ここって個人向け錬金術の店でも有名な店だった。


なんだ俺って何かがいてるらしい。

店内もシックで良い感じだ。


「何かお探しですか・・・」


「ポーションのビンが欲しいけど高級感があるビンってないかな・・・」


「これならいかがですか・・・」


透明で直径2センチ×長さ10センチ。

そしてコルクのように蓋がしてあった。

この蓋を「キュッ」とひねる。コルクのような蓋には、微細な穴が無数に開いてあった。

回復ポーションは、呼吸する液体だから必要な穴だった。


常温で1ヶ月保存可能。

1ヵ月後は、徐々に劣化して効力が落ちてゆく。


「1ビン1000円です。ある程度の衝撃でも壊れることもありません。象が踏んでも壊れません」


中々な値段だ。

倒産した会社では、200円のビンを使ってたハズだ。


500本をその場で購入。

探索者カードで会計を済ます。


「10本は、この場で持ち帰ることにします。残りは、自宅の方へ配達してくれますか」


「カードの自宅でよろしいでしょうか・・・」


「そこに送ってください」


「かしこまりました」


そして店をでる。

この近くに錬金術ギルドがあったハズだ。





「あ!あれか・・・」


ポーションの看板に『錬金術協会』って書いてある。


3年前に一度だけ来たきりだ。

なんか雰囲気がガラッと変わった感じだぞ。



中に入って受付の番号紙を引き抜く。

そのタイミングで受付の頭上の番号が変わった。

俺が持ってる紙の番号だ。


紙と錬金術カードを差出す。


「勤めていた『アトラス』が倒産してしまって・・・個人販売を始めたいと思ってます」


モニターを見ながら「分かりました。個人販売に切り替えておきます。4月末には、総売り上げ金額の3%を収めるのを忘れないでください」


「個人販売をするのに税金や消費税は、どうなりますか・・・はじめてで、どうしたらいいのか・・・」


1枚の名刺が手渡された。

錬金術協会推薦の税理士の名刺だった。


ここに連絡してくださいって意味らしい。


「あの・・・ちょっと質問が・・・」


「どのような質問でしょうか・・・」


「今日、ダンジョンへ『薬草』でも採取できればと行って来たんですが・・・錬金術で『石斧』を作れたので販売って出来ますか・・・私の感覚では、ドロップされる剣より攻撃力があったので」


ギルドの販売所で1本しかない、ドロップした剣を見たら攻撃力10だった。

『石斧』は、攻撃力20だから2倍だ。


きっと探索者も喜ぶ武器になるハズだ。

地下2階からは、ドロップした武器で攻撃するか魔法を使うかの二択しかない。

それ程に防御力が高いモンスターが出現。



「その『石斧』、ありますか・・・」


「ゴブリンが大勢で襲って来たので捨ててきました」


「それでは、もう一度『石斧』を作って、持って来てください。協会としても試行錯誤して製作をしてるのですが、成功していませんので歓迎します」


期待の出来る返事で幸先がいいかも・・・






「ああ疲れた」


自宅の冷蔵庫からウーロン茶2Lのペットボトルを取り出す。

そしてコップに注ぎ一気に飲みほす。


「回復ポーションを作ろう・・・きっと良いポーションになるかも」


回復ポーションの期待値は、マックスだ。


蛇口をひねって水でコップをすすぐ。

そのコップに2本のポーションビンを入れて、アイテムボックスから『薬草』を取りだす。

その『薬草』を水ですすぐ。


「これぐらいで良いだろう」


「キュッ」と蛇口を閉めた。


錬金術を発動。

淡く光だして空中に浮かびだす。

そのまま錬金術が回復ポーションの原液と絞り取ったカスに分かれた。


原液に集中した瞬間にカスが流し台に落ちた。

手でかざしながらコップのビンへ・・・「チョロチョロ」とビンへ流し込む。

いつもの作業だ。ムダな動きなどない。


回復ポーション2本の完成だ。


え!上級回復ポーションと表示されたぞ。


上級回復ポーション

体の欠損も治す



え!そんな効果が・・・あるのか・・・

錬金術協会で見てきた回復ポーションは、中級と下級しかなかっだぞ。


それに体の欠損も治すなんて・・・


俺の知ってる方法では、回復タンクに浸かって治す方法だ。

大量の回復ポーションを純水と混ぜて水風呂みたいに人が浸かる。


半日後には、欠損部が再生されて新しい腕や足が生えている。

まさに奇跡の水だよ。


なんかの動画で見たことがあったなーー。

たしか・・・1回の治療費は、800万円って聞いたような・・・

それでも欠損部が再生されるなら安い。



しかし、特別な回復ポーションを作れたと報告するのも・・・

なんで作れるかを言えば、下手したら狙われて殺されるかも・・・


あの魔石変換の発見研究者が殺されかけた。

それも、人違いで殺された人がいるらしい・・・大問題になったよ。


今は、SP【警視庁警備部警護課】が警護してるって聞いた。



残りの8本のビンにも、ちゃちゃっと作って注いだ。


この回復ポーションを普通に売っても5万円だ。

なんだか勿体無い気がするぞ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る