登場人物

【ジャッキール】

 流れの傭兵。古い傭兵仲間からは「エーリッヒ」とも呼ばれている。揶揄と畏怖を込めて、「ダンナ」と通称されるこの頃。長屋では「先生」と呼ばれるが、寺子屋教師の副業をしているから。

 現在就職活動中で、長屋で内職などをして食い繋いでいる。

 年齢出身地不詳だが、三十五歳前後とみられ、出身地はおそらく大陸北方でザファバーンとは文化圏が違う。

 生真面目で折目正しい軍人であるが、かつての怪我が元で、戦闘中に極度の興奮状態に陥り見境がつかなくなる戦闘狂となってしまい、それゆえにエリートコースから道を踏み外して傭兵となり、大陸を南下してきた。普段の彼はおっとりとした常識人で、気の抜けた炭酸水のような男。潔癖で綺麗好きかつ心配性。あと世話焼き。

 威圧感のある外見から怖がられる為、本人の自己肯定感が低く、自覚はないが、彫像のような精密に整った顔の相当な美男子で、長屋の奥様にモテている。


【シャー=ルギィズ(三白眼)】

 三白眼に癖毛長髪の長身痩躯の住所不定無職。公称二十三歳。

 無一文で街をふらふらしては、酒をたかる日々を送る浮浪の青年。迷惑がられながらも慕われる体質で、飲食にあまり困らない。貧弱かつヘタレで絡まれやすい体質で、よくチンピラに絡まれている。

 が、色々裏の顔を持ち、かつてはジャッキールと何度も剣を交えたことがある。今ではなんやかんやとジャッキールをからかいにきたり、ご飯をねだりにくる。軽薄で猫のような男。こう見ててもジャッキールには一目置いているつもりらしい。

 いつのまにか、鍵を開けてジャッキールの部屋にいることがある。


【リーフィ】

 ジャッキールもいきつけの酒場で働いている無表情な美貌の看板娘兼踊り子。不愛想だが、別に悪気があるわけではない。

 ちょっと天然ボケだが男前は気質もあり、シャーに惚れられている他、ジャッキールを含めた仲間内から絶大な信頼と支持を受けているアイドル的存在。

 元々高級妓楼にいたのか、教養が高め、特に薬草などに詳しいちょっと理系な娘。

 しっかりしており、癒されるので、ジャッキールは困ったら、まず彼女に相談に行く。


【ゼダ(ネズミ)】

 通称、ネズミ。小柄で童顔の青年なので、そう呼ばれる。

 実は悪徳な噂もある豪商の御曹司。

 可愛らしい顔立ちでおとなしい青年のフリをしていることもあるが、実際は狡猾で腹黒い二重人格の不良。それでいながら、気障で気遣いのできるモテる伊達男で、花街では人気があるらしい。

 ジャッキールにはこれでも一目おいているらしいが、傍目からはからかっているようにしか見えない。

 いつのまにか、ジャッキールの部屋の鍵を金にものを言わせて作っており、シャーと部屋に溜まっている。


【ザハーク(蛇王)】

 通称:蛇王へびおさん。ザハークという名前の縁起が悪いことから、もっぱら蛇王というあだ名で呼ばれるが、これはジャッキールがつけたもの。

 サギッタリウスの異名を持つ傭兵で、特に弓術で名を知られている。傭兵なので、ジャッキールのことは旧名の「エーリッヒ」と呼ぶ。

 ヒゲの似合うイケメン。陽気で人懐っこい反面、得体が知れない。隣国かつザファルバーンの敵国のリオルダーナ人だが、持ち前の性質で人見知りの激しいジャッキールよりも地域に溶け込んでいる。シャーやゼダからの信頼も厚い。実はジャッキールより年下。

 ジャッキールとはお互いに首を狙う宿命のライバルであるはずだが、双方なにかと理由をつけて本気の戦闘を回避している、宿敵なのだか親友なのだかわからない腐れ縁。

 王都に逗留することにした後も、偶然ジャッキールの長屋の隣室の角部屋に住んでおり、なし崩し的に協業することもしばしば。

 どういう技術を使っているのか、鍵を締めていてもジャッキールの部屋に押しかけてくる迷惑な隣人。

 

【アイード】

 ジャッキールの行きつけの喫茶店の一つである錨亭のマスター。赤毛に緑の目をした穏やかな男で、カウンセリング能力に長けた聞き上手で親切な人物。顔の右半分に深い刀があり、とてもカタギには見えない他は、良い人である。

 まだ小僧の頃に太内海を荒らしまわった……もとい見聞を広めたらしく、多文化に詳しい伊達男。

 詩文にも親しんでおり、文系のジャッキールとは気が合う。


【レックハルド=トゥランザッド】

 隊商の長。狐目の男。まだ若いがやり手の商人。ジャッキールやザハークとは旧知の中で、今までも依頼を持ち込んできている。丁寧語で話すが、本当はそこそこガラが悪い。ちょっと胡散臭い。

 金髪の大男ファルケンは用心棒兼共同経営者。人懐っこい彼がいることで、胡散臭さが軽減されており、ニコイチ状態で商売をつづけている。


【ラゲイラ卿】

 ジェイブ=ラゲイラ。ザファルバーンの現王朝の反対勢力の名門貴族。かつて、現王シャルル=ダ・フールの暗殺計画を主導しており、ジャッキールの雇い主であった。現在は逃亡し、姿をくらましている。

 容赦なく権謀術数を使う黒幕であるが、一方で領民に慕われる人格者。ジャッキールにとっても、金銭の契約で結ばれた傭兵と主人というだけでなく、理解者であり支援者であった。その関係は師弟関係に近い面があったらしい。

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