第10話
〈Side:あすみ〉
高梨くんと会う約束をしたのは、クリスマスが近くなった、ある金曜日だった。
連絡はとっていたものの、
梨々愛ちゃんの話はショックでしかなく、
かといって高梨くんに直接尋ねるのは怖かった。
「やっと会ってくれたね」
珈琲を注文し終えた高梨くんは、そう言った。
「高梨くん、色々…忙しいでしょう?」
思わず牽制してしまう。
「もう12月だからね、1年って早いよな。」
「″ジャネーの法則″というものがあって、″人生のある時期に感じる時間の長さは年齢の逆数に比例する″から、1年が早く感じられるんだって。…今思うと、子供の頃は1年が本当に長かったよな。」
「確かに長かった。法則はちょっと難しいかも。」
「歳を取るにつれて自分の人生における″1年″の比率が小さくなって、体感として1年が短く時間が早く過ぎると感じるんだって。
1歳の時に感じた1年を1/1とすると、2歳の時の1年は1/2になって、1歳の時の2倍速く感じるようになるんだって。」
「そういう事なんだ。難しい本読んでるから、やっぱり物知りだね。」
少し離れると、次に近付いた時、離れる前より存在が遠く感じられるのには、何か法則ってあるのかな。
〈Side:雅弘〉
深冬ちゃんから呼び出され、やっと、あすみのよそよそしさの原因を知った。
「深冬ちゃんから聞いたんだ。梨々愛ちゃんとは付き合っていないよ。ちゃんと彼女には説明したから。ごめんね、全部俺のせいだ。」
「俺が好きなのは、あすみだよ。
だから…一緒に暮らそう!」
「返事は?」
「私で良かったら」
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