第9話

〈Side:深冬〉


「この前、あすみと一緒にいたでしょ。何話したの?」


「私にはお付き合いしてる人がいて、その人は高梨さんだって話しました。」


梨々愛ちゃんは、大きな瞳を逸らす事なく、

堂々と見つめ返してきた。


「高梨くんとお付き合いしてるのは、あすみでしょ。

嘘はダメだよ。」


語尾が強くなりそうなのを抑え、ゆっくりと伝えた。


道理でね。。

梨々愛ちゃんとのイタリアンの後、あすみは落ち込んでいた。

もうすぐクリスマスになるのに、デートもしていないようだった。



〈Side:梨々愛〉


「私、自分で言うのもなんですが、色んな男性から告白されるんです。」

「高梨さんは、初めて自分から好きになった人で、入社してから、ずっと好きです。」

「私の言葉で揺らぐような気持ちなら、本当に好きと言えませんよね。」


深冬先輩が相手だと、口を挟ませないように早口になってしまう。


深冬先輩は小さく首を横に振った。


「梨々愛ちゃん。

あすみは、純粋で本当に優しい人なの。」


「梨々愛ちゃんの気持ちだって、ちゃんと考えられる人だよ。」


途中から、伏せる事しか出来なくなっていた目が

次に捕らえたのは、今にも泣きそうな顔の深冬先輩だった。


「ーだから応援してあげようね。」


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